「世の中を良くする企業ファンド(野村日本株ESG投資)」の成績や手数料は?投資先の分析も

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この記事では数あるファンドの中から、野村アセットマネジメントが運営する「世の中を良くする企業ファンド(野村日本株ESG投資)」をピックアップし、詳細を解説します。

ファンドの基本方針は、日本を良くする会社への投資です。具体的に「日本を良くする」とは、企業がESG活動を通じて、持続可能な社会を形成していくことを指しています。各企業が、ESG活動を収益に結びつけることができるか?という点も重要なポイントです。ファンド選びに迷っている人はご確認ください。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※信託報酬や基準価額など、課税対象となる数値はすべて税込表示としています。

目次

  1. 世の中を良くする企業ファンドとは?
    1-1.日本企業へのESG投資を通じて世の中を良くするメンバーへ
    1-2.社会課題の解決と投資リターンの両立
  2. ファンドパフォーマンスを徹底分析
    2-1.信託報酬がやや高い
  3. 国内のESG投資とSDGsの動き
    3-1.気候変動と環境保全の意識の高まり
    3-2.ダイバーシティと女性活躍
    3-3.各企業のESGへの取り組み
  4. ESG投資の今後
    4-1.ESG評価情報の整備
    4-2.長期視点での物差しが必要
  5. まとめ

1.世の中を良くする企業ファンドとは?

世の中を良くする企業ファンドは、野村アセットマネジメントが運営するファンドです。同ファンドを購入できる販売会社は2022年9月時点で6社。証券会社はSBI証券とうほう証券、残り4社は銀行です。

ESG投資をテーマとして、銘柄の選定を行います。ポイントは以下のとおりです。

  • 日本企業へのESG投資を通じて世の中を良くするメンバーへ
  • ESG投資とは?SDGsとの関係
  • 社会課題の解決と投資リターンの両立

それぞれ項目ごとに詳細を説明します。

1−1.日本企業へのESG投資を通じて世の中を良くするメンバーへ

近年、ESG投資は新たな投資のテーマとしてスタンダードとなりつつあります。元々は機関投資家に課せられたテーマでしたが、一般の投資家の間にも認識されるようになりました。

企業のESG活動は、投資家が銘柄を選定する時の重要な指標です。当ファンドは、社会的課題の解決を収益に結び付けられる会社を良い会社としています。注目する社会的課題は以下のとおりです。

  • 高齢化社会
  • 環境エネルギー問題
  • 社会の非効率化
  • 生活格差
  • 地域間格差

1−2.ESG投資とは?SDGsとの関係

ESGは企業の経営において重視される要素です。環境(E: Environment)、社会(S: Social)、ガバナンス(G: Governance)の3つの項目で、対外的な取り組みや社内統制を通じて社会貢献を目指します。

国連が2006年に出した「責任投資原則(PRI)」が、ESG投資が普及するきっかけとなりました。国内では年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、先駆けてESG投資による運用を取り入れています。企業のESG活動は銘柄選定の重要項目となっており、投資家へのESG活動のアピールは重要な課題の一つです。

一方、SDGsは国や企業が今後も存続していくために定めた目標を指します。2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として、2015年の国連サミットで全会一致で採択されました。17の項目と、169のターゲットで構成されており、設定された期限は2030年です。

SDGsの大きなカテゴリーの中に、企業が推進するESG活動があると考えて良いでしょう。ESG活動の成果は、結果的にSDGsの目標達成に直結します。

責任投資原則(PRI)とは

責任投資原則(PRI)は、投資家が企業を選ぶ時のスタンダードとされる指標です。2005年に当時のアナン国連事務総長が、世界の大手機関投資家へ、責任投資原則の策定への参画を呼びかけたことからスタートしました。その結果、策定された6つの原則は以下のとおりです。

  1. 私たちは投資分析と意志決定のプロセスにESGの課題を組み込みます。
  2. 私たちは活動的な(株式)所有者になり、(株式の)所有方針と(株式の)所有慣習にESG問題を組み入れます。
  3. 私たちは、投資対象の主体に対してESGの課題について適切な開示を求めます。
  4. 私たちは、資産運用業界において本原則が受け入れられ、実行に移されるように働きかけを行います。
  5. 私たちは、本原則を実行する際の効果を高めるために、協働します。
  6. 私たちは、本原則の実行に関する活動状況や進捗状況に関して報告します。

