欧州連合(EU)理事会は4月29日、企業持続可能性報告指令(CSRD)に基づく欧州持続可能性報告基準(ESRS)のうち、セクター別とEU域外企業向けの基準の採用を2年間延期することを最終承認した(*1)。
対象企業がESRSを適用するための時間的猶予を与えるべく、セクター別および域外企業向けの新たな採択期限を2026年6月末とする。
これにより、第1弾として採択されたセクターにかかわらず適用されるESRSに基づく報告への対応に注力できるようになる。また、セクター別の持続可能性基準やEU域外企業向けの基準を策定するための時間も確保される。
EU理事会と欧州議会は2024年2月、セクター別とEU域外企業向けの基準の採用を2年間延期することで合意しており、EU理事会による採択が最後のステップとなる。
CSRDは、企業に対して環境、社会、ガバナンス要因などに関する情報開示を義務づける法律であり、CSRDに基づく開示・報告のための共通の基準を示すESRSに基づき報告することが求められる。
第1弾のセクターにかかわらず適用されるESRSは、23年12月25日に施行されており、一部の大企業は24年1月以降に開始する事業年度からESRSに基づく報告が義務付けられている。
セクター別ESRSは、セクターにかかわらず適用されるESRSではカバーしきれない事項に関する開示・報告のための基準である。域外企業向けESRSは、CSRDを適用する日系企業を含むEU域外企業に対する基準となる。
欧州委員会(EC)は「Long-term competitiveness of the EU: looking beyond 2030」の通達において、報告義務が企業全般、特に中小企業にとっての大きな負担の1つになっていると指摘した。そのため、基本的な政策目標を損なうことなく、報告義務を25%削減することを提案していた。
現行のEU法は、上場企業に対し、社会・環境問題から生じるリスクと機会に関する情報の開示を義務付けている。ECは23年7月末、すべてのサステナビリティ事項に適用される初の横断的基準を採択した。今回採択された指令は、中小企業支援政策パッケージ(SME Relief Package)と整合性を保つ。
【参照記事】*1 EU理事会「Council adopts directive to delay reporting obligations for certain sectors and third country companies」
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