国内流通大手であるイオン株式会社(8267)は、地域・社会に寄り添い、豊かで幸せな毎日をサポートする様々な事業活動を通じて、環境負荷低減や災害支援など地域の課題解決に向けた取り組みを積極的に実施しています。
この記事では、イオンのESGやサステナビリティに対する取り組み内容や実績を詳しくご紹介していきます。株価動向や株主優待、配当情報なども併せて解説しているので、ESG投資に関心のある方は、参考にしてみてください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※本記事は2023年2月3日時点の情報をもとに執筆されています。最新の情報については、ご自身でもよくお調べの上、ご利用ください。
目次
- イオンの特徴
- イオンのESG・サステナビリティの取り組み
2-1.自然と共生するモールづくりの推進
2-2.脱炭素の推進
2-3.地域とのつながり
2-4.地域・社会インフラ開発
2-5.ダイバーシティ・働き方改革
2-6.責任あるビジネスの推進 - イオンのESG・サステナビリティに関する外部評価
- イオンの業績・株価動向
- イオンの株主優待・配当推移
- まとめ
1 イオンの特徴
イオンは、小売、金融、ディベロッパー、サービスなどの事業を管理する持株会社です。イオングループは、286社の子会社、26社の関連会社から構成されており(2022年2月末日時点)、2022年の営業収益は8兆7000億円を超える国内流通2強の一角です。
イオングループの事業は、食料品や日用品などを総合的に幅広く取り扱う「GMS(総合スーパーマーケット)事業」、食料品を中心に取り扱う「SM(スーパーマーケット)事業」、日用品をより安く提供する「DS(ディスカウントストア)事業」、薬局や化粧品・コスメ等の「ヘルス&ウエルネス事業」、クレジットカード・銀行・保険等の「総合金融事業」など多岐に渡り、イオン株式会社はこれらを統括しています。今後は、海外展開も積極的に行う方針です。
2 イオンのESG・サステナビリティの取り組み
イオンは、事業活動を通じて環境負荷低減や地域社会の発展、ダイバーシティ推進など、持続可能な社会の実現に向けた様々な活動を実施しています。以下、イオンのESG・サステナビリティの取り組みについて詳しく見ていきましょう。
2-1 自然と共生するモールづくりの推進
イオンでは、「お客さまを原点に平和を追求し、人間を尊重し、地域社会に貢献する」という基本理念をもとに、1991年から「イオンふるさと森づくり」を行っています。イオンふるさと森づくりとは、新しいモールがオープンする際に、地域の方々とその土地に本来自生する木を植える植樹活動です。グループ累計植樹本数は、2021年2月末時点で約1,223万本に達しています。
また、一部店舗にてモール周辺の生態系調査を実施しており、外来植物の侵入や増加抑制、生物多様性の保全にも取り組んでいます。これらの環境活動が評価され、東京商工会議所が主催するeco検定アワード2020年で「エコユニット部門優秀賞」を受賞しています。
2-2 脱炭素の推進
イオンは、脱炭素に向けた長期ビジョン「イオン脱炭素ビジョン2050」を策定しており、再生可能エネルギー100%店舗の推進、環境に配慮した電力の活用、脱プラスチックの取り組み推進などを行っています。
イオンでは、一部の店舗において、使用電力の100%を再生可能エネルギーにより運営しているほか、従来店舗と比べて20%以上のCO2排出量削減を実施する環境配慮型店舗「スマートイオン」を12店舗出店しています。
そのほかにも、モールの太陽光発電設備の導入も進めており、2021年12月末時点で国内73モール、海外19モールに太陽光パネルが設置されているほか、地球環境保全のため、全モールの飲食店にてプラスチック製ストローを廃止し、紙製ストローなど環境に配慮した代替品を提供しています。
また、イオンモール新利府南館(宮城県)の「モクイクひろば(子供の遊び場)」において、適切に管理された森林から産出されたスギ材、ナラ材を採用しており、国際的な森林管理の認証制度である「FSCプロジェクト認証」を取得するなどの取組実績があります。
2-3 地域とのつながり
地域とのつながりは、顧客との信頼関係を築く上で欠かせない要素になるため、イオンでは、気軽に足を運べて安心・安全で楽しく過ごせるモールづくりを徹底しており、イベントなどを通じて地域コミュニティの活発化に貢献しています。
