すかいらーくは、ファミリーレストランの国内大手として約3,000店(※海外含む)を超える店舗を展開している企業です。環境に優しいバイオマス由来のプラスチック導入や働き方改革を進めるなどESGやサステナビリティに対する取り組みも積極的に進めています。
この記事では、すかいらーくのESG・サステナビリティの取り組み内容を詳しくご紹介します。また、企業の特徴やESG・サステナビリティに関する外部評価、業績・株価動向、株主優待や配当推移なども併せてご紹介しますので、ESG投資にご興味のある方は参考にしてみてください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※本記事は2023年2月10日時点の情報をもとに執筆されています。最新の情報については、ご自身でもよくお調べの上、ご利用ください。
目次
- すかいらーくの特徴
- すかいらーくのESG・サステナビリティの取り組み
2-1.環境に対する取組実績と今後の方針
2-2.社会に対する取組実績と今後の方針
2-3.ガバナンスに対する取組実績
2-4.すかいらーくのESG・サステナビリティに関する外部評価 - すかいらーくの業績・株価動向
- すかいらーくの株主優待・配当推移
4-1.株主優待
4-2.配当推移 - まとめ
1 すかいらーくの特徴
株式会社すかいらーくホールディングス(3197)は、東証プライム市場に上場するファミリーレストランの大手企業です。1962年4月4日に設立された食料品小売りの「ことぶき食品有限会社」が前身となり、1970年7月7日に東京都府中市でファミリーレストラン「すかいらーく」を出店してから外食チェーンとしての歴史は始まりました。
1974年に社名を「株式会社すかいらーく」へ変更後、事業の拡大に伴い持株会社体制に移行する形で2018年7月1日に現在の社名へと変更しています。
すかいらーくは、ガスト、バーミヤン、しゃぶ葉、ジョナサン、ブッフェレストランなどの多様なブランドのレストラン事業や、食品の販売、食材の配送等のグループ会社支援事業を行っているのが特徴で、グループ全体の店舗数は台湾やマレーシア、米国などの海外も含めて3,054店(2022年12月31日現在)です。
2021年12月期の売上高は約2,646億円で、外食チェーン全体で見ても「すき家」や「なか卯」などを運営するトップの株式会社ゼンショーホールディングス(7550)、「マクドナルド」などを運営する日本マクドナルドホールディングス(2702)に次ぐ規模となっています。
2 すかいらーくのESG・サステナビリティの取り組み
すかいらーくは、持続可能な社会の実現に向けてサステナビリティ委員会を設置し、全社方針や目標の策定、体制の構築や整備などサステナビリティ施策を継続的に実施しています。ここからは、ESG・サステナビリティに対する取組実績や今後の方針・目標などを具体的に確認してみましょう。
2-1 環境に対する取組実績と今後の方針
すかいらーくでは、環境に対する取り組みとして食品ロスの削減や使い捨てプラスチックの使用量削減などに力を入れており、これまでの取り組み実績や今後の方針は下表の通りです。
主な取組内容 | 実績 | 今後の方針や目標 |
---|---|---|
食品ロスの削減と廃棄食材の再生利用推進 | 食材のカット方法の見直しなどによって廃棄部分を削減。発生した食品廃棄物の90%は肥料または飼料にリサイクル。 | ・食品廃棄量 2030年までに2018年比50%削減 2050年までに同比75%削減など |
使い捨てプラスチックの使用量削減や環境配慮型素材への移行推進 | 2018年より石油由来プラスチック製品の削減に段階的に取り組み、環境に優しいバイオマスプラスチックなどへの切り替えを実践。 | ・使い捨てプラスチックの使用量 2030年までに2020年比50%削減など |
省エネと再生可能エネルギーへの移行推進 | 店内の照明にLEDの導入や業務用燃料電池を導入することなどでCO2排出量削減や省エネに取り組む。 | ・CO2排出量 2030年までに2018年比50%削減 2050年までに排出量ゼロへ |
工場、店舗での水使用量の削減 | 工場等では水量を節水コマなどを利用して調整し、店舗では衛生管理と節水を両立させるため手洗い手順のルール化と手洗い場所の水量基準を設定。飲料水のセルフ化も水資源の削減に貢献。 | ・水使用量原単位 2030年までに2018年比10%削減 2050年までに同比20%削減など |
2-2 社会に対する取組実績と今後の方針
すかいらーくは、社会に対する取り組みとして外食産業ならではの食の安全や安心の確保などに力を入れており、主な取り組み内容、実績、今後の方針は以下の通りです。
主な取組内容 | 実績 | 今後の方針や目標 |
---|---|---|
食の安全・安心を確保 | 野菜は個人生産者や出荷団体を通して、日本を含む世界各国から直接調達。調達先での監査や独自の商品管理システムの導入により安定的な品質と数量を確保。重大食品事故の発生件数はゼロを継続。 | ・重大食品事故の発生件数ゼロ ・食品検査数の拡大 |
働き方改革の推進 | 女性が無理なく働ける変形時間労働制度や時短勤務などを導入して女性の活躍を推進。長時間労働の抑制や年次有給休暇の確実な取得なども計画的に管理を実施。 | ・女性管理職比率 2030年までに30% 2050年までに50% ・有給休暇取得率 2030年までに80% 2050年までに100%など |
