川崎汽船のESG・サステナビリティの取り組みは?配当推移も

環境・社会課題の解決や持続可能な社会を目指すため、経営にサステナビリティを取り入れる企業が増えており、最近は投資家に対する大きなアピールにもなっています。海運大手で知られる川崎汽船株式会社でも「“K”LINE 環境ビジョン2050」を策定し、環境保全と持続可能な社会の実現に向けた活動を積極的に行っています。

この記事では、川崎汽船のESGやサステナビリティの取り組み内容について詳しく解説していきます。また、最新の株価動向および配当情報についても紹介しているので、関心のある方は参考にしてみてください。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※本記事は2022年11月11日時点の情報をもとに執筆されています。最新の情報については、ご自身でもよくお調べの上、ご利用ください。

目次

  1. 川崎汽船の特徴
  2. 川崎汽船のESG・サステナビリティの取り組み
    2-1.“K”LINE 環境ビジョン2050
    2-2.安全運航・人材・社会貢献活動
    2-3.コーポレートガバナンス体制・リスクマネジメント体制の強化
    2-4.川崎汽船のESG・サステナビリティに関する外部評価
  3. 川崎汽船の業績・株価動向
  4. 川崎汽船の配当推移
  5. まとめ

1 川崎汽船の特徴

川崎汽船は、コンテナ船、石炭・鉄鉱石などの不定期貨物船、自動車運搬船、LNGタンカーおよび石油タンカーなどを運航する海運企業で、海運大手3社の一角として知られています。

川崎汽船の事業セグメントは、大きく分けて「トライバルクセグメント」「エネルギー資源セグメント」「製品物流セグメント」などがあります。トライバルクセグメントでは、石炭、鉄鉱石、穀物のほか製紙原料や原材料輸送サービスを展開しており、日本向け輸送に加え、中国やインドなどの新興国および大西洋水域の輸送も積極的に行っています。

エネルギー資源セグメントでは、LNG(液化天然ガス)船、LPG(液化石油ガス)船、大型石油船、電力炭船などのエネルギー資源輸送事業のほか、ドリルシップ(海洋発掘船)やFPSO(浮体式石油・ガス生産貯蔵積出設備)などのオフショアや海洋エネルギー資源開発事業も展開しています。

製品物流セグメントでは、コンテナ船事業を主力として、自動車船事業、陸・海・空の輸送および倉庫等事業などの物流事業、近海・内航事業を展開しており、売上規模の最も大きいセグメントになります。

2021年度における各事業セグメントの売上高は以下の通りです。

2021年度 トライバルク エネルギー資源 製品物流 その他
売上高 2,765億円 897億円 3,802億円 106億円
売上比率 36.5% 11.8% 50.2% 1.40%

2 川崎汽船のESG・サステナビリティの取り組み

川崎汽船では、人権の尊重や環境問題への主体的な取り組み、社会貢献活動などを積極的に行い、SDGsやパリ協定などの国際的な取り組みを推進することで、国際社会との調和を図っています。

川崎汽船のESGやサステナビリティに対する取り組み内容を以下で詳しく見ていきましょう。

2-1 “K”LINE 環境ビジョン2050

気候変動を代表とする環境課題の解決に向けた動きが世界中で加速しています。川崎汽船では、世界各国の共通目標である2050年GHG(温室効果ガス)排出実質ゼロをベースに、2050年環境目標の「“K”LINE 環境ビジョン2050」を策定しています。

また、「“K”LINE 環境ビジョン2050」を遂行する上で、「ISO14001(国際的なEMSの規格)に基づいたEMSを構築・運用し、環境保全活動の充実にも努めています。「“K”LINE 環境ビジョン2050」における環境保全の取り組みは、大きく分けて4つあります。

1つ目は、「自社の低炭素化」です。低炭素化の取り組みでは、自然エネルギーを利用した自動カイトシステム(本船船首部に搭載する凧)「Seawing」の導入、LNG燃料焚き自動車船の導入、低燃料の大型ディーゼルエンジンを搭載する船舶の導入を行うなど、CO2低減に努めています。

また、エネルギーの有効活用を目指して、エンジンで燃焼した排ガスが持つ熱エネルギーの利用や、船に搭載されるプロペラで作られる水流エネルギー利用も積極的に取り入れています。

2つ目は、「社会の低炭素化支援」です。社会の低炭素化支援の取り組みでは、LNG燃料供給の事業化に向け、重油に代わる有力な船舶燃料であるLNGを安定供給するほか、曳航や各種作業が可能なオフショア船を導入することで、洋上風力発電設備の建設支援にも貢献しています。

