金融活動作業部会(FATF)が2月25日に発表したガイダンスの更新案に対して、暗号資産の業界団体Coin Centerが注意を促した。主にプライバシーとイノベーションの観点から、これらを阻害する可能性があるという。
Coin Centerは、アメリカを拠点に活動するNPO法人であり、Twitter創業者のJack Dorsey氏や暗号資産取引所Kraken、投資ファンドGrayscaleなどが資金を提供している。暗号資産の普及を目指し活動しており、規制の提言などに積極的に取り組んでいる。
今回Coin Centerが注意を促したのは、アンチマネーロンダリングおよびテロ資金供与対策(AML/CFT)を推進する国際団体のFATFが発表した新たなガイダンスについてだ。FATFは、2月25日に主に次の3つからなるガイダンスの更新案を発表していた。
- ステーブルコインに対するFATF基準の適用
- 公的部門および民間団体がトラベルルールに対応するための具体的な方法
- P2P取引に存在するリスクへの対応
ステーブルコインに対する規制の明確化や、トラベルルールをより適用させるための具体的な方法についてなど、暗号資産の規制がさらに進むことを予想させる内容となっている。
これに対しCoin Centerは、少なくとも次のような3つの問題点があることを指摘した。
- non-custodian(非カストディ事業者)への監視
新たなガイダンス案では、これまで定義していたVASP(Virtual Asset Service Provider)の対象を拡大し、スマートコントラクトやセカンドレイヤーといったネットワーク参加者にまで含めるよう発表していた。これに伴い、ブロックチェーンを構成するノードなどが対象に含まれることから、非中央集権の思想を持つ分散型ネットワークの特性が完全に失われることになると主張。プライバシーとイノベーションを著しく阻害するとしている。
- P2P型の取引とプライバシー強化
新たなガイダンス案では、各ブロックチェーンプロジェクトの特徴である秘匿化技術(Taprootやゼロ知識証明など)の採用に対して反対する方針となっていた。また、これに付随して本人確認(KYC)を必要としないnon-custodial型のウォレットへのVASPからの送金を制限すべきだとしている。 - 顧客のカウンターパーティの識別
新たなガイダンス案では、VASPが行う全ての取引をトラベルルールの対象とすることを推奨している。従来の対象をさらに拡大する内容となっていた。
FATFは、特定の国による影響を受けない国際規制団体だが、今回の更新案では4月20日までパブリックコメントを募集しているため、Coin Centerは広く意見を提出するよう呼びかけている。
【参照記事】A quick analysis of FATF’s 2021 draft cryptocurrency guidance
株式会社techtec リサーチチーム
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