(引用:責任投資原則「6つの原則と署名機関のコミットメント」より

策定から数十年の時間が経過していますが、近年のSDGsの活動と連動して、資産運用の世界でもESG投資が注目されつつあります。

1−3.社会課題の解決と投資リターンの両立

世の中を良くする企業ファンドは、社会課題への取り組みと同様に、企業の稼ぐ力と競争力にも注目しています。社会課題により組む会社が強い競争力を持ち、稼ぎ続けることで世の中がより良くなっていく、という考え方です。収益を継続的に挙げ続けることで、より多くの社会課題への取り組みが実現できます。

企業のSDGsへの貢献度の高さとその分野での競争力は、野村アセットマネジメント独自の指標により、スコアリングされています。

2.ファンドパフォーマンスを徹底分析

世の中を良くする企業ファンドの基本的な概要を一覧表にまとめました。

基準価額 8,884円
純資産 2,323百万円
信託報酬 1.58%
信託財産留保額 0.30%
トータルリターン −14.6%(1年)
設定日 2021年8月3日

※2022/09/08時点の情報です。

アクティブファンドとして運用しているため、信託報酬はやや高めに設定されています。最近のファンドには珍しく、信託財産留保額が必要です。

銘柄選定は野村アセットマネジメント独自のスコアリングによって行われます。約40の銘柄を選ぶまでの手順は以下のとおりです。

  1. ESGスコアを満たしている300〜400銘柄を選出
  2. 一定の継続的な収益力を持つ60〜70の銘柄に絞り込み
  3. さらに市場動向や流動性を勘案し40銘柄のポートフォリオを作る

2022年7月29日発行の月次レポートによると、39銘柄中の組入上位10銘柄は以下のとおりです。

銘柄 業種 構成比率
1.信越化学工業 化学 5.40%
2.ソニーグループ 電気機器 5.20%
3.日立製作所 電気機器 5.00%
4.ダイキン工業 機械 4.70%
5.ダイワハウス工業 建設業 4.20%
6.中外製薬 医薬品 4.20%
7.リクルートHD サービス業 3.80%
8.キーエンス 電気機器 3.70%
9.ユニ・チャーム 化学 3.60%
10.HOYA 精密機器 3.40%

月次レポートに掲載されている10社のESGレポートより、以下の2社をピックアップしました。概要を紹介します。

ソニーグループ

色々なデジタルコンテンツを制作し、製作者であるクリエイターを積極的に育成している点が評価のポイントです。人々に娯楽や感動を届けることによって、世界のサブカルチャー的文化の発展と、クリエイターの自己実現に貢献しています。

野村アセットマネジメントでは、ソニーグループの一連の活動をSDGsの目標4「質の高い教育をみんなに」に該当するとして、評価しています。

キーエンス

キーエンスは、生産工程における自動化用のセンサーをはじめとした、測定器や画像処理機器メーカーを製造している会社です。

世界中の研究機関を支えつつ、製品の品質向上や現場の生産性向上、環境改善に貢献できている点をSDGs目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」にあたるとして評価されています。

高い収益性と成長性、それを支える優秀な営業体制と社員のモチベーションの高さにより、中長期的な成長が期待される企業です。

2−1.信託報酬がやや高い

世の中を良くする企業ファンドは、2021年の8月に運用がスタートした新しいファンドです。野村アセットマネジメントの販売目標の高さは、特設サイトの開設からも伺うことができます。

国内株式市場の地合い軟調の影響をうけ、執筆時点における1年間のトータルリターンはマイナス。長期視点での運用が必要とされるファンドですが、それだけに信託報酬の高さが気になるところです。解約時は0.3%の信託財産留保額が徴収される点も確認しておきましょう。

3.国内のESG投資とSDGsの動き

世界で進むESG投資の流れを受けて、国内のESG投資はどのような動きを見せているのでしょうか。以下、3つのポイントにて紹介します。

  1. 気候変動への意識の高まり
  2. ダイバーシティと女性活躍
  3. 各企業のSDGsへの取り組み

3−1.気候変動と環境保全の意識の高まり

気候変動の主な原因は、地球の温暖化です。温暖化による影響は、熱波や干ばつ、集中豪雨や大型台風などが挙げられます。温暖化は、二酸化炭素などの温室効果ガスが地球上空を覆うことで促進されます。気候変動による夏の高温や、集中豪雨は日本でも、身近に感じるところです。

