大気汚染対策に注力している日本の上場企業は?4社の取り組み事例や株主還元も

※ このページには広告・PRが含まれています

大気汚染とは、大気中に含まれる微小な粒子やガス状の化学物質が、人間や動植物に悪影響を与えるほど高い濃度になることを指します。主に工場や自動車、火力発電所などの人為的な活動によって排出された物質が原因で、世界共通の問題となる中、日本国内の上場企業も大気汚染の解決に積極的に取り組んでいます。

この記事では、大気汚染対策に注力している日本の上場企業について、具体的な取り組み事例や株主還元を解説するので、ESG投資に関心のある方は参考にしてみてください。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※本記事は2023年4月5日時点の情報をもとに執筆されています。最新の情報については、ご自身でもよくお調べの上、ご利用ください。

目次

  1. 大気汚染対策の必要性とは
  2. 大気汚染対策に注力する日本の上場企業
    2-1.大日本印刷
    2-2.リコー
    2-3.倉敷紡績
    2-4.クボタ
  3. まとめ

1 大気汚染対策の必要性とは

大気汚染とは、私たちの生産活動や消費活動によって生み出された化学物質によって、空気が汚れてしまうことを指します。大気汚染は、自動車や工業から発生する硫黄酸化物や窒素酸化物などの汚染物質が空気中で変化することで生じ、次のような公害問題を引き起こします。

  • 酸性雨
  • 光化学スモッグ
  • PM2.5
  • 黄砂

酸性雨は、工場などから発生した硫酸や硝酸が大気中で変化することによって生み出されます。酸性雨は森林や農作物を枯らしたり、水の中で暮らす生き物の住処を奪ったりするなどの悪影響を及ぼすのが特徴です。また、光化学スモッグは窒素酸化物と炭化水素が、太陽光からの紫外線を受けることで生成される有害物質です。特に人体への影響が懸念されており、喉が痛くなったり目がチカチカするなどの健康被害を引き起こしたりします。

PM2.5は大気中にある小さな粒子状の汚染物質であり、肺の奥深くまで入り込むことで人間の健康に悪影響を与えます。黄砂とは、偏西風によって中国やモンゴルから運ばれてくる砂や塵で、黄色い霧や霞のような状態が生じることがあります。黄砂には有害な化学物質を含んでいることがあり、呼吸器系の病気やアレルギーを引き起こす要因にもなります。

このように、大気汚染は健康や環境に深刻な影響を与えるとともに、地球温暖化をより加速させており、子孫や地球の未来にまで深刻な影響を与えることが予想されるため、大気汚染対策は人類共通の課題となっています。

2 大気汚染対策に注力する日本の上場企業

大気汚染対策に注力している日本の上場企業4,000社のうち高い評価を受けている企業の一部をご紹介するので、具体的な取り組み内容や株主還元策などを確認していきましょう。

2-1 大日本印刷株式会社

大日本印刷は、時価総額が一兆円を超える総合印刷大手の会社です。印刷業界では国内2強の一角であり、印刷技術を応用した電子部材や包装材などを生産しています。大日本印刷の特徴や大気汚染への具体的な取り組み、株主還元策は以下の通りです。

大日本印刷の特徴

大日本印刷は印刷事業と飲料事業の二つの事業セグメントから売上を生み出しています。特に印刷事業における情報コミュニケーション部門で売上の半分以上を占めており、印刷と情報における様々な技術を掛け合わせることで、印刷の基本工程から生み出された技術をベースとしながら最先端のレベルに磨き上げることで、多様な事業を創出しています。

大日本印刷の大気汚染対策

大日本印刷の大気汚染に対する取り組み内容としては、主にVOC大気排出量削減とGHG排出量の削減が挙げられます。

VOCはVolatile Organic Compounds(揮発性有機化合物)の略で、大気汚染物質の原因の1つです。VOC大気排出量の削減の取り組みとしては、揮発性有機化合物の大気排出量を2015年度レベルに維持するとともに、2025年度までに大気排出規制項目の最大濃度を規制水準の70%以下に維持する目標を掲げています。