3つ目は、「自社からの海洋・大気への環境影響低減」です。海洋・大気への環境影響低減の取り組みでは、燃料タンクの燃料油が船外に流出する対策として、燃料タンクにオーバーフロー管を設置するなどの海洋汚染防止への取り組みを行っているほか、自主的な減速航行による排気ガス削減にも貢献しています。

また、生物多様性への取り組みとして、新造船においては生態系に配慮した塗料の使用を進めており、生物多様性の保全に努めています。

4つ目は、「社会の環境改善支援」です。社会の環境改善支援の取り組みでは、湾岸周辺の清掃活動などの環境ボランティアや廃棄物の最小化とリサイクルの推進、エコ商品の購入の促進、海洋プラスチック削減がテーマの「プラスチック・スマート」フォーラムを通じ、ペットボトルキャップリサイクル運動などを行っています。

2-2 安全運航・人材・社会貢献活動

川崎汽船のサステナビリティ経営では、安全運航の維持のほか、人権・多様性の尊重、人材育成および労働環境の整備に努めています。また、事業展開している地域における雇用創出や技能開発に貢献するなど、社会の中長期的発展に向けて様々な取り組みも行っています。

安全運航への取り組みでは、「安全運航管理体制」「船舶管理体制の強化」「海事技術者の育成」を3本柱に掲げ、安全で最適なサービス提供を目指しています。その上で、乗船前の乗組員に対し、安全運航に関わる指導および最新情報の提供、定期的な検船、大規模事故対応演習を行っています。

また、海賊発生件数の多いソマリア沖・アデン湾では、可能な限り海上自衛隊や各国海軍の護衛を受けているほか、防弾チョッキやヘルメットの装着など、乗組員の安全を第一に安全対策を行っています。

その結果、川崎汽船グループの過去の重大事故件数は以下の通りです。過去5年間に座礁1件、衝突1件の事故発生があったものの、適切な対応により、被害を最小限に抑えています。

年度 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年
0 0 1 1 0

そして、労働環境の整備、人材育成の取り組みでは、人権の尊重や人格、個性および多様性を尊重し、人材育成と安全で働きやすい職場環境の整備に努めています。川崎汽船では、社員のワーク・ライフ・バランスを重要なテーマとし、在宅勤務を採用するなど、勤務形態の柔軟性を取り入れています。

例えば、育児休業(父親も可)や介護休業、妊娠中の時間短縮勤務など、従業員のワーク・ライフ・バランスを支援しています。また、入社年数に応じたコアスキル研修や海運実務研修、管理職向けのマネジメント研修など、多様な研修プログラムを実施しています。

社会貢献活動では、日本から中南米向けに寄贈された消防車や救急車等の海上輸送に協力し、エルサルバドル駐日全権大使から感謝状が贈られています。そのほかにも、南アフリカの子供たちへの教育支援を進めるNPO法人SAPESIの「移動図書館プロジェクト」に賛同し、同国向けの英語自動図書の輸送に協力しています。

また、自動車専用船で使用されている荷役用資材のリサイクル処理工程の一部を就労継続支援B型施設「晴天」に委託することで、障がい者の就労支援をサポートしています。

2-3 コーポレートガバナンス体制・リスクマネジメント体制の強化

川崎汽船では、株主等ステークホルダーの負託に応え、持続的に成長していくためのコーポレートガバナンス(企業経営を管理する仕組み)の体制と、リスクマネジメント体制の強化に取り組んでいます。

例えば、コーポレートガバナンス体制の構築・運営は取締役会の担当であり、株主総会が選任した監査役が取締役の職務の執行を監視します。また、2016年4月から業務執行体制の効率化・強化を目的に、ユニット統括執行役員を置いています。ユニット統括執行役員は、複数の事業部門および管理部門に配属され、各部門を統括する役割を担っています。

さらに、川崎汽船には、法令違反等の早期発見や不正防止を目的に、「ホットライン制度」と称する内部通達制度が導入されています。ホットライン制度は、雇用形態や役職を問わず全員が利用できるほか、通達に関する情報の秘密保持と通達者保護を徹底しています。

川崎汽船のリスクマネジメント体制では、経営上の様々なリスクを認識し、危機・リスク管理体制の構築を行っています。海運業・物流業における主要リスクは、船舶運航リスク、法務・コンプライアンスリスク、人材・労務管理リスク、情報システム・情報セキュリティリスク、災害リスク、経済活動変動リスク、環境保全リスク、投資リスクが挙げられます。

