米テキサス州のグレン・ヘガー州財務長官は8月24日、エネルギー企業への投融資をボイコットしていると判断した金融機関10社を公表した(*1)。年金基金など同州の政府系ファンドを通じたダイベストメント(投資撤退)の対象となる。
同州が公表した金融機関10社は、米資産運用会社ブラックロック(ティッカーシンボル:BLK)に加え、BNPパリバ(BNP)やクレディスイス(CSGN)といった欧州の金融機関9社となる。フィデリティやバンガードなどが組成した約350ファンドのリストも公表しており、同様にダイベストメントの対象になる。
ヘガー財務長官は22年3月、米国で最大の石油・ガス生産を誇るテキサス州のエネルギー産業を脅威にさらす金融機関を公表すべく、調査を行っていることを明らかにした。米エネルギー情報局(EIA)によると、同州は21年に米国の石油生産の43%、天然ガスの25%を生産したという。また、31ヶ所の製油所をもち、国の精製能力の32%をしめ、もっとも多くの製油所と精製能力をほこる。
ヘガー財務長官は「金融の世界におけるESG(環境・社会・ガバナンス)は不明瞭であり、株主にとって最善の利益となる決断をくださず、社会や政治課題解決を促進するために、その影響力を行使している」と述べた(*1)。一方、ブラックロックはテキサス州のエネルギー企業に1,000億ドル(約14兆3,000億円)超投じており、化石燃料を取り扱う企業をボイコットしていないと主張している(*2)。
テキサス州の年金基金は、カリフォルニア州のファンドなどと比較して大きくないため、ダイベストされても金融機関への影響は限定的なようだ。また、リスト公表をヘガー財務長官の政治的人気取りだとみる専門家もいる。
米国は連邦レベルに加え、州によっても脱炭素に対する姿勢・方針が異なる。たとえば、米国最大級の公的年金であるニューヨーク州退職年金基金は、低炭素社会移行への取り組みが十分でないと判断したシェールオイル・ガス企業21社からダイベストすることを発表した(*3)。一方、ウェストバージニア州は化石燃料業界をボイコットしていると判断したJPモルガンチェース(JPM)やゴールドマンサックス(GS)など5つの金融機関に対し、州とのあらたな取引を禁じている(*4)。
【参照記事】*1 COMPTROLLER.TEXAS.GOV「Texas Comptroller Glenn Hegar Announces List of Financial Companies that Boycott Energy Companies」
【参照記事】*2 CNBC「Texas says 10 companies, including BlackRock, ‘boycotting’ energy」
【関連記事】*3 ニューヨーク州退職年金基金、シェールオイル・ガス企業からダイベストメント(投資撤退)へ
【参照記事】*4 ロイター「West Virginia bars five financial firms for deemed fossil fuel ‘boycotts’」

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