イオンが開催する各種イベントには、オペラコンサートやバレエイベントなどもあり、地域の元気が集まる場所を目指したハピネスモールを推進しています。また、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、余剰在庫を抱える一部の食品事業者を支援するため、セレクトショップやオンライン物産展を開設し、余剰在庫を消費することで食品ロス削減に貢献しています。
また海外では、中国のモールで定番イベントとして毎年夏祭りを開催しているほか、ベトナムでは、農業の専門知識や技術を共有するセミナーなどを通じ、ベトナムの農業の発展に貢献しています。
2-4 地域・社会インフラ開発
イオンは、防災行政上重要な役割を有する施設として「指定公共機関」に指定されているほか、国内のほぼ全モールで、陸上自衛隊や日本航空株式会社、全国10社の電力会社と防災協定を締結しています。
また、効率的な災害対策を実施することを目的に、国土交通省関東地方整備局とも「災害対応に関する協定」を締結しており、有事の際には、災害対応に必要なスペースや食料品、資機材などの物資提供を行うことで早期復旧や被災者支援に努めています。
平時の際においても、幼稚園や保育園、警察、消防署などと協力し、防災フェスを開催するなど防災に対する啓発活動にも取り組んでいます。
2-5 ダイバーシティ・働き方改革
イオンでは、ダイバーシティ推進を経営戦略の一つとして捉えており、国籍・性別・年齢・心身の障がいの有無・性的指向などの差別を排除し、多様な人材確保に努めています。
イオンは、多様な人材確保において、「日本一女性が働きやすく、活躍できる会社」を宣言しており、イオングループ全体における管理職の女性割合は26%、労働者に占める女性割合は44.2%、また、労働者に占める外国籍の割合は31.6%、障がい者の割合は2.66%といずれも高水準を占めています(※2022年2月末時点)。
働き方改革では、育児休業取得の推進を行っており、女性のみならず、男性の積極的な育児休業取得も後押ししています。また、独自の育児支援制度である「イクボス応援金制度」を導入しており、対象者には、育児休業中の金銭的な扶助を行い、仕事と家庭の両立を支援しています。
2-6 責任あるビジネスの推進
責任あるビジネスを推進する上で、コーポレート・ガバナンスの強化は欠かせない要素になります。コーポレート・ガバナンスとは、企業経営を管理・監督する仕組みのことで、株主利益の最大化や不正防止など、持続可能で責任あるビジネスを遂行するために必要な仕組みです。
イオンのコーポレート・ガバナンスでは、「取締役会」が監督機能の役割を担い、「監査役会」が取締役の業務の監査を行っています。また、諮問機関として「経営会議」を設置することで、経営戦略機能の強化と意思決定プロセスの効率化を進めています。
諮問機関には経営会議のほか、「リスク管理委員会」「コンプライアンス委員会」「ESG推進委員会」などがあり、各活動において審議・意見交換・方針決定を行っています。
コーポレート・ガバナンス強化の取り組みでは、定期的なコンプライアンス研修の実施や、内部通報制度である「イオン行動規範110番」を設置し、法令違反や不正行為の未然防止に努めています。
また、イオンでは、社会課題の解決と環境配慮を目的に、環境・社会課題解決双方に資するプロジェクトに限定されている債券「サステナビリティボンド」を発行しており、新型コロナウイルス対策や環境基準に満たしたモールの建設などに活用しています。
3 イオンのESG・サステナビリティに関する外部評価
イオンのESG・サステナビリティの取り組みは、外部から高い評価を得ています。以下では構成銘柄として選定されているESG指数や受賞実績などを一部紹介していきます。
ESG指数/受賞実績 | 概要 |
---|---|
MSCI日本株女性活躍指数 | 米MSCI社の高い性別多様性を指向・維持する日本企業で構成されるESG指数 |
S&P/JPXカーボン・エフィシェント指数 | 米S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社と東京証券取引所が共同開発する環境情報の開示、炭素効率性の水準より構成銘柄の投資ウェイトを決定するESG指数 |
SOMPOサステナビリティ・インデックス | SOMPOアセット・マネジメント社のESGに優れた約300社で構成されるESG指数 |
