三井物産はいわゆる五大商社の1つであり、ESGに関してもグローバルな取り組みを行っています。今回は三井物産のサステナビリティの取り組み、株価推移や業績について解説します。
※2023年3月3日時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定のサービス・金融商品への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- 三井物産の概要
- 三井物産のESGに関する取り組み
2-1.気候変動対策
2-2.海水に依存しないサーモン陸上養殖
2-3.女性の活躍支援 - 三井物産の10年間の株価推移と業績
3-1.10年間の株価推移
3-2.業績 - 三井物産の将来性
- 三井物産の配当・優待情報
- まとめ
1.三井物産の概要
銘柄 | 三井物産 |
証券コード | 8031 |
株価 | 4,182 |
PER(会社予想) | 7.48倍 |
PBR(実績) | 1.15倍 |
配当利回り(会社予想) | 3.21% |
※2023年3月3日のデータ
日本の五大商社の1つである三井物産には、以下のような事業セグメントがあります。
- 金属資源セグメント
- エネルギーセグメント
- 機械・インフラセグメント
- 化学品セグメント
- 鉄鋼製品セグメント
- 生活産業セグメント
- 次世代・機能推進セグメント
三井物産の事業で最大規模を誇るのは金属資源セグメントで、1960年代から鉄鉱石や原料炭の資源開発に積極的に参画し、安定供給に寄与してきました。2022年3月期の同社の当期利益は9,147億円ですが、金属資源はそのうち4,976億円と50%以上を占めています。
金属資源の主なビジネス分野は地下資源の開発・加工・販売で、鉄鉱石、原料炭、合金鉄、銅、アルミ、ニッケル、コバルト、リチウムなどを手掛けています。豪州での鉄鉱石や原料炭などが主なプロジェクトです。
エネルギーセグメントの第一本部は石油、石炭などのエネルギー資源の採掘・開発・輸入・外国間取引・国内販売を手掛けています。第二本部はLNGと天然ガス事業にフォーカスし、事業の参画・推進、多国間取引などを行っています。
機械・インフラセグメントは、電力・ガス・水の供給、鉄道や物流インフラなど、生活に欠かせない社会インフラの提供を行います。大型プラント、海洋エネルギー開発、船舶、航空、鉄道、自動車、鉱山・建設・産業機械など幅広い分野において事業を展開しています。
2.三井物産のESGに関する取り組み
三井物産はサステナビリティ重視の経営も行っており、社会と同社が持続的に成長するための重要課題として「マテリアリティ」を特定。また国連のSDGsの17の目標に取り組むため、同社のマテリアリティとSDGsを関連付けた事業活動を行っています。
ここからはESG関連の取り組みをいくつか紹介します。
2-1.気候変動対策
国内すべての事業所で使用する電力について、実質CO2フリー化を行っています。具体的にはまず本社ビルで使用する電力に関して、バイオマス発電で創出した再生可能エネルギー由来のクレジットを適用します。国内すべての支社と支店などを含む事業所で使用する電力にも「三井物産の森」などから創出されるクレジットを適用しています。
発電事業においては、水力を含む再生可能エネルギーの比率を2030年までに30%に引き上げます。2022年9月末時点での再生可能エネルギーの比率は22%となっています。ガスが59%、石炭は17%、石油が2%でトータル78%ですが、これらを70%未満に抑えるのが目標です。ノルウェーやインドなど、再生可能エネルギー事業を展開する企業への出資参画も行っています。
2-2. 海水に依存しないサーモン陸上養殖
サーモンの消費量は世界的に増加傾向で、海面養殖される魚類の中でもトップクラスです。その一方、餌の食べ残しや排泄物で発生する水質汚染が問題となり、養殖場の拡大も難しくなってきています。
三井物産は高度なろ過技術を保有するFRDジャパン社と提携し、水道水から作った人工海水をほぼ100%循環させながら飼育できるシステムにより、サーモンの陸上養殖事業に取り組んでいます。2018年からは千葉県木更津市のプラントが稼働開始し、「おかそだち」のブランド名で養殖サーモンを販売しています。
今後も海洋汚染を極力防ぎ、持続可能な水産物の生産・供給に貢献していく方針です。
2-3.女性の活躍支援
三井物産では女性の活躍を支援するための施策を複数実施し、2025年3月期には女性の管理職比率を10%以上にすることを目標としています。ただ、欧米企業の女性の管理職比率が30%~40%台であることを考えると、依然としてギャップが大きいと言える状況です。
子どもを帯同して海外に赴任する女性担当職も増加傾向にあります。このような社員に対して個別に面談を実施し、海外での育児との両立に関する経験者によるアドバイスを行います。