地域社会への貢献 | 店頭での募金活動や野球のリトルリーグでスポンサープログラムへの協賛、災害支援などを実践。 | 今後も地域社会の課題解決のため、地域コミュニティやステークホルダーの方々と連携を図りながら取り組みを進める方針。 |
2-3 ガバナンスに対する取組実績
すかいらーくは、コーポレートガバナンスに関する基本方針を策定し、取締役の実効性の確保などに努めている企業です。取締役6名のうち3名が社外取締役で、監査役は4名のうち3名が社外監査役の構成となっており、高度な経営の経験と知見を持った役員による実効性の向上と業務執行に関する監督強化などを図っています。
さらに、企業価値を保全するため「グループリスク管理規程」も定めており、食品事故など実際にリスクが発生した場合、被害の最小限の食い止めや再発防止などができるリスクマネジメント体制の構築なども行っています。
また、法令違反行為や不正行為などの早期発見、是正、再発防止等を目的として社外に内部通報の窓口を設けており、取引先専用の通報・相談窓口も開設するなど、法令順守に向けた取り組みも継続的に実施している状況です。
2-4 すかいらーくのESG・サステナビリティに関する外部評価
すかいらーくは、ESGやサステナビリティに対する取り組みが外部からも高い評価を得ている企業です。国内でもESG投資が活発化する中、すかいらーくは多くの機関投資家がESG投資の指標として採用している以下の5つの指数に採用されています。
指数算定会社 | 指数 | GPIFの採用状況 |
---|---|---|
FTSE Russell(英国) | FTSE Blossom Japan Index | 〇 |
FTSE4Good Global Index | × | |
FTSE Blossom Japan Sector Relative Index | 〇 | |
MSCI(米国) | MSCI日本株女性活躍指数(WIN) | 〇 |
S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(米国) | S&P/JPXカーボン・エフィシェント指数 | 〇 |
特に、株式市場で大きな影響力をもつ世界最大級の機関投資家GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がESG投資の指標として採用している指数の構成銘柄は、今後も多くの投資家が取引すると予想されており、さらなる流動性の高まりなどが期待できます。
また、デリバリー用のレジ袋や持ち帰り用の容器などを石油由来のプラスチックから環境に優しいバイオマスプラスチックに切り替える取り組みは、日本バイオマス製品推進協議会が主催する環境に優しいバイオマス製品の普及に優れた功績を挙げた個人または企業などに授与される「第12回バイオマス製品普及推進功績賞」を受賞するなど、具体的な取り組み事例についても高く評価されています。
3 すかいらーくの業績・株価動向
以下は、すかいらーくの過去5期分の売上高、営業利益、当期利益をまとめた表です。売上高は2017年12月期から2019年2月期にかけて緩やかに増加していましたが、2020年12月期に新型コロナウイルスの影響によって前期比76.8%と大幅な減収に陥り、最終利益が赤字になる大きな業績悪化となりました。
(単位:百万円)
決算期 | 2017年12月 | 2018年12月 | 2019年12月 | 2020年12月 | 2021年12月 |
---|---|---|---|---|---|
売上高 | 359,445 | 366,360 | 375,394 | 288,434 | 264,570 |
営業利益 | 28,103 | 22,857 | 20,562 | △23,031 | 18,213 |
当期利益 | 15,549 | 11,438 | 9,487 | △17,214 | 8,742 |
上記の赤字は、2020年1月に国内で新型コロナウイルスの感染者が初めて確認されて以来、政府・自治体からの外出自粛要請や営業時間短縮要請、急速な景気の悪化などの悪材料が重なったことが原因です。
その後、2021年に入ると売上高の減少に歯止めがかからず、前期比91.7%と減収になっていますが、2020年から力を入れてきたテイクアウト売上の増加や継続的なコスト低減、時短協力金などによって営業利益182億円、当期利益8億円と黒字へ回復しています。
しかし、2022年12月期は2023年1月12日に業績予想の下方修正が発表され、売上高3,040億円、営業損失60億円、当期純損失85億円と売上高は回復しつつあるものの、原材料価格の高騰などの更なる悪材料もあり、本格的な回復には至っていない状況です。
続いて、すかいらーくの株価動向についてです。以下は、2018年以降の四半期末の過去5年分の終値をまとめた表です。
(単位:円)
項目 | 3月末 | 6月末 | 9月末 | 12月末(期末) |
---|---|---|---|---|
2018年 | 1,532 | 1,639 | 1,681 | 1,735 |