もはや街の開発や商品開発のために、環境の配慮を全く考慮しない企業は良いイメージを持たれることはありません。人材の採用も上手く行かない可能性が高まります。投資対象としても選ばれることはなくなってくるでしょう。

環境への配慮は時代の潮流として、企業の掲げる重要な目標の一つです。

3−2.ダイバーシティと女性活躍

ダイバーシティとは、多様性を意味する言葉です。主に雇用機会の均等やマネージャー職や役員への登用の偏りをなくすを目指す意味合いで使われます。

SDGsでは、目標5「ジェンダー平等を実現しよう」、という項目が設定されています。女性、男性はこうあるべき、という性別による価値観の固定をなくし、多様性を認めあえる組織作りの推進が目標です。

日本国内のジェンダー平等は、思うように進んでいないのが実情です。古くからの文化が足かせとなっており、2021年のジェンダーギャップ指数の調査では、日本は156カ国中120位の結果となりました。世界の中でも、日本は遅れをとっている項目です。

3−3.各企業のESGへの取り組み

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、2020年12月30日時点の東証一部(現プライム市場)企業に対して、ESG活動に関するアンケートを実施しました(参照:GPIF「「第6回 機関投資家のスチュワードシップ活動に関する上場企業向けアンケート集計結果」の公表について」)。回答期間は2021年の1月15日〜3月13日です。

ESG活動に関するアンケート結果は以下のようになりました。

  • IRミーティングなどでESG関連が議題にのぼることも増えてきた
  • ESG活動の主要テーマは、コーポレート・ガバナンス7割、気候変動6割。ダイバーシティ4割はやや低め

コーポレート・ガバナンスをメインテーマとして、社内改革を進めているという企業が多く見られました。コーポレート・ガバナンスとは社内統制という意味合いですが、ダイバーシティや環境保全への取り組みは、コーポレート・ガバナンス構築の一環としている企業が多い可能性もあります。

筆者としては、アンケート全体を見ると、ESG活動に対する具体性を持った回答が得られておらず、思ったよりもESGへの意識は低いのかもしれないという印象を持ちました。ここ数年で企業内での認識が広まりつつある、という段階であると推測されます。既にESGへの取り組みを進めている大企業と、認識が広まりつつある段階の中小企業との差も感じられました。

4.ESG投資の今後

ESG投資が直面する課題は、ESGを評価するための指標や、活動を長期視点で見守るマインドです。以下、2つの項目について詳細を説明します。

4−1.ESG評価情報の整備

国内の企業において、ESGへの取り組みに具体性が見られないのは、ESGの定義と、活動を評価するための指標が曖昧、という点が挙げられます。

中長期のゴールの設定や、セクションごとに設定する目標は、評価軸がなければ明確に定めることができません。今後、具体的なESG活動を活発にするためには、簡潔で分かりやすい定義と指標の確立が求められます。

4−2.長期視点での物差しが必要

ESG活動は、短い期間での成果は期待できません。ESG活動に対する反響や、効果の測定にもある程度の時間がかかります。

企業が差し当たって取り組むべき課題は、働きやすい組織作りのための、セクハラ、パワハラの撲滅、個人の多様性を尊重した働き方改革です。環境面では、できるだけ紙を削減する、ペーパーレス化などが挙げられます。

投資家には、ある程度の時間がかかることを理解してもらうためのアピールも重要なポイントです。

まとめ

野村アセットマネジメントが運営する、世の中を良くする企業ファンドは、社会課題の解決を収益化につなげられると期待される企業へ投資するファンドです。野村アセットマネジメントが独自に設定した、SDGs活動と稼ぐ力の評価項目を満たした40銘柄を選定し運用します。

世界に比べると、国内企業のSDGsやESG活動は遅れが見られており、特に多様性を認めるダイバーシティの考え方や女性活躍の分野では、昔ながらの文化や慣習からの脱却が十分に図れていません。

今後は、投資を通じて、各企業へESG活動への働きかけをしていくことも重要とされています。

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sayran

「資産形成をより身近に」をモットーに、証券会社にて投資信託を中心にリスクの低い資産形成をオススメしていました。 テキストではよりわかりやすくみなさんの興味分野を解説し、資産形成の理解を広めていきたいと思っています。