大日本印刷の株主還元

大日本印刷は、株主還元策として株主に配当金の支払いを行っています。株主への継続配当を行うことを配当方針としており、業績と配当性向を勘案した上で決めています。過去の一株あたりの配当金の推移と今期の配当予想は、次の通りです。

各年度 中間配当 期末配当 年間配当
2019 32円 32円 64円
2020 32円 32円 64円
2021 32円 32円 64円
2022 32円 32円 64円
2023(予想) 32円 32円 64円

株主への安定配当を基本としていることからも、一株あたり配当金は一定の金額となっています。なお、株主優待制度は2023年4月5日時点で設けられていません。

2-2 株式会社リコー

リコーは事務機で国内首位級の会社です。時価総額は6,040億円であり、プリンターや複写機のほか、商用および産業印刷なども手がけています。リコーの特徴と大気汚染に対する取り組み内容は、以下の通りです。

リコーの特徴

リコーはデジタル複合機などのドキュメント領域をベースに、ITサービスやコミュニケーション領域までサービス提供を行う領域を広げており、100万以上の国内事業所に対して業務に役立つ商品やサービスの提供を行っています。主な商品やサービス領域は次の通りです。

  • オフィスプロダクト
  • ビジネスサービス
  • 商用産業プリンティング
  • 社会インフラ
  • ビジネスインフラのサポート
  • 産業プロダクツ

複合機やプリンターで名の知られている会社ではありますが、クライアントの基幹業務を支える業務用商品や太陽光発電の安定稼働支援、AEDなどの医療機器、産業用カメラの設備機器など、その他にも様々な分野でサービスを提供しているのが特徴です。

リコーの大気汚染対策

リコーは、大気汚染に対する取り組みとして塩素系有機溶剤の全廃を達成しています。塩素系有用剤とは、健康リスクと環境リスクの両方を引き起こす可能性がある有害汚染大気物質が高い物質になります。リコーはこの有害物質の使用を全廃する活動を進めた結果、全ての塩素係有機溶剤の全廃を2005年度に達成しています。

リコーの株主還元

リコーは株主還元策の一環として、株主優待と配当金による支払いを実施しています。優待内容は、自社カメラ製品などの商品を特別価格で購入できる割引券です。優待回数は年2回あり、権利確定月は3月と9月と定められています。また、株式の最低単元は100株以上ですが、単元未満株である1株からでも株主優待を受けられます。

一方、配当金の支払い方針としては、株主に対する利益還元の拡大が重要であるという考えのもと、総還元性向50%を目安に段階的な引き上げを行っています。そして、増配の継続を目指しています。配当予想を含めた直近5年間の配当推移は、次の通りです。2021年に一時的な落ち込みはあるものの、今期の配当予想は年間34円と過去最高になる見込みです。

各年度 中間配当 期末配当 年間配当
2019 10円 13円 23円
2020 13円 13円 26円
2021 7.5円 7.5円 15円
2022 13円 13円 26円
2023(予想) 17円 17円 34円

2-3 倉敷紡績株式会社

倉敷紡績はクラボウの名前で親しまれる時価総額500億円前後の綿紡績大手の会社です。現在はバイオ事業や不動産賃貸業など非繊維事業についても力を入れています。倉敷紡績の事業や、大気汚染に対する取り組み内容は、以下の通りです。

倉敷紡績の事業

倉敷紡績は主に繊維事業と化成品事業、環境メカトロニクス事業の3つの事業から構成されています。売上比率で見ると、繊維事業と化成品事業の割合が高くなっており、2つの事業を合わせると、全体の売上高の7割以上を占める状況となっています。

繊維事業とは主に綿など素材の繊維製品の製造販売であり、染色や加工など紡績における独自技術を生かして高機能品や高感度な繊維製品の開発を行っているのが特徴です。一方、化成品事業では、ポリウレタンフォームや合成木材、機能性フィルタなどの加工や販売を行っています。