リスクマネジメント体制において、コンプライアンスに関わるリスクに対応する「コンプライアンス委員会」、船舶の運航に関わるリスクに対応する「安全運航推進委員会」、災害に対するリスクに対応する「災害対策委員会」、経済変動や環境・人材等その他の経営に関わるリスクに対応する「経営リスク委員会」を設けており、4つの委員会を束ね、リスクマネジメント全般を管理・推進する組織として「危機管理委員会」を設置しています。

これら委員会の委員長は社長が務めており、定期的に委員会を開催し、リスクマネジメント体制の強化に努めています。また、各委員会からの報告は、危機管理委員会が取りまとめ、取締役会に報告する体制が構築されています。

2-4 川崎汽船のESG・サステナビリティに関する外部評価

川崎汽船に対する取り組み内容は、外部からも高い評価を受けています。2021年〜2022年にかけて下記のような受賞や関連指数の選定実績があります。

2021年2月 仕事と育児の両立支援に関する積極的な取り組みが評価され、厚生労働省・東京労働局から「子育てサポート企業」として、「2020 年くるみん」を取得
2021年12月 持続可能な経済を実現させる活動を行う国際非営利団体のCDPから、2021年度CDP気候変動質問書の最高ランクである「Aリスト」企業に6年連続で認定
2022年3月 経済産業省と日本健康会議が共同で実施する、優良な健康経営を実践している企業を顕彰する健康経営優良法人認定制度において、3 年連続 4 回目となる「健康経営優良法人2022(大規模法人部門)」に認定
2022年4月 環境、社会、ガバナンス(ESG) の対応に優れた日本企業のパフオーマンスを反映する 「FTSE Blossom Japan Sector Relative Index」の構成銘柄に選定
2022年8月 ESG 投資の世界的な指数である「FTSE4Good Index Series」及び「FTSE Blossom Japan Index」の構成銘柄に選定

3 川崎汽船の業績・株価動向

川崎汽船(9107)などの海運株は、株価が景気動向に左右されやすい景気敏感株に該当し、景気や日々の経済状況によって激しく変動する特徴があります。そのため、川崎汽船に投資を行う際には、価格変動リスクを認識し、業績のみならず景気動向にも注意を払うことが大切です。

2020年(3月期)は、新型コロナウイルスの影響もあり、売上高は前期比12%減となりましたが、国内の海運大手3社が共同出資するコンテナ船事業会社「オーシャン・ネットワーク・エクスプレス(ONE)」の採算が改善したほか、エネルギー資源事業が好調だったため、営業損益と経常損益は黒字転換し、株価は1年を通して16.7%の上昇となっています。

2021年(3月期)は、オーシャン・ネットワーク・エクスプレスが予想以上の利益を上げたほか、輸出需要増による運賃高騰もあり、純利益が前期比17倍の900億円と過去最高の利益規模を記録し、株価は1年を通して226%の大幅上昇となっています。

2022年(3月期)は、引き続きオーシャン・ネットワーク・エクスプレスの利益急増が業績を押し上げる形となっており、純利益は過去最高を更新しています。ただし、川崎汽船は、コンテナ船事業の依存度が高いこともあり、今後のコンテナ船需要の動向に注意を払う必要があります。2022年11月11日時点の株価は2,590円台で推移しています。

4 川崎汽船の配当推移

川崎汽船の利益配分は、企業価値向上に必要な投資および財務の健全化を確保した上で、キャッシュフローも踏まえて積極的な株主還元を進めることで、中長期的な株主利益の配分を図ることを基本方針としています。

川崎汽船の配当推移は以下の通りです。

年度 中間 期末 合計 配当利回り
2018年3月期 0 0 0 0%
2019年3月期 0 0 0 0%
2020年3月期 0 0 0 0%
2021年3月期 0 0 0 0%
2022年3月期 0 600 600 7.48%
2023年3月期 300

※2022年11月11日時点

2022年3月期は、コンテナ船事業の好調が続き、従来予想300円を上回る600円の配当を実施したことで、配当利回りは7.48%となりました。また、2023年3月期の中間配当においても300円の配当を実施しており、業績好調が続くことで、今後も積極的な株主配分が期待できます。

まとめ

川崎汽船は、環境保全の取り組みにおいて多くの実績があり、独自技術や知識を活用し、社会の持続的発展に貢献しているほか、海運企業として強固な管理体制のもと、安全運航に努めています。また、好調なコンテナ船事業を背景に、積極的な株主還元を実施するなど、資産運用やESG投資に関心がある方に適した企業となっています。

川崎汽船のESGやサステナビリティに関心のある方は、ご自身でもよくお調べの上、検討してみてください。

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