投資家が企業に対し、ESGやサステナビリティへの取り組みを求める傾向は強まっています。地球環境、人権、労働環境などの解決は、企業の持続的な成長のためにも重要です。
大手通信会社のソフトバンクはNTTドコモやKDDIと並ぶ存在ですが、ESGに積極的に取り組む企業でもあります。今回はソフトバンクのESGの取り組みや株価推移、業績について見ていきましょう。
※2022年11月25日時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定の銘柄・金融商品への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- ソフトバンクの概要
- ソフトバンクのESGに関する取り組み
2-1.携帯電話での「3R」推進活動
2-2.未来とサンゴプロジェクト
2-3.人権に関する3つの相談窓口 - ソフトバンクの10年間の株価推移と業績
3-1.上場後の株価推移
3-2.業績 - ソフトバンクの将来性
- ソフトバンクの配当・優待情報
- まとめ
1.ソフトバンクの概要
銘柄 | ソフトバンク |
証券コード | 9434 |
株価 | 1,495.5 |
PER(会社予想) | 13.06倍 |
PBR | 3.9倍 |
配当利回り(会社予想) | 5.75% |
※2022年11月25日のデータ
まずソフトバンクとソフトバンクグループの関係性について説明します。ソフトバンクは通信・IT事業を担う事業会社であり、ソフトバンクグループはソフトバンクの親会社です。
ソフトバンクグループは戦略的投資会社、ソフトバンクは事業会社という違いがあります。
この記事では事業会社のソフトバンクについて解説していきます。ソフトバンクでは傘下の企業も含めて、下記のようなブランド・サービスを提供しています。
- ソフトバンク
- ワイモバイル
- LINEMO(ラインモ)
- PayPay
- ソフトバンクでんき
基幹となる通信事業はソフトバンクの他に、ワイモバイルやLINEMOなどのブランドもあります。ソフトバンクは店舗などサポート体制を充実するサービスなのに対し、ワイモバイルとLINEMOはネット販売がメインで、格安の料金プランを提供しています。
PayPayはスマホ決済(QRコード決済)として、近年急速に普及したサービスです。数々のポイント還元キャンペーンにより知名度を上げユーザーを獲得してきました。登録ユーザー数は5,000万人を超え、国内トップクラスの規模となっています。
PayPayは決済だけでなく、金融サービスとして領域を拡張しています。PayPay銀行、PayPay資産運用、PayPayほけんといったサービスが誕生しました。PayPayアプリを通じてお金の管理や資産運用、保険の加入ができる仕組みです。
2.ソフトバンクのESGに関する取り組み
ソフトバンクグループはESGやサステナビリティの領域の取り組みも推進しています。米国S&Pグローバル社が優れたサステナビリティの取り組みを行っている企業を選定する「The Sustainability Yearbook 2022」において、ソフトバンクグループは産業内で特にサステナビリティ評価の高い上位15%の企業の1社として選ばれました。
また各種ESGインデックスにも組み込まれており、「Dow Jones Sustainability Index(DJSI)」「FTSE4Good Index Series」「FTSE Blossom Japan Index」などで同社は採用されています。ここでは同社のESG関連の取り組みをいくつか紹介します。
2-1.携帯電話での「3R」推進活動
同社の基幹事業の携帯電話では、リデュース、リユース、リサイクルの「3R」活動を推進しています。まずリデュースとして、包装パッケージの小型化、取扱説明書などのアプリ化、店頭でのiPad活用などを通じて、紙資源の使用量の削減に取り組んでいます。また紙媒体の請求書から電子媒体の請求書への切り替えも進めており、個人契約の顧客全員を対象に基本サービスとして提供しています。
リユースは、機種変更などの際の携帯電話やタブレット端末の下取りです。下取りした端末は再整備のうえで、主に新興国で再利用される流れです。
リサイクルでは、使用済み携帯電話の本体、電池パック、充電器類、SIMカードの回収を、メーカーを問わず実施しています。顧客に安心して端末を提供してもらえるよう、回収した携帯電話の本体を物理的に破壊してリサイクル処理をしています。
2-2.未来とサンゴプロジェクト
温暖化抑制や多様な生態系の維持などを目的とし、2019年に「未来とサンゴプロジェクト」を発足。沖縄県恩納村やその他の団体・企業との合同によるプロジェクトです。海洋プラスチックごみや温暖化による海洋環境の悪化が問題となっていますが、サンゴにも脅威を与えており、サンゴ礁が消滅すると生態系に大きなダメージとなります。
プロジェクトの主な取り組み内容は、募金によるサンゴの苗の購入、植え付けを行うツアーやビーチの清掃活動の実施、サンゴの成長する様子の情報発信など。サンゴの苗は、漁師が水中で作っており、養殖で増やした親サンゴの一部から分ける方式です。植え付けは、ドリルで岩に穴を開け、穴にサンゴの苗を挿し、ハンマーで岩に固定する方法で行います。
2-3.人権に関する3つの相談窓口
ESGの社会関連課題についても多数の取り組みを行っており、その中から人権関連の取り組みを紹介します。すべてのステークホルダー(顧客・サプライヤー・サプライチェーンの勤務者・従業員)に向けて相談窓口を設置し、人権問題を把握・対応する体制を取っています。
