主要7か国(G7)気候・エネルギー・環境相会合は4月30日、石炭火力発電を遅くとも2035年までに段階的に廃止する共同声明を採択した(*1)。石炭火力発電の廃止年限を盛り込んだのはG7初となる。
同会合の後に発表された声明の中で、G7は30年代前半までに、既存の排出削減対策の取られていない(Unabated)石炭火力発電を段階的に廃止することを約束した。
声明には、各国のネットゼロの道筋に沿い、気温上昇を1.5度に抑えるという目標に沿ったスケジュールを選択できることも盛り込まれた。炭素を大気中に流出する前に回収すれば、35年以降も化石燃料を使用する余地を残した。
これは、各国が温室効果ガス(GHG)を排出しても、産業革命前からの気温上昇を1.5度に抑えられれば、これらの国々が35年以降も石炭を使い続けることを認めているように見える。
欧州シンクタンクのクライメイト・アナリティクスは、今回の発表はG7で唯一石炭の廃止期限を設けていない日本にプレッシャーを与え得るが、35年という期限は地球温暖化を1.5度に抑えるには遅すぎると指摘する(*2)。
気温上昇を1.5度に抑えるためには、G7各国は遅くとも30年までにすべての石炭使用を終了させる必要があり、天然ガスは35年までに終了させなければならない、と同社は分析する。
英シンクタンクのエンバーによると、G7の中では日本が依然として電力の3分の1近くを石炭で賄っている(*3)。ドイツや米国ももいまだに化石燃料に依存している。一方、英国、イタリア、カナダ、フランスは、すでに石炭の使用廃止に近づいている状況だ。
米国では、環境保護庁(EPA)が4月25日、国内の石炭火力発電所に対し、GHG排出量を32年から90%削減する新たな規制を発表した。既存の石炭火力発電所と新設の天然ガス火力発電所は二酸化炭素(CO2)回収・貯留装置(CCS)を設置する必要がある。
23年にドバイで開催された国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)では、世界のほぼすべての国が化石燃料からの脱却に合意した。G7は世界の気候変動対策を主導している。今回の共同声明は、GHGを大量に排出する中国やインド、化石燃料の供給国であるサウジアラビアやロシアを含む主要20か国・地域(G20)にも影響を及ぼしそうだ。
【参照記事】*1 G7イタリア「The Ministerial meeting on Climate, Energy and Environment ends with the adoption of a joint communiqué」
【参照記事】*2 CNN「The world’s most advanced economies just agreed to end coal use by 2035 – with a catch」
【参照記事】*3 エンバー「Supporting Material」
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