今回は、Web3.0とDAOをテーマに事業を行うFracton Ventures株式会社の鈴木雄大 氏から寄稿いただいたコラムをご紹介します。
目次
- NFTを活用したまだ注目されていない3つのプロジェクト
1-1. RTFKT(アーティファクト)
1-2. NIFTEX
1-3. MetaKey - まとめ
暗号資産の価格も少し上昇傾向から変化する様相を見せ始めましたが、NFT分野はまだまだ衰えることを知りません。今回はまだ日本ではあまり取り上げられたことのないNFT関連海外プロジェクトを3つご紹介致します。
いずれも投資勧誘を促すものではありません。NFTを使った事例として情報提供・参考にしていただけると幸いです。
NFTを活用したまだ注目されていない3つのプロジェクト
1. RTFKT(アーティファクト)
RTFKTはNFT特化のデジタルファッションブランドです。特にデジタルスニーカーを制作することで知られています。
2019年のインタビューを見ると、当時はStockXのようにスニーカーを売買するプラットフォームのデジタルアセット版として構築を図っていたことが伺えます。当時の発想はこうです。EC上でデジタルスニーカーを購入します。これは必ずフィジカルスニーカーアイテム(実際の靴)に紐付いています。ただコラボや限定スニーカーなどの商品の場合、購入後直ぐに二次売買が活発になることがあります。このような場合にブロックチェーンに裏付けされているRTFKTのスニーカーであれば、そのブロックチェーン上のトークンを移動させることで、それぞれのフィジカルなスニーカーを移動させることなく売買が可能になるというアイデアです。
現状ではこれらのコンセプトを拡張し、デジタル演出ができるデジタルスニーカー(スニーカーの絵柄自体が変化する演出がデジタル上に施されている)や、NFT化によるVirtualアバター構想まで事業を進めてきている印象を持ちます。
また直近2021年5月には未来のファッションをエンパワーメントするというミッションを掲げて、8.7億円($8M)もの資金調達を成功させています。この投資にはシリコンバレーの巨大VCであるAndreessen HorowitzやRiot Gamesの共同創業者Marc Merrill氏、元LVMH Chief Digital OfficerのIan Rogers氏などが投資家として参加したことが明らかになっており、今後投資家のネットワークやこの資金を活用し更にデジタルファッションブランドとして、進化していくことが期待されています。
2. NIFTEX
2つ目にご紹介するのはNIFTEXです。過去NFTfiというプロジェクトがNFT ✕ DeFiの未来を構想しましたが、それとは全く違うアプローチでそうした世界を実現させるプロダクトです。
NIFTEXのユーザーは、NFTホルダーとそのNFTに価値を認めるNFT非保持者です。このNFTホルダーは既に持っているNFT(例えばCryptoPunksなどのレアリティが認められるNFTシリーズ)をスマートコントラクトにロックします。またその市場価格などから、想定市場価格以下の価格でNFTを分割します。これによりNFTそれぞれの一片を、クラウドファンディングすることが可能になります。
実は先にご紹介をしたNFTfiでは最大の問題は資金効率にあったと見ています。NFTは固有のアートになっていることが多く、市場価格を想定しづらい問題があります。また売れるかどうかもコレクターのニーズ次第になることが多く、常に安定して売却ができるモデルではなかったことが懸念点でした。
つまり、このNFTfiで課題として設定されていた「高額NFTを持つユーザーにとってのフリーキャッシュフローの創出」というテーマを、より滑らかに解決できるかもしれないというアプローチがNIFTEXのテーマになっている訳です。
NFTのクラウドファンディングと言うと、販売前のクラウドファンディングがイメージされるかと思いますが、必ずしもそうではありません。NIFTEXのように購入後のNFTを、NFTを担保にすることで「売却せずに」一定の資産を借りることができるということは非常にニーズがある分野ではないかと思います。もちろんこのNIFTEXも裏側はスマートコントラクトで稼働しており、特定の誰かに資産を預けることなくスマートコントラクトへのイーサのロックだけで、この機能を実現しています、
ただNFTのマーケットは一般的な暗号資産マーケットと異なり、そもそも流動性がないものだと、その相場を予見することは非常に難しいです。このことから、意図的なものではないものの、NFTが流動性を失ったり、NFTがいざ売却するという時に意図しない低い価格になってしまうなどのリスクが現状も考えられます。ただこうした点が明らかになっていくことで、今後NFTの資産評価の方法または価値の保存の方法について、良い解決策が今後研究されていく可能性が高まることが期待できるとも言えます。
3. MetaKey
最後にご紹介するのはMetaKeyです。MetaKeyは会員証やアクセスカードといった趣の機能を盛り込んだNFTです。
また、MetaKey自体は以下のようなGif動画でアクセスキーを表現したものとなっていますが、これを持っていることで以下のような特典を持ち主に提供できると謳っています。
- メタバース内の専用スペースへの入場権
- 特別なDiscordグループへの参加
- Decentraland, The Sandboxそれぞれでの特別なアイテムの獲得の可能性
- Web3グッズへの限定購入権
- Airdropやクーポンの権利の獲得
また2021年5月23日現在で第一弾MetaKeyで500枚、第二弾MetaKeyで750枚が売買されています。かなり実験的なプロジェクトの印象を受けますが面白いアプローチかもしれないと思えた点として、マルチメタバースでの活用がありました。これは例えばDecentraland、Sandbox、Cryptovoxelsなどの複数のメタバース(CryptoネイティブなVR空間)にて、それぞれの世界いずれでも限定コンテンツへアクセスができることを意味しています。
マルチメタバースについて補足をしておきましょう。メタバースとはThe SandboxやDecentralandなどのクリプトネイティブに作られた、VR空間を指します。ここでは暗号資産による通貨としての支払いができる他、他のVR空間と同じ用にさまざまなイベントに参加したり、アバターを着たりすることができます。ただしアバターなどは多くがNFTであることが多く、不要になったものをマーケットでNFTとして売却することが可能になりうる点が、今までのVRと随分異なっている点です。
4. まとめ
いかがだったでしょうか。いずれも日本語で紹介された実績がほぼないプロジェクトだったのではないでしょうか。特にビジネスユースケースでNFTの活用を考える際に、こうしたアイデアが参考になる場面も多いでしょう。
こうしたプロジェクトを見ていても感じるのは、NFTのイノベーションはまだまだはじまったばかりであるということです。NFTの価値をいかにもたせる設計ができるのかという、企画力が重要になってくるという点、またデジタルファッションブランドのような全く新しい分野での商品展開、ブランドの確立が可能になる可能性が出てきたことなど、NFTが次第に単にブロックチェーンの内側のムーブメントと語るには幅が広くなってきたことが伺えます。
なおこの記事内で紹介をした全てのプロジェクトに関する情報は記事掲載時点のものとなっております。その後内容の変更などが行われる可能性がありますので、ご注意ください。
ディスクレーマー:なお、NFTと呼ばれる属性の内、発行種類や発行形式によって法令上の扱いが異なる場合がございます。詳しくはブロックチェーン・暗号資産分野にお詳しい弁護士などにご確認ください。
Fracton Ventures株式会社
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