スペインの銀行最大手サンタンデール銀行(ティッカーシンボル:SAN)傘下のサンタンデール・アセットマネジメントは9月28日、EUの機関EIT(#1)のコミュニティのひとつであり、欧州の持続可能なエネルギーの達成を目的とするEIT InnoEnergyと提携した(*1)。エネルギー・トランジションを加速させるスタートアップ企業に投資する気候テックファンドを立ち上げる。
サンタンデール・アセットとEIT InnoEnergyは、ベンチャーキャピタル(VC)ファンドを通じて、エネルギー・トランジションの加速と、欧州のエネルギー安全保障・価格危機に取り組むべく提携した。サンタンデール・アセットがポートフォリオマネージャーとなり、サンタンデール銀行がアンカー投資家(ファンド出資者のなかでも要となる投資家)を務める見通し。EIT InnoEnergyは、スタートアップ企業への共同投資や各種支援サービスの提供を行う方針である。
新たな気候テックファンドは、プライベートバンクと機関投資家を対象に、①エネルギー安全保障の確保、②安価でクリーンなエネルギーへの公平なアクセス、③持続可能な地球環境の実現という相互に両立が難しい「エネルギートリレンマ」の解決に向けてインパクトをもたらす、アーリーステージ(創業初期)の企業への投資機会を提供する。
金融機関などを対象としたサステナビリティ(持続可能性)関連の開示規則「サステナブルファイナンス開示規則(SFDR)」の金融商品レベルの開示のうち、環境(E)や社会(S)の特性を促進する金融商品(8条商品)に該当する見込みである。
投資先企業はおもに、EIT InnoEnergyの既存ポートフォリオに組み入れられている企業から選定する。セクターはサーキュラーエコノミー(循環経済)、再生可能エネルギー、エネルギーの貯蔵および効率化、交通・モビリティ、スマートビルディング、都市、グリッド、水素と多岐にわたる。
サンタンデール・アセットのオルタナティブ投資部門ヘッドを務めるボルハ・ディアス・リャノス氏は「これ(気候テックファンドの立ちあげ)は、ネットゼロ・アセット・マネージャーズ・イニシアチブ(NZAM、#3)に加盟して気候変動に取り組む我々のコミット達成に向けて一歩前進したことになる。50年までにネットゼロ(温室効果ガス(GHG)排出量の実質ゼロ)の達成を後押しするうえで、イノベーションは非常に重要なものだ」と述べた(*1)。
近年は、金融機関による気候変動に特化したファンド組成が活発化している。スペイン大手ビルバオ・ビスカヤ・アルヘンタリア銀行(BBVA)は、不動産・建設業界の脱炭素化に資するテクノロジーへの投資に向け、米ベンチャーキャピタルのフィフスウォールと提携した(*2)BBVAはフィフスウォールの気候ファンドを通じ、建物のライフサイクル全体の脱炭素化ソリューションを提供する企業への投資を行う。
(#1)EIT…欧州のイノベーション強化のために設立されたEUの機関。都市交通、製造業、原材料、エネルギー、健康、食糧、デジタル、気候の重点8分野ごとにイノベーション・コミュニティをつくり、それぞれの分野特性に適した教育、研究、ネットワークの支援を実施している。
(#2)エネルギー・トランジション…従来の石炭や石油などの化石燃料を中心とするエネルギー構成から、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを中心としたものに大きく転換していくこと。
(#3)ネットゼロ・アセット・マネージャーズ・イニシアチブ…脱炭素を目指す資産運用会社の国際的な枠組み。273機関が署名し、運用資産残高(AUM)は61.3兆ドルにのぼる。
【参照記事】*1 EIT InnoEnergy「EIT InnoEnergy and Santander Asset Management join forces to launch new climate tech investment vehicle」
【関連記事】*2 スペイン銀BBVAと米フィフスウォール 不動産業界の脱炭素化技術向け投資で協業
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