食品ロス問題に積極的に取り組んでいる上場企業は?各社の株主優待・配当推移も

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食品ロス問題はここ数年間で大きく取り上げられるようになった社会問題の一つです。日本では、2019年10月1日に「食品ロスの削減の推進に関する法律」が施行されるなど、食品ロス問題に対して国を挙げて取り組む姿勢が明確に示されている中、国内企業もSDGsなどを踏まえた上で様々な取り組みを始めています。

そこで、この記事では食品ロス問題の内容や食品ロスの解決に取り組んでいる上場企業をご紹介します。食品ロス問題について詳しく知りたい方、サステナビリティやESG投資に関心のある方は参考にしてみてください。

※本記事は2023年3月8日時点の情報をもとに執筆されています。最新の情報については、ご自身でもよくお調べの上、ご利用ください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

目次

  1. 食品ロス問題とは
    1-1.食品ロスの問題点
    1-2.日本の食品ロス問題の現状と取り組み
  2. 食品ロス問題に積極的に取り組んでいる上場企業
    2-1.セブン&アイ・ホールディングス
    2-2.クラレ
    2-3.ニチレイ
    2-4.インフォマート
  3. まとめ

1 食品ロス問題とは

最近、日本でも大きな社会問題として認識されている食品ロス問題は、SDGsやESGの観点からも避けて通ることができない課題です。食品ロスとは、本来食べられるのに捨てられてしまう食品のことであり、スーパーやコンビニなどで販売されている食品の賞味期限切れによる廃棄、食品製造の際に発生する形やサイズなどを満たしていない規格外品の廃棄、飲食店や一般家庭における余った食品の廃棄などにより、食品ロスは発生しています。

なお、「賞味期限」とは一般消費者向けに販売される加工食品などに原則として表示が義務付けられている品質保証期限です。スナック菓子やインスタントラーメン、缶詰など比較的緩やかに品質が劣化する食品に用いられています。

一方、弁当や調理パン、食肉など品質の劣化が早い加工食品には「消費期限」が表示されており、日持ちしない食品ほど製造・流通・保管などの様々な段階で食品ロスが発生しやすくなります。

1-1 食品ロスの問題点

食品ロスが大きな社会問題として認識されるようになったのは、まだ食べられる食品を捨てることが、限りある資源の無駄遣いになるという理由だけではありません。ロスとなった食品の一部は飼料や肥料として再生利用され、残りは焼却などによって廃棄されるものの、自治体などはこれらの処理に莫大な費用を捻出しています。

また、再生利用や焼却の段階でCO2の排出や土壌・水質汚染などの環境問題を引き起こしていることも、対策が急がれている理由の一つです。

2015年9月に国連で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」で定められている「持続可能な開発目標(SDGs)」では、2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食品廃棄物を半減させることが盛り込まれており、最近は国際的な食品ロス削減に向けた機運が高まっています。

1-2 日本の食品ロス問題の現状と取り組み

日本の食品ロス問題については、農林水産省や環境省が食品廃棄量の推計値を発表しています。以下の通り、2022年6月9日に発表された令和2年度の推計値では、522万トンもの食品ロスが発生している状況です(参照:農林水産省「~食品ロス量(令和2年度推計値)を公表~」)

(単位:万t)

年度 年間発生量 うち事業系 うち家庭系
平成28年度 643 352 291
平成29年度 612 328 284
平成30年度 600 324 276
令和元年度 570 309 261
令和2年度 522 275 247

平成30年度まで600万トンを超えていた食品ロスの年間発生量は令和2年度にかけて522万トンまで削減されていますが、依然として多くの食べられる食品が廃棄されています。内訳では、外食産業や小売店などの事業活動で発生する事業系が平成28年度~令和2年度にかけて77万トンの削減となっており、各家庭などで発生する家庭系の44万トン減と比べて削減幅は大きくなっています。

このように、年々発生量が減少しているのは2001年5月1日に施行された「食品リサイクル法」と呼ばれる法律の制定以降、国が主導して食品廃棄物の発生抑制や減量化などを進めてきたことが大きな理由です。

最近では、2019年7月12日に公表された食品リサイクル法の基本方針で2030年度までに2000年度比で事業系食品廃棄物を半減とする目標が設定されました。また、2019年10月1日に施行となった「食品ロスの削減の推進に関する法律」では、食品ロスに関して国や自治体などの責務等も明らかにしています。

一般家庭から発生する家庭系の食品ロスについても「第四次循環型社会形成推進基本計画」において2030年までに2000年度比で半減させる目標を立てており、国を挙げて食品ロスに取り組む姿勢を明確に打ち出しています。

特に、事業系の食品廃棄物の削減はSDGsも踏まえた上でサプライチェーン全体での目標を立てており、食品関連の事業者だけでなく再生利用事業者なども排出量削減に向けた取り組みが求められています。

2 食品ロス問題に積極的に取り組んでいる上場企業

ここからは、食品ロス問題に積極的に取り組んでいる上場企業をご紹介します。各社の概要や食品ロス問題への取り組み内容だけでなく、株主優待、配当推移なども併せてご紹介するので、確認していきましょう。

2-1 セブン&アイ・ホールディングス

株式会社セブン&アイ・ホールディングス(3382)は、セブンイレブンやイトーヨーカドーなどを展開している国内首位の小売業です。セブン&アイは環境問題などに対応するため「GREEN CHALLENGE 2050」を定めており、食品ロス問題については2030年までに2013年比50%、2050年までに同比75%の食品廃棄量削減を目標に掲げています。

