気候変動による影響は、地球上の全ての生命体がリスクにさらされるため、各国政府をはじめ、企業においても対策が急務となっています。気候変動をビジネス機会と捉える企業も増えてきており、潤沢な資金を持つ上場企業を中心として先進的な研究開発が進められています。
この記事では、気候変動対策で先進的な日本の上場企業や取り組み事例を紹介していきます。なお、各社の株主優待・配当情報も併せて解説しているので、興味のある方は参考にしてみてください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※本記事は2023年4月4日時点の情報をもとに執筆されています。最新の情報については、ご自身でもよくお調べの上、ご利用ください。
目次
- 気候変動対策が必要な理由とは
- 気候変動対策に取り組む日本の上場企業
2-1.イオン株式会社(8267)
2-2.アサヒグループホールディングス株式会社(2502)
2-3.明治ホールディングス株式会社(2269)
2-4.株式会社コーセー(4922) - まとめ
1 気候変動対策が必要な理由とは
気候変動対策とは、気候変動の影響を軽減し、温室効果ガスの排出を削減する取り組みのことです。気候変動対策は大きく分けると「緩和策」と「適応策」があり、緩和策では、気候変動そのものを食い止めることを目的としており、地球温暖化や気候変動の原因となる温室効果ガスの排出削減が柱となっています。例えば、省エネルギー対策、再生可能エネルギーの導入、リサイクルの推進、森林吸収源対策などです。
一方、適応策では、気候変動が原因による洪水、干ばつ、土砂災害などの被害を回避、軽減することを目的としており、具体的な事例として、豪雨災害対策、BCP(事業継続計画)の策定、災害時の避難訓練、施設・設備の強化などが挙げられます。
これらの気候変動対策を向上させるため、気候変動問題に関する国際的枠組みである「パリ協定」の発行や、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の目標13「気候変動に具体的な対策」を掲げるなど、気候変動対策は世界的な重要課題となっています。
2 気候変動対策に取り組む日本の上場企業
国際環境NGO「CDP」によると、日本企業の中で、環境情報開示や気候変動への取り組みにおいて、最高評価である「気候変動Aリスト」を受賞した企業は75社(2022年度時点)となっており、国別獲得数で世界一を記録しています。
それでは、以下で気候変動に取り組む日本の上場企業と各社の取り組み実績を見ていきましょう。
2-1 イオン株式会社(8267)
イオン株式会社は、「イオンモール」のブランドで大型ショッピングモールを運営する企業で、国内外に約200店舗を展開しており、日本国内の小売業界トップクラスの営業収益が特徴です。
また、イオンは気候変動対策にも取り組んでいます。例えば、環境活動の取り組みの一つである「イオン ふるさとの森づくり」の一環として、1991年から全国各地、世界各地で植木活動を行っています。2022年2月末時点の植樹合計本数は1,241万本となっており、緑の空間を増やすことによって、温室効果ガスの吸収源の確保に貢献しています。
次に、「スマートイオン」の展開です。スマートイオンとは、環境負荷の小さい材料を使った店舗づくりや自然エネルギーの積極利用などにより、従来型店舗と比べ20%以上のCO2排出削減を実施する次世代エコストアであり、2022年2月末時点で12店舗のスマートイオンを出店しています。
さらに、使い捨てプラスチックの削減にも取り組んでいます。プラスチックは、焼却処理される際の温室効果ガス発生が問題視されているため、イオンでは、2020年4月にグループ会社すべての売場でのプラスチック製レジ袋の無料配布を終了し、レジ袋が必要な利用者には、環境に配慮したFSC認証紙を使用した紙袋を販売しています。
イオン株式会社の株主還元
イオンでは、100株以上保有する株主に対して「イオンオーナーズカード」を発行しています。イオンオーナーズカードでは、対象店舗・支払方法で、「お客さま感謝デー(毎月20日・30日)での5割引特典」や、最大7%のキャッシュバックを受けられます。キャッシュバック率は、以下の通りです。
持ち株数 | 100~499株 | 500~999株 | 1,000~2,999株 | 3,000株以上 |
---|---|---|---|---|
返金率 | 3% | 4% | 5% | 7% |
そのほかにも、イオン株式会社の株式を3年以上、1,000株以上保有する株主に対しては、イオン系列店舗で使える最大10,000円分の「イオンギフトカード」を贈呈しています。
なお、イオンの株主になると年2回の配当を受けられるメリットもあります。イオンの配当推移は以下の通りです。
項目 | 中間配当金(円) | 期末配当金(円) | 年間配当金(円) |
---|---|---|---|
