今回は、中国のビットコインマイナーの現状と今後について、大手仮想通貨取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では仮想通貨コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。
目次
中国はビットコイン・マイニング市場の50%〜80%を占めるとされており、長年の間、圧倒的なシェアを誇ってきました。しかし、5月に中国政府は国内の仮想通貨(暗号資産)取引だけでなく、マイニング(採掘)事業者を取り締まる方針を示しました。この動きによりビットコイン価格も下落するなど、多大な影響を及ぼしています。
まだ通告の段階で、具体的な規制は始まっていませんが、今回の中国政府の方針がどのようなもので、どのような展開が考えられるのか解説します。
①ビットコインのマイニングとは?
まず、ビットコインのマイニングの基本的な仕組みについて解説します。
ビットコインの基盤であるブロックチェーンにおいて、取引(トランザクション)はマイニングによって成り立っています。マイナーの仕事は、取引を新たなブロックに格納して過去のブロックにつなげることです。
複数のマイナーが同時多発的に作業するため、取引の記録を正当に保つために合意形成方法が必要となります。ビットコインネットワークでは、ハッシュ値を探す作業を“最初”に達成したマイナーの仕事が正当とみなされ、マイニング報酬を受取ります。この仕組みはプルーフ・オブ・ワーク(PoW)と呼ばれ、各マイナーは計算力を高めるために莫大な電力を消費しています。
ビットコインの発行上限数は約2,100万BTCと定められており、2021年5月末時点に約1,872万BTCが既に発行されています。つまり、既に90%近くのBTCマイニングされており、今後採掘されるビットコインは約228万BTC(10.8%)となっています。
ビットコインの発行ペースは21万ブロック(4年間)毎に半減するため、残りのBTCが採掘されるには120年(2140年まで)かかります。
②ビットコインマイニングの中国シェア
ビットコイン・マイニング市場の50%〜80%のシェアが中国にあるとされています。中国の事業者は安価な電気代と土地代を活かして、大規模なマイニングファームをいくつも建設しています。
中国国内のハッシュレート占有率は一位が新疆ウイグル自治区(36%)、二位が四川(10%)、三位が内モンゴル自治区(8%)、四位が雲南(5%)、五位が北京(2%)の順で、季節ごとに電気代の料金が変わるためマイニングを行う場所を変える業者も多く、新疆ウイグル自治区に80%の業者が集まる時期もあるようです。
ビットコインのマイニング専用機械(ASIC)の製造分野も、中国企業の寡占状態となっています。中国北京のビットメイン(BITMAIN)社はASICの販売台数ベースで67%を占めています(2017年)。同社はまた、マイニングプール大手AntPoolを傘下に持ち、マイニング力(ハッシュレート)でも高いシェアを占めています。
③中国政府のビットコイン規制
2021年5月21日に中国国務院は勧告を出し、今後、ビットコインのマイニングや取引を規制すると意向を示しました。背景として、電力を大量消費するマイニングが違法な炭鉱掘削を助長させ、国家の環境目標の達成を危うくすることを挙げています。
なお、中国による「ビットコイン取引」に対する規制は初めてではありません。2013年や2017年にも同じような動きがありました。中国の金融業界3団体は最近、「銀行や決済機関が仮想通貨関連サービスの提供を禁止していた、2017年の禁止令」を改めて公開しています。当時は徹底的な規制ではなく、ある程度代替策を取れる程度にとどまっていたようです。
④マイニング事業者の対応
政府の勧告を受けて、大手企業のHuobiは中国本土のマイニングホスティングサービスを停止しました。マイニングプールの最大手BTC.TOPは、中国での操業を一時停止し、HashCowは新たな機器の購入を停止しています。
中国のマイナーの多くは、国外への移転を計画している模様です。マイニングプールの最大手BTC.TOPも、アメリカへの移転を既に検討しています。しかし、主要なマイニング拠点である北米やカザフスタンはすでに中国マイナーを受け入れる余裕がなく、中国全土のマイニングの海外脱出は難しそうな状況で、少なくとも規模の縮小は免れなさそうです。
⑤まとめ
中国のマイニングファームに本格的な規制が入った場合は、世界全体のハッシュパワーの一時的な減少が起こる可能性が極めて高いです。その際に仮想通貨全体にどのような影響が出るかは未知数ですが、今回の急落のような事態を想定しておくことが必要と考えています。
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中島 翔
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