米アマゾン・ドット・コム(ティッカーシンボル:AMZN)は8月25日、米燃料電池システム開発プラグ・パワー(PLUG)と、2025年より年間10,950トンの「グリーン水素」を調達する契約を締結した(*1)。アマゾンは40年までにネットゼロエミッション(温室効果ガス(GHG)の排出量を実質ゼロにする)の達成を目指すなか、グリーン水素を輸送および施設業務に活用する方針だ。
同契約により、フォークリフト3万台もしくは長距離輸送用大型トラック800台分に相当する年間電力をまかなう。取引の一環として、プラグ・パワーはアマゾンに1,600万株を上限とするワラント(新株予約券証券、#1)を付与する。最初の900万株の権利行使価格は22.98ドル。アマゾンは21億ドル(約3,000億円)を出資する。両社の契約が発表されたのちの8月25日に、アマゾンおよびプラグ・パワーの株価は、それぞれ2.6%、9%上昇した(*2,3)。
水素は燃焼時にGHGを排出しないため、気候変動対策となりうる「未来のエネルギー」ともくされている。なかでも、グリーン水素は電解槽をもちい、再生可能エネルギー由来の電気により、水を水素と酸素に分解して製造する。太陽がでず、風もふかないときに再生可能エネルギーを貯蔵する方法になる。現状では、水素の大部分が、天然ガスやナフサなどの化石燃料を改質した「グレー水素」になるという。
アマゾンはサステナビリティ目標の達成にむけ、グレー水素やディーゼル、その他の化石燃料を代替するグリーン水素の活用をすすめる。自社オペレーションにおいてグリーン水素を活用するだけでなく、水素燃料電池といったテクノロジーに関する知見も得たいもようだ。同社は17年にプラグ・パワー株を最大23%買い取る権利を取得。その際、プラグ・パワーはアマゾンの倉庫で使用するフォークリスト用に水素燃料電池を供給する方針をしめしていた。
アマゾンは19年、「Climate Pledge(気候変動対策に関する誓約)」を公表。その一環として、40年までのカーボンニュートラル実現にコミットする。米リヴィアン・オートモーティブ(RIVN)より10万台の電気自動車(EV)を購入し、配送車両をガソリン車からEVへと切り替える。
(#1)ワラント…あらかじめ定められた期間内に、一定の価格(権利行使価格)で発行企業の株式を購入できる権利。
【参照記事】*1 アマゾン「Amazon Becomes Major Green Hydrogen Purchaser」
【参照記事】*2 ヤフーファイナンス「アマゾン・ドット・コム【AMZN】」
【参照記事】*3 ヤフーファイナンス「プラグ・パワー【PLUG】」

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