住友金属鉱山のESGの取り組みや将来性は?株価推移、配当も

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気候変動や海洋汚染、労働環境の悪化や人権保護の必要性など、企業経営においてもESGやサステナビリティは一層重要性を増しています。機関投資家や株主も、環境や社会の課題解決に取り組む姿勢があるかを投資先の判断材料にしています。

今回は住友金属鉱山のESGの取り組みや業績を紹介し、将来性について考察します。同社や鉱山事業に興味のある方は参考にしてください。

※2022年12月19日時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定のサービス・金融商品への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

目次

  1. 住友金属鉱山の概要
  2. 住友金属鉱山のESGに関する取り組み
    2-1.2050年までにGHG排出量ネットゼロを目指す
    2-2.非鉄金属資源の有効活用
    2-3.休廃止鉱山の管理
  3. 住友金属鉱山の10年間の株価推移と業績
    3-1.10年間の株価推移
    3-2.業績
  4. 住友金属鉱山の将来性
  5. 住友金属鉱山の配当・優待情報
  6. まとめ

1.住友金属鉱山の概要

銘柄 住友金属鉱山
証券コード 5713
株価 4,670円
PER(会社予想) 9.37倍
PBR(実績) 0.78倍
配当利回り(会社予想) 3.75%

※2022年12月19日のデータ

住友金属鉱山の事業の特徴は、以下の3事業を連携させたビジネスモデルを展開していることです。

  • 資源事業:環境や社会に配慮した鉱山開発および運営
  • 材料事業:その時代に必要となる新たな価値を素材に付加

資源の開発、製錬、機能性材料の生産を一貫して行う連携であり、同社は「世界でも類を見ないユニークなビジネスモデル」としています。グループの持続的な成長を支え、他社は簡単に模倣できない優位性を生み出す基盤となっています。

たとえばニッケルについて、鉱石から電池材料まで一貫したサプライチェーンを構築。ニッケル鉱石の原料確保から電池材料の生産まで、自社内のサプライチェーンによって、安定供給や品質などのトレーサビリティを実現しています。

まず資源事業では同社が権益を保有する鉱山からニッケル鉱石を安定的に調圧し、原料確保によって資源調達リスクを低減します。製錬事業では世界に先駆けて実用化した「HPAL技術」によって、低品位ニッケル酸化鉱石を生産し、有限の資源を最大限に活用します。正極材の原料として材料事業へ安定供給し、クオリティの高い電池材料の生産へつなげます。

材料事業では製錬事業と連携しながら供給素材の特性を最適化した製品を生産し、品質などのトレーサビリティも実現します。

2.住友金属鉱山のESGに関する取り組み

ESGやサステナビリティで掲げられている目標は、気候変動の抑制、限りある資源の有効活用、安全な水資源の確保など、鉱山事業に大きく関連する課題も含まれています。住友金属鉱山もESG関連の課題を重視しており、下記のような取り組みを行っています。

2-1.2050年までにGHG排出量ネットゼロを目指す

同社は「世界の非鉄リーダー」を実現するため「2030年のありたい姿」を策定。成長性と持続性をともに高め、企業価値向上に繋げる狙いです。

2030年に向けて達成すべきゴールを11個の重要課題として設定し、SDGsの課題を同社の視点で整理しました。このうち気候変動についてはGHG(温室効果ガス)排出量を2013年度以下に抑え、2050年までにGHG排出量ネットゼロにすることを目標としています。

そのための取り組みの1つとして、ICP(社内カーボンプライシング)の活用があります。企業が社内で独自に炭素価格を設定し、GHG削減効果を投資効果とみなす取り組みです。

2020年9月にICPを導入して以来、各事業所でICPを活用した脱炭素化投資が行われています。具体的には照明設備のLEDへの交換、高効率空調設備への更新など。省エネ投資は無論のこと、太陽光発電、重油からLNGへの燃料転換などにも積極的に取り組んでいます。

2-2.非鉄金属資源の有効活用

サステナビリティに貢献するため、同社は未利用資源の有用化、難処理資源からの回収、リサイクル技術の活用に取り組みます。前述の「2030年のありたい姿」では「非鉄金属の循環システムの構築と維持に貢献する企業」や「不純物を有効活用して社会に貢献する企業」などの目標も含まれています。

具体的なプロジェクトとして、鉱山や製錬工程で発生する不純物を分離・固定・有用化する技術の開発、未利用非鉄金属資源の有用化技術の開発、難処理資源からの非鉄金属回収などがあります。