また、配偶者を帯同せず小学生以下の子どものみを帯同して海外赴任する社員に対し、保育園やベビーシッター費用補助等の各種支援も行うなど、海外での活躍を後押しする環境を整えています。
3.三井物産の10年間の株価推移と業績
ここからは三井物産の株価推移と、近年の業績について見ていきましょう。
3-1.10年間の株価推移
10年前の株価はおよそ1,400円で、現在は3,900円であり、10年間で3倍近くに成長したことになります。近年は1,500円~2,000円の範囲で推移していましたが、2021年2月から株価が急騰しました。近年の最高値である2,120円を突破し、2,362円まで上昇。2022年11月には4,000円を突破しました。
鉄鉱石、石油、原料炭などの資源価格が市場で急騰したことで同社の利益が急増したことが、株価上昇の一因と考えられます。
3-2.業績
直近4年間の業績推移は下記のとおりです。
項目 | 2019年3月期 | 2020年3月期 | 2021年3月期 | 2022年3月期 |
---|---|---|---|---|
収益 | 8,958,967 | 8,484,130 | 8,010,235 | 11,757,559 |
売上総利益 | 838,467 | 839,423 | 811,465 | 1,141,371 |
当期利益 | 414,215 | 391,513 | 335,458 | 914,722 |
単位:百万円
2021年3月期まで業績は低迷していましたが、2022年3月期には大きく拡大し、過去最高を更新しました。金属資源やエネルギーは世界的な価格の上昇、機械・インフラは自動車等が好調であったことがプラス要因となりました。
2022年3月期は価格急騰による影響が非常に大きかったことから、2023年3月期はその反動として前年減を見込んでいました。しかし第2四半期の決算説明にて、業績の見通しを上方修正し、2022年3月期より微減する程度としています。エネルギーと金属セグメントにおける為替の影響、機械・インフラセグメントでの関連会社からの受け取り配当増などがプラスに影響しました。
4.三井物産の将来性
三井物産の将来性について、ESG・サステナビリティと業績の両面から考察していきます。まずESGに関しては、気候変動や海洋汚染の抑制のため、同社の大きな企業規模を生かした取り組みがいくつも行われています。
三井物産は中期経営計画において、今後デジタル化や脱炭素の流れは加速すると予測しており、これらの環境変化を成長に繋げるとしています。その1つがエネルギーソリューションで、LNG開発・再生エネルギー事業を中心としたプラットフォームを構築し、気候変動対応に資する事業として、新たな収益の柱にすることを目指しています。
またサステナビリティ・ESGの進化に取り組むとも明記しており、経営での大きなテーマとなっています。主に気候変動、サーキュラーエコノミー、ビジネスと人権の3つを重要課題とする方針です。
気候変動に関しては、2050年にはネットゼロエミッション達成を掲げ、2030年には2020年比のGHG(温室効果ガス)半減を目指しています。また既存事業のリスクと新規投資判断のため、社内にカーボンプライシング制度も導入しています。
中長期で取り組む姿勢を明確にしており、目標も掲げていることで、同社が今後サステナビリティでもいかなる成果を残せるのかに注目です。
次に近年の業績については、資源価格の高騰と円安によって大幅な増益となりました。2023年3月期の業績見通しに関しても、第2四半期の決算にて上方修正を発表しました。今後も資源価格が急落するとは考えづらいため、業績は少なくとも堅調を維持するのではないでしょうか。
ただし為替が利益にもたらす影響も大きいという側面もあります。為替の動きは非常に予測しづらいため、今後の推移に注目です。
5.三井物産の配当・優待情報
1株あたり年間配当 | 2022年3月期実績:105円 2023年3月期予定:130円 |
主な株主優待 | なし |
2023年3月期は、1株あたり130円を予定しています。実現すれば、対前年で20%以上の増配となります。すでに第2四半期は1株あたり65円と、前年より20円多い配当を実現していますので、期末の配当がどうなるかに注目です。
まとめ
三井物産のESG関連の取り組み、株価推移や近年の業績について紹介しました。日本を代表する商社の1つであり、陸上サーモンの養殖など規模の大きな取り組みも行っています。
業績に関しても好調で、近年の資源価格の急騰を背景に、2022年3月期は大きな増益を達成しました。資源需要が急激になくなるとも考えられず、今後も堅調な状態が続くと思われますが、為替の動向には注意が必要でしょう。
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