CDPにおいてスコア「A-」の評価を獲得 | 国際的な非営利団体「CDP」が主宰する気候変動への戦略・対応に関する情報公開プログラム |
CDP「サプライヤー・エンゲージメント評価」最高評価の「リーダー・ボード」に認定 | 国際的な非営利団体「CDP」が主宰する気候変動対策、GHG排出削減に関する情報公開プログラム |
GRESBリアルエステイト評価で「4スター」評価を取得 | GRESBリアルエステイト評価において、ESG推進方針や組織体制、保有物件の環境パフォーマンス等の指標 |
健康経営優良法人(大規模法人部門)に認定 | 経済産業省と日本健康会議が主催する優良な健康経営を実施している法人を顕彰する制度 |
4 イオンの業績・株価動向
イオン(8267)は、総合ショッピングモールを展開する小売企業なので、株価が景気に左右されやすい銘柄です。ただし、ヘルスケアや金融など幅広く事業展開しているため、1つの事業に依存していない強みも持ちます。
2020年(2月期)は、新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛により、総合スーパー事業の収益が落ち込んだものの、ヘルスケア商品の買いだめ需要からヘルス&ウエルネス事業が好調でした。純利益は前期比14%増で、株価は1年を通じて50%の大幅上昇となっています。
2021年(2月期)は、新型コロナウイルスの感染拡大による店舗休業が影響し、総合スーパー事業が悪化したほか、金融事業、テナント運営も不振でした。純利益は前期比71%減の赤字転落となり、株価は1年を通じて19%の大幅下落となっています。
2022年(2月期)は、客数減により、総合スーパー事業が低調推移したほか、不動産開発事業も不振となり、純利益は前期比109%増でしたが、従来予想より低い結果です。一方、下落傾向にあった株価は、年中盤から切り返し、1年を通じて2.7%の上昇で終えています。
2023年は、総合スーパーを中心に客足が回復する見込みですが、中国で新型コロナウイルスの感染が広がっていることから、業績に対する不透明感は強いままです。2023年2月6日時点の株価は2,625円台で推移しています。
5 イオンの株主優待・配当推移
イオンでは、イオン株式会社の株式を100株以上持つ株主に対し、「イオンオーナーズカード」を発行しています。イオンオーナーズカードは、イオンなどで買い物をする際に、持ち株に応じて最大7%のキャッシュバックを受けられます。キャッシュバック率は以下の通りです。
持株数 | 100~499株 | 500~999株 | 1,000~2,999株 | 3,000株以上 |
---|---|---|---|---|
返金率 | 3% | 4% | 5% | 7% |
そのほかにも、毎月20日、30日の「お客さま感謝デー」では、対象となる支払方法(現金、WAON、イオンのクレジットカード)で5%の割引特典を受けられるほか、イオンシネマやイオンハートなどの一部の店舗では、割引価格・優待料金などの特典を受けられます。
また、イオンの株主になると配当を受けられるメリットもあります。イオンの配当推移は以下の通りです。2023年2月期の期末配当は18円、年間配当は36円が予想されています。
項目 | 1株当たり配当金(円) | 配当金総額(年間) | 配当性向 | ||
---|---|---|---|---|---|
中間 | 期末 | 年間 | (百万円) | (%) | |
2023年2月期 | 18 | – | – | – | – |
2022年2月期 | 18 | 18 | 36 | 30,602 | 468.1 |
2021年2月期 | 18 | 18 | 36 | 30,601 | – |
2020年2月期 | 18 | 18 | 36 | 30,406 | 112.9 |
2019年2月期 | 17 | 17 | 34 | 28,620 | 121.0 |
まとめ
イオンは、事業を通じて安心・安全・快適さを提供することで、人々のライフスタイル向上に寄与しているほか、地域の公共機能やコミュニティ拠点として、地域社会の発展に大きく貢献しています。また、保有株数に応じてキャッシュバックを受けられる株主優待も特徴の一つです。
なお、業績面での不透明感は依然強いため、投資を行う際には、リスクを十分に把握した上で、慎重に検討してみてください。
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