2019年2月期 | 17 | 17 | 34 |
2020年2月期 | 18 | 18 | 36 |
2021年2月期 | 18 | 18 | 36 |
2022年2月期 | 18 | 18 | 36 |
2023年2月期 | 18 | 18(予定) | 36(予定) |
2-2 アサヒグループホールディングス株式会社(2502)
アサヒグループホールディングスは、ビールを中心とした酒類事業、飲料事業、食品事業など、飲食に関わる幅広い事業を行っており、グローバルブランドの拡大展開に向けて、世界中の国や地域に拠点を持っています。
気候変動対策としては、再生可能エネルギーの活用に取り組んでいます。アサヒグループでは、カーボンゼロの達成に向け、再生可能エネルギーの導入、活用を進めており、国内の全工場では、購入電力再エネ化100%を達成しています。今後は、物流拠点や営業所を含めた再エネ100%化を目指しています。
また、クリーンエネルギーモデルの開発も進行中です。アサヒグループでは、固体酸化物形燃料(SOFC)発電において、ビール工場排水由来のバイオメタンガスを利用するクリーンエネルギーモデルの開発、実用化を進めています。このモデルは、ビール工場の排水からバイオメタンガスを生成し、再利用することでCO2排出量削減が可能となっており、2020年から茨城工場にて開始しています。
さらに、リサイクルペットボトルの使用も拡大しています。アサヒの飲料事業では多くのプラスチックを利用することから、リサイクル素材など環境配慮素材の利用を推進しています。日本国内では、「カルピスウォーター」などの乳性飲料や「アサヒ十六茶」、炭酸飲料の一部で、リサイクルペットボトルを採用しています。
アサヒグループホールディングス株式会社の株主還元
アサヒグループは株主還元も積極的に行っており、100株以上保有する株主に対して自社グループ商品詰め合わせを贈呈しています。株主優待内容の詳細は以下の通りです。
保有株式数 | 株主優待の内容 |
---|---|
100株以上500株未満 | 1,000円相当のグループ商品詰め合わせ等 |
500株以上1,000株未満 | 2,000円相当のグループ商品詰め合わせ等 |
1,000株以上 | 3,000円相当のグループ商品詰め合わせ等 |
株主優待は、株主限定プレミアムビール、酒類商品詰め合わせ、清涼飲料水・食品詰め合わせ、環境保全活動への寄附、災害支援活動への寄附から選択できます。
なお、アサヒグループホールディングスの株主になると年2回の配当を受けられるメリットもあります。アサヒグループホールディングスの配当推移は以下の通りです。
項目 | 中間配当金(円) | 期末配当金(円) | 年間配当金(円) |
---|---|---|---|
2019年12月期 | 52 | 48 | 100 |
2020年12月期 | 53 | 53 | 106 |
2021年12月期 | 54 | 55 | 109 |
2022年12月期 | 55 | 58 | 113 |
2023年12月期 | 56(予定) | 59(予定) | 115(予定) |
2-3 明治ホールディングス株式会社(2269)
明治ホールディングスは、乳製品、チョコレート、スナック菓子、健康食品などの食品事業をはじめ、抗菌薬や中枢神経系疾患領域の医薬品、ジェネリック医薬品等の医薬品事業も展開しています。
以下では、明治ホールディングスの気候変動対策の取り組み事例の一部を紹介していきます。
1つ目は、CFP(カーボンフットプリント)算定の推進です。CFPとは、商品の原材料の調達から生産、流通、廃棄、リサイクル過程で排出された温室効果ガスをCO2排出量に換算し、商品・サービスに表示する仕組みのことです。明治ホールディングスでは「明治オーガニック牛乳」と「明治ミルクチョコレート50g」で算定を実施しています。
2つ目は、省エネルギー対策です。明治では、事業活動のあらゆる段階において省エネルギー対策を行っており、一部の工場では、エネルギー効率の高い「トップランナー制度」対象機器の導入や高効率ボイラーへの転換を実施しています。
輸送車両においては、炭素・エネルギー削減を目指し、モーダルシフト(輸送手段の転換)を図り、2021年度の輸配送車両のCO2排出量は、前年対比97%削減に成功しています。
3つ目は、サプライヤー・生産者の温室効果ガス削減です。生乳・乳原料の生産元となる酪農では、糞尿由来の温室効果ガス排出量削減に向けて、糞尿からの一酸化二窒素を抑えることができるアミノ酸バランス飼料を使うなどの取り組みを行っています。
カカオの生産元となるガーナやブラジルのカカオ農家では、カカオ農家を支援する明治独自の活動である「Meijj Cocoa Support」を通じ、井戸の寄贈、植木の無償配布、営農指導などを行い、CO2の吸収源である森林の保全に繋がる活動を実施しています。
明治ホールディングス株式会社の株主還元