2019年 | 1,835 | 1,881 | 1,966 | 2,135 |
2020年 | 1,602 | 1,711 | 1,500 | 1,597 |
2021年 | 1,656 | 1,543 | 1,640 | 1,511 |
2022年 | 1,579 | 1,589 | 1,543 | 1,527 |
同株価は売上高が堅調に伸びていた2018年3月末〜2019年12月末にかけて上昇していましたが、新型コロナウイルスによる株安などの影響を受け、2020年4月6日には1,350円と約3年半ぶりの安値をつけるなど下落に転じています。
その後、2020年6月末には1,711円まで回復していましたが、下半期に入ると無配や株主優待の減額なども発表されたため、年末に向けて再び下落する展開となりました。
2021年12月期には無配となっていた配当金が復配になりましたが、時短協力金などによる一時的な回復と見られていることもあり、株価は上昇局面を迎えるところまでは至っていません。2022年12月期も依然として厳しい状況が続いていることから、直近2年ほどは1,500円〜1,650円の間での値動きとなっています。
4 すかいらーくの株主優待・配当推移
最後に、すかいらーくの株主優待内容と配当推移についても確認しておきましょう。
4-1 株主優待
すかいらーくでは、毎年6月末日および12月末日時点の株主名簿に記載されている100株以上保有する株主を対象に株主優待を実施しています。グループ店舗で利用可能な「株主様ご優待カード」を贈呈しており、利用できる金額は株数に応じて以下の通りです。
保有株式数 | 優待内容 | ||
---|---|---|---|
年間合計金額 | 6月末基準日 | 12月末基準日 | |
100~299株 | 4,000円 | 2,000円カード×1枚 (2,000円) |
2,000円カード×1枚 (2,000円) |
300~499株 | 10,000円 | 5,000円カード×1枚 (5,000円) |
5,000円カード×1枚 (5,000円) |
500~999株 | 16,000円 | 3,000円カード×1枚 5,000円カード×1枚 (8,000円) |
3,000円カード×1枚 5,000円カード×1枚 (8,000円) |
1,000株以上 | 34,000円 | 2,000円カード×1枚 5,000円カード×3枚 (17,000円) |
2,000円カード×1枚 5,000円カード×3枚 (17,000円) |
100株保有していると年間で4,000円分の優待カードを貰うことができ、2022年12月末の株価1,527円で計算すると優待利回りは2.6%となっています。優待カードは、ガストやバーミヤン、ジョナサン、しゃぶ葉などすかいらーくグループのほとんどの店舗で使用可能な上、500円単位で使えるなど利便性の高さも特徴的です。
しかし、新型コロナウイルスによる業績悪化などを受け、2020年12月末基準日から優待金額は減額されており、100株保有の場合は6,000円から4,000円に、300株以上保有している場合は50%以上の減額となりました。今後も業績などを受けて優待内容が更に変更される可能性もあるため、注意も必要です。
4-2 配当推移
以下は、すかいらーくの過去5期分の配当推移をまとめた表です。2017年12月期と2018年12月期は38円の年間配当でしたが、2019年には19円に減配となり、2020年は通期損益が赤字に転落したこともあり無配となっています。
項目 | 年間配当額 | 中間 | 期末 | 配当性向 |
---|---|---|---|---|
2021年12月期 | 12円 | 0円 | 12円 | 29.4% |
2020年12月期 | 0円 | 0円 | 0円 | ― |
2019年12月期 | 19円 | 9円 | 10円 | 39.5% |
2018年12月期 | 38円 | 16円 | 22円 | 65.5% |
2017年12月期 | 38円 | 16円 | 22円 | 47.9% |
2021年12月期には復配となりましたが、2022年12月期については業績の下方修正と同時に再び無配になることが発表されており、今後も業績次第では復配が遠のく可能性もあります。
すかいらーくは、これまで積極的に配当金や株主優待で株主還元を行っており、現在も調整後当期利益の30%を目標に配当を実施する方針に変更はありません。しかし、ここ2~3年は従来通りの配当を実施できる業績というには難しく、今後も売上高や当期利益などの推移を見極めながら復配のタイミングを伺う展開となるでしょう。
まとめ
すかいらーくはファミリーレストランの国内大手で、バイオマスプラスチックの導入や働き方改革を実践するなどESGやサステナビリティに対する取り組みにも積極的です。GPIFがESG投資の指標として採用している指数にも選定されるなど、今後もESG関連投資の活発化が期待できる銘柄となっています。
しかし、経営面においては新型コロナウイルスの影響が大きく、コロナ前の状態まで回復するにはまだ時間を要する見込みです。今後も業績や株価動向、配当推移、株主優待などの状況を見極めながら投資判断を行うことが大切です。
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