このうち難処理資源からの非鉄金属回収として、高不純物塩湖水からのリチウム回収技術と回収ビジネスへの参画があります。2021年度実績としては、塩湖かん水実液を使ったパイロット試験に着手し、吸着剤開発を継続しています。

2-3. 休廃止鉱山の管理

同社が管理する休廃止鉱山では、廃滓などを堆積した集積場の管理と重金属を含んだ坑水の浄化処理を行っています。現在管理している集積場は国内に42カ所です。東日本大震災をきっかけに集積場の安定性に関する法律上の管理基準が見直されました。この基準で評価したところ基準を下回った集積場は11カ所あり、2018年までに補強工事が完了しました。

一方で坑水処理は、排水基準を満たす水質まで重金属を除去する必要があります。近年、重金属除去に微生物を用いた「パッシブトリートメント技術」が注目されており、住友金蔵鉱山も開発に参加しています。今後も、休廃止鉱山を確実に管理するとともに、設備やインフラの強化・改善を行う方針です。

3.住友金属鉱山の10年間の株価推移と業績

ここからは住友金属鉱山の株価や業績について見ていきましょう。

3-1.10年間の株価推移

2021年以前は、2,000円~5,500円ほどの間のレンジで上昇・下落を繰り返していました。2021年以降は上昇傾向となり、2022年3月に6,000円を突破しました。

現在は4,500円~5,000円で推移しています。ピークより20%ほど下落したものの、それ以上の下落の動きは強くなく、サポートラインが機能しているのではないかと考えられます。

3-2.業績

過去3年間の業績推移は下記のとおりです。

項目 2019年度 2020年度 2021年度
売上高 851,946 926,122 1,259,091
税引前利益 79,035 123,379 357,434
当期利益 60,600 94,604 281,037

※単位:百万円

売上高は2021年度に初めて1兆円を突破し、前年比130%以上と大きく成長しました。税引き前利益・当期利益も大きく拡大しています。この好調を支えた要因は金属価格上昇、円安の追い風、シエラゴルダ鉱山の売却益の計上の3点です。材料事業では、過去最高の276億円の利益を計上しました。

最新の2022年度 第2四半期は、売上高や7,106億円で前期比18.8%増、税引き前利益は1691億円で前期比39%増、四半期利益は1,254億円で前期比4.4%増となっています。成長してはいますが、昨年度よりは成長が減速している状況です。その要因は、ロシアによるウクライナ侵攻に伴うエネルギー及び食料価格などの大幅な上昇、欧米などの政策金利引き上げ、中国のゼロコロナ政策等としています。

4.住友金属鉱山の将来性

住友金属鉱山の将来性について、ESGと業績の両面から考察していきます。まずESGに関して、同社はかなり多くの取り組みを行っています。先ほどは環境面の取り組みを紹介しましたが、その他にも多様な人材の育成と活躍、ステークホルダーとの対話、サプライチェーンにおける人権といった取り組みも行っています。

業績について2021年度は過去最高の売上・利益を計上しました。業績推移を見てもこの数年は拡大傾向となっています。ただし金属価格相場や為替レートによる影響がかなり大きく、今後の相場の動向によってはマイナスをもたらすリスクもあります。

まとめると、ESGに積極的で外部からの期待に応える力はあり、業績も好調です。一方で相場動向などの不確実性にいかに対応していけるか、環境への負荷をさらに削減しながら業績を伸ばしていけるかが重要になりそうです。

5.住友金属鉱山の配当・優待情報

1株あたり年間配当 2019年度実績:78円
2020年度実績:121円
2021年度実績:301円
2022年度予定:175円
主な株主優待 なし

売上高や利益が大きく伸びたことにより、1株あたりの配当金も、2019年度から2021年度にかけて大きく拡大しました。2022年度は2021年度より少ないものの、2020年度よりは多い175円の配当が予定されています。

まとめ

住友金属鉱山のESGやサステナビリティ関連の取り組み、株価推移や業績について解説してきました。資源・製錬・材料の3つの事業を連携させたビジネスモデルが特徴です。近年の業績は、金属価格の上昇、円安の進行、鉱山の売却などにより、売上高・利益ともに大きく拡大しました。

ESGに関しては、金属鉱山ということで環境への影響の大きい事業であり、さまざまな環境保持の施策を行っています。主な取り組みとしてICP(社内カーボンプライシング)によるGHG削減、非鉄金属の有効活用、休廃止鉱山の安全管理などが挙げられます。

今後も環境面の負荷を抑えながら、いかに業績を伸ばしていけるかに注目です。

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HEDGE GUIDE 編集部 株式投資チーム

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