明治ホールディングスでは、100株以上保有する株主に対して、自社グループ商品詰め合わせ(菓子等)を贈呈しています。株主優待内容の詳細は以下の通りです。
現行 (2023年3月31日時点) |
変更後 (2024年3月31日以降) |
||
---|---|---|---|
株式数 | 優待品 | 株式数 | 優待品 |
– | – | 100株以上 (現50株以上) |
1,500円相当のグループ商品詰め合わせ |
100株以上 | 2,000円相当のグループ商品詰め合わせ | 200株以上 (現100株以上) |
2,500円相当のグループ商品詰め合わせ |
500株以上 | 3,500円相当のグループ商品詰め合わせ | 1,000株以上 (現500株以上) |
5,500円相当のグループ商品詰め合わせ |
1,000株以上 | 5,000円相当のグループ商品詰め合わせ | – | – |
※2023年3月31日の株式分割実施に伴い、株主優待制度が変更されます。
※2024年3月31日現在の株主名簿に記録された株主は、変更後の内容に変わります。
なお、明治ホールディングスの株主になると年2回の配当を受けられるメリットもあります。明治ホールディングスの配当推移は以下の通りです。
項目 | 中間配当金(円) | 期末配当金(円) | 年間配当金(円) |
---|---|---|---|
2019年3月期 | 65 | 75 | 140 |
2020年3月期 | 70 | 80 | 150 |
2021年3月期 | 75 | 85 | 160 |
2022年3月期 | 80 | 90 | 170 |
2023年3月期 | 85 | 85(予定) | 170(予定) |
2-4 株式会社コーセー(4922)
株式会社コーセーは、化粧品の製造・販売を行う大手化粧品会社で、「KOSE」というブランド名でファンデーションやスキンケアを中心に、「雪肌精」「コスメデコルテ」「エルシア」など人気商品を多数輩出しています。
コーセーは、気候変動対策として環境に優しい商品を開発しています。例えば、容器・包装においては、容器のコンパクト化、袋の包装に「紙」の採用、新素材(紙混成合成樹脂)の採用、材質を薄くした環境配慮容器の採用など、容器や包装のプラスチック使用量削減に取り組んでいます。
また、環境に配慮した生産体制を整えています。生産部門では、廃棄物の再資源化するリサイクル活動に力を入れており、材料をそのまま利用するマテリアルリサイクルをはじめ、リサイクル原材料を別の形にして利用するケミカルリサイクル、リサイクル原材料を利用して熱として回収するサーマルリサイクルの3つを併用し、焼却処理量削減に努めています。
また、群馬工場では、廃熱を化粧品製造に有効活用するコージェネレーションシステムの導入や購入電力100%再エネ化に成功しています。
さらに、営業車の環境負荷低減にも取組中です。社用車のCO2排出量削減のため、ハイブリッド車を含む環境負荷の低い車種への切り替えや営業所内外でのカーシェアリングの活用を推進しています。
株式会社コーセーの株主還元
コーセーは株主還元も積極的に行っており、100株以上保有する株主に対して、グループの関係商品を贈呈しています。株主優待内容の詳細は以下の通りです。
保有株式数、保有期間 | 株主優待の内容 |
---|---|
100株以上1,000株未満、3年未満 | 自社グループ商品4,000円~6,000円相当 |
100株以上1,000株未満、3年以上 | 自社グループ商品7,000円~9,000円相当 |
1,000株以上、3年未満 | 自社グループ商品13,000円~15,000円相当 |
1,000株以上、3年以上 | 自社グループ商品18,000円~20,000円相当 |
なお、コーセーの株主になると年2回の配当を受けられるメリットもあります。コーセーの配当推移は以下の通りです。
項目 | 中間配当金(円) | 期末配当金(円) | 年間配当金(円) |
---|---|---|---|
2020年3月期 | 95 | 95 | 190 |
2021年3月期 | 60 | 60 | 120 |
2021年12月期 | 60 | 60 | 120 |
2022年12月期 | 70 | 70 | 140 |
2023年12月期 | 70(予定) | 70(予定) | 140(予定) |
まとめ
気候変動に伴う異常気象や災害は、人々の生活や社会に対する深刻な問題となっており、企業が取り組む重要課題の1つとして認識されています。この記事でご紹介したような日本の上場企業は、気候変動対策で高い評価を得ており、気候変動の将来的な影響を軽減する様々な研究や環境に配慮した事業活動に取り組んでいます。
気候変動対策で先進的な取組を行っている上場企業に関心のある方は、この記事を参考に検討を進めてみてください。
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