仏金融大手BNPパリバ(ティッカーシンボル:BNP)傘下のBNPパリバ・アセット・マネジメントは9月29日、生物多様性への影響低減につながる企業へ投資するETF「BNP Paribas Easy ESG Eurozone Biodiversity Leaders PAB UCITS ETF」を設定した(*1)。同日にパリ・ユーロネクストと独クセトラに上場した。
同ETFに組み入れる銘柄を選定するには、仏アイスバーグ・データラボが開発した投資先企業の生物多様性への負荷を算出する「コーポレート・バイオダイバーシティ・フットプリント」を活用する。「Euronext Eurozone 300 Index」から、生物多様性への影響低減につながる約60銘柄でポートフォリオを構成し、各セクターの割合を30%に維持する方針だ。国連グローバル・コンパクト(UNGC、#1)に違反する、もしくは(紛争のような)問題を引き起こす武器、石炭採掘、ウラン、シェールガス、タバコを生産する企業は投資除外とする。
同ファンドは、パリ協定に関するベンチマーク(EU PAB、#2)に基づくほか、金融機関などを対象としたサステナビリティ(持続可能性)関連の開示規則「サステナブルファイナンス開示規則(SFDR)」の金融商品レベルの開示のうち、サステナブルな投資目的をもつ金融商品(9条商品)に該当する。9条ファンドは、長期的な経済的リターンとポジティブで測定可能な社会的及び環境的インパクトの両立をめざす金融商品である。
「陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進」などを目指す、持続可能な開発目標(SDGs)の目標15への関心が投資家の間で高まるのに呼応し、BNPパリバ・アセットは新たに同ファンドを立ちあげた。これは、低炭素、サーキュラーエコノミー(循環経済)、海洋、革新的な医療テクノロジー、グリーン水素、サステナブルボンドといった既存のテーマ型ETFの拡充につながる。また、「 BNP Paribas Ecosystem Restoration」のようなアクティブ運用商品を補完するものになる。
BNPパリバ・アセットのマルチアセット・クオンティタティブ&ソリューション部門ヘッドを務めるデニス・パネル氏は「自然破壊の進行により、2050年までに全生物種の4分の1が絶滅する可能性があり、世界のGDPの50%が経済リスクにさらされている。新たに立ちあげたETFは、生物多様性への影響低減につながる企業へ投資するとともに、化石燃料関連企業の除外や炭素強度の低減といった厳格な基準を順守する」と述べた(*1)。
BNPパリバ・アセットは21年5月、「生物多様性ロードマップ」を公表。ポートフォリオ組み入れ企業の生物多様性におよぼすネガティブインパクトの分析・測定を推進する。
生物多様性関連のETFとしては、英金融大手HSBCホールディングス(HSBC)傘下のHSBCアセットマネジメントが8月、生物多様性の保全に積極的に取り組む企業を投資対象としたETFを発行した(*2)。生物多様性の観点から銘柄をスクリーニングするETFとしては世界初になる。
(#1)国連グローバル・コンパクト…国連と民間企業・団体が手をむすび、健全なグローバル社会を築くための世界最大のサステナビリティ関連イニシアチブ。会員は約17,000社・団体にのぼる。
(#2)EU PAB…欧州の気候ベンチマーク。年平均の温室効果ガス(GHG)強度を最低7%削減することや、スコープ1・2・3のGHG強度もしくは絶対排出量を、投資可能なユニバースよりも最低50%低いことなどを要件とする(欧州委員会「Sustainable finance」参照)。
【参照記事】*1 BNPパリバ「BNP Paribas Asset Management launches PAB-aligned biodiversity ETF」
【関連記事】*2 HSBCアセット、生物多様性関連ETFを発行。同種で世界初
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