倉敷紡績の大気汚染対策

倉敷紡績は企業として、大気汚染の防止に取り組むことを掲げています。具体的には、環境負荷の排出低減を推進しており、燃料から発生する硫黄酸化物や化石燃料の燃焼から生まれる窒素酸化物など、代表的な大気汚染物質の発生を減らす取り組みを実行中です。

倉敷紡績の「2022年度 環境レポート」によると、硫⻩酸化物(SOx)は燃料のガス化により2017年から2021年にかけて減少傾向にあります。窒素酸化物(NOx)については、2018年度より徳島バイオマス発電所のデータも加えたために大幅に増加したとしていますが、2021年度は前年度57トンから48トンへと削減することができています。

倉敷紡績株主還元

倉敷紡績の配当方針は、継続的な利益還元を基本としており、中長期的な観点から決定しているのが特徴です。また、過去の配当金の支払いは期末配当の年1回を基本としていましたが、今期から中間配当と期末配当の年2回に変更されています。

各年度 中間配当 期末配当 年間配当
2019 0円 60円 60円
2020 0円 60円 60円
2021 0円 60円 60円
2022 0円 70円 70円
2023(予想) 35円 35円 70円

2-4 株式会社クボタ

クボタは農業機械や鋳鉄管ともに最大手の会社です。時価総額は2兆円を超える大企業であり、小型建機やエンジンが主力事業となっています。クボタの特徴や大気汚染対策の取り組み、株主還元策などは、以下の通りです。

クボタの特徴

クボタは、食料や水、環境分野などの社会課題の解決に貢献する事業を世界120ヵ国で展開しており、世界の食料生産や産業発展を支えています。事業は、主に機械事業と水・環境事業の2つのセグメントから構成されており、機械事業は稲作や畑むけの農業機械や建設機械、自社の機械に搭載されるエンジンを世界中で展開中です。

また、水・環境事業ではバルブやポンプ事業、環境プラント事業を通じてアジアや欧州、中東などの水インフラ整備に貢献しています。

クボタの大気汚染対策

クボタは、化学物質の管理をマテリアリティの一つとして捉えており、生産拠点の塗装工程から排出される大気汚染物質を削減する取り組みを進めています。具体的には法令や条例の排出基準よりも厳しい自主管理値を設定するとともに、基準値を超えないように、ばい煙(たばこなどを燃焼させた際に発生する煙のこと)発生施設の運転制御や集塵装置の点検などの日常管理を徹底しています。

クボタの株主還元

クボタは株主還元策として、株主に対する配当金の支払いを実施しています。継続的な配当の維持および向上を利益配分の基本としており、具体的な数値として総還元性向40%以上を目標としています。最終的には総還元性向50%を目指して取り組んでいるところです。中間配当と期末配当および年間配当の推移は、次の通りです。

各年度 中間配当 期末配当 年間配当
2019 17円 19円 36円
2020 17円 19円 36円
2021 21円 21円 42円
2022 22円 22円 44円

まとめ

大気汚染対策に注力している日本の上場企業は上記の通りです。各企業は法令によって定められた大気汚染物質の排出量を超えないこと、なおかつ排出量を削減するために自社の製造段階で徹底的に有害物質を管理しています。

株主還元の方法は各企業によって異なるものの、大気汚染対策に積極的に取り組む上場企業の多くは、配当金の支払いにも積極的です。

大気汚染対策に注力している上場企業に関心のある方は、この記事を参考にご自身でも調査を進めてみてください。

The following two tabs change content below.

HEDGE GUIDE 編集部 株式投資チーム

HEDGE GUIDE 編集部 株式投資チームは、株式投資に関する知識が豊富なメンバーが株式投資の基礎知識から投資のポイント、他の投資手法との客観的な比較などを初心者向けにわかりやすく解説しています。/未来がもっと楽しみになる金融・投資メディア「HEDGE GUIDE」