3つの窓口があり、まず「ソフトバンク人権相談窓口」は通話料無料で、平日の9時~17時半まで専用ダイヤルで受け付けています。相談した日の翌営業日までに、同社の担当者から改めて相談者へ連絡がいく仕組みです。
「コンプライアンス ホットライン」はコンプライアンス違反に関する相談窓口です。匿名での相談も可能で、プライバシーにも配慮しています。2021年度のコンプライアンス違反に関する相談・通知は228件で、違反が確定した40案件については、行為者に対して必要な処分を実施したとのことです。
「ハラスメント相談窓口」もあり、2021年度に起きた職場内でのハラスメントに起因する人権侵害事例では、当事者に対して適切な懲戒処分を検討・実施。実際の事例を踏まえてすべての従業員に対するハラスメント防止講座の内容を見直し、ハラスメントのパターンや影響、事例解説について内容拡充を行いました。
3.ソフトバンクの株価推移と業績
ここからは、ソフトバンクの株価や業績面について解説します。
3-1.上場後の株価推移
事業会社であるソフトバンクの株は、2018年12月1日に東証一部(現在の東証プライム)に上場しました。2020年9月に大きな下落があったものの、そこから回復し、現在は1,500円前後で推移しています。もみ合う展開ですが、次第に24カ月移動平均線が上向いてきています。
参考までに親会社のソフトバンクグループの株価は、2022年10月までは4,000円~6,000円の間で推移していました。2022年7月以降に株価が急騰し、2021年3月には1万円を突破しました。その後は下落し、現在は6,000円前後です。
3-2.業績
直近2年間の業績と2022年度の予想は下記のとおりです。
項目 | 2020年度実績 | 2021年度実績 | 2022年度予想 |
---|---|---|---|
売上高 | 5兆2,055億円 | 5兆6,906億円 | 5兆9,000億円 |
営業利益 | 9,708億円 | 9,857億円 | 1兆円以上 |
純利益 | 4,913億円 | 5,175億円 | 5,300億円以上 |
2021年度実績は、売上・利益ともに過去最高を記録しました。売上高は対前年比で9%増、営業利益は2%増、純利益は5%増となりました。セグメント別利益を見ると、コンシューマ事業が-0.4%、法人事業は+0.4%、流通事業は+2%、ヤフー・LINE事業+その他が+7%です。
2022年度は5Gへの集中投資を行う方針で、設備投資に4,300億円を投じる予定となっています。その次の2023年度は、ヤフー・LINEなどの事業成長により増益を目指します。
2021年度・2022年度は通信料値下げの影響が大きかったものの、2022年度を底に大幅縮小すると見込んでいます。2023年度以降は5Gへの設備投資も一巡するため、利益増をより一層重視する方針です。
4.ソフトバンクの将来性
ソフトバンクの将来性について、ESGと業績の両面から考察していきます。ESGの環境関連では、携帯電話の回収、気候変動や海洋環境の改善などのプロジェクトが実施されています。人権に関する相談窓口など、環境以外の取り組みにも積極的で、実績も同社サイトで公開しています。海外のESG関連のインデックスにも組み込まれており、高く評価されていることが分かります。
次に業績に関して携帯電話事業は堅調で、売上・利益ともに2021年度は過去最高を記録しました。競合の格安SIMに対してもワイモバイルやLINEMOといった格安ラインで対抗できているため、急にビジネス上の優位が崩れることはほぼ考えられません。大きく拡大することはなくとも、今後も収益は見込めるでしょう。
今後の国内での成長の鍵を握る要素の1つはPayPayで、新興の金融サービスとして、存在感を高めています。サービス領域の拡大とともに、既存の銀行や証券会社などとの競争が今後ますます激しくなると思われますが、5,000万人を超える登録ユーザー数は大きな武器になるでしょう。
ユーザー数の増加には成功したので、今後はユーザーの利用増加をいかに上手に促せるのかが鍵となります。ユーザーの利用回数や金額の増加、利用領域の拡大ができれば、事業収益もさらに高まり、株主にとってもプラスになるでしょう。
5.ソフトバンクの配当・優待情報
1株あたり年間配当 | 2022年3月期実績:86円 2023年3月期予定:86円 |
主な株主優待 | なし |
2023年3月期は、前年度と同じく1株あたり86円の配当を予定しています。同社の還元方針として、1株あたり配当は減配しないこと、自己株式の取得を積極的に進めることを公表しています。今後も企業価値の向上により、株主への安定的な利益還元を継続する意向です。
まとめ
ソフトバンクのESGの取り組み、株価推移や業績について紹介しました。国内通信大手企業であり、ソフトバンクブランドの通信事業以外にもYahooやLINEといった多様な事業を展開しています。ESGでも地球環境・労働環境を中心に多様な取り組みを実施しており、海外の機関からも高く評価されています。
業績は堅調で、国内通信事業はNTTドコモやKDDIと同様に優位性を保持しています。今後より大きく成長するには、PayPayなどの事業を伸ばしていけるかにかかってくるでしょう。
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