セブンイレブンの各店舗では、おにぎりやパンなどの販売期限が近付いた商品に店頭税抜価格の5%分のnanacoポイントを付与するエシカルプロジェクトを実施するなど、食品廃棄物を抑制する取り組みが推進中です。

また、セブン&アイが展開するファミリーレストランのデニーズでは、店舗で食べきれなかった料理を専用容器で持ち帰ることのできる「mottECO(モッテコ)事業」により廃棄量の削減に努めています。2023年中にはロイヤルホストなど別ブランドにも同事業を拡大することが発表されており、食品ロス問題に向けた取り組みが積極的に進められています。

なお、セブン&アイは2023年3月8日時点で株主優待を実施しておらず、過去5年の配当状況は下表の通りです。配当性向は概ね40%前後で過去5年間は定期的に増配も行われています。2023年2月期は中間49.5円、期末53.5円の年間103円予想と発表されており、2023年2月末の終値(6,090円)から算出した配当利回りは1.69%となっています。

項目 年間配当額 中間 期末 配当性向
2018年2月期 90円 45円 45円 43.9%
2019年2月期 95円 47.5円 47.5円 41.4%
2020年2月期 98.5円 47.5円 51円 39.9%
2021年2月期 98.5円 47.5円 51円 48.5%
2022年2月期 100円 48円 52円 41.9%

2-2 クラレ

株式会社クラレ(3405)は機能樹脂、化学品、人工皮革、合成繊維などの製造・販売を行っている化学メーカーです。液晶ディスプレイに用いられる光学用ポバールフィルムなど世界でもトップシェアの製品があり、2021年度には海外売上比率が7割超を占める割合まで高まっています。

過去にはテレビCMで「食品ロスを素材の力でなくしたい」とアピールするなど、食品ロスを削減する取り組みに積極的です。例えば、食品の包装などに使用されるガスバリア性樹脂「エバール」は気体遮断性に優れており、保存期間が延びることで食品ロスの削減に貢献しています。

2022年10月にドイツで開催された世界最大規模の国際プラスチック・ゴム産業展「K 2022」にも出展しており、バイオマス由来原料を割り当てた「エバール」のプロモーションを行うなど食品ロスの削減に向けた積極的な取り組みが進行中です。

クラレでは株主優待を実施しており、毎年12月末時点で1,000株以上保有している株主を対象に保有期間が3年未満の場合は3,000円相当、3年以上だと10,000円相当オリジナルカタログギフトが進呈されます。2022年は6月末時点の株主で希望する方を対象にクラレのカレンダープレゼントも実施されています。

なお、過去5期の配当状況については下表の通りです。2019年12月期は米国子会社の火災に起因する特別損失などの発生で最終利益はマイナスとなり、2020年12月期には新型コロナウイルスの影響で業績が大きく落ち込みましたが、年間配当額はほぼ変わらない水準で推移しています。

項目 年間配当額 中間 期末 配当性向
2018年12月期 42円 20円 22円 43.7%
2019年12月期 42円 20円 22円
2020年12月期 40円 21円 19円 535.1%
2021年12月期 40円 20円 20円 36.9%
2022年12月期 44円 21円 23円 27.3%

今後も株主還元として総還元性向35%以上の水準を発表しており、現時点での2023年12月期の配当予測は中間24円、期末24円の年間48円、2023年3月6日時点の終値(1,257円)で計算すると配当利回りは3.82%です。

2-3 ニチレイ

株式会社ニチレイ(2871)は国内トップの冷凍食品メーカーです。低温物流事業も柱の一つであり、国内外で世界有数の保管能力を誇る冷凍倉庫などを活かして温度管理が必要な冷凍食品や水・畜・農産品などの保管や輸送も行っています。

ニチレイはホームページ上に特設サイト「食品ロス研究所」を設け、食品ロスの啓蒙や同社の取り組みを紹介しています。肉や魚、野菜などを新鮮な状態で冷凍し、美味しさを閉じ込めたまま長期保存を可能にしており、流通の段階でも冷蔵・冷凍の食材を適正な温度で保管することによって鮮度と品質を維持することで食品ロス削減の取り組みなどを行っています。

また、強みである低温物流事業のネットワークを活かした物流段階での食品ロスを削減する取り組みや、長期間保存が可能な冷凍食品の啓蒙活動などによって廃棄される食品を削減する活動も進行中です。

ニチレイでは、平成22年2月2日に株主優待制度の廃止を発表して以降、株主優待は実施されていません。過去5期分の配当状況については下表の通りです。

項目 年間配当額 中間 期末 配当性向
2018年3月期 30円 15円 15円 21.1%
2019年3月期 32円 16円 16円 21.4%
2020年3月期 42円 21円 21円 28.5%
2021年3月期 50円 22円 28円 31.4%
2022年3月期 50円 25円 25円 28.3%

ニチレイでは、連結自己資本配当率(DOE)3%を目安に継続的な配当の実施を方針として打ち出しており、過去5期は増配が続いて配当性向も上昇傾向にあります。2023年3月期の配当予測は中間26円、期末26円の年間52円となっており、2023年3月6日時点の終値(2,686円)で計算すると配当利回りは1.94%です。

2-4 インフォマート

株式会社インフォマート(2492)は、企業間の電子商取引におけるプラットフォーム運営などが主力事業の会社です。「B to B」の事業形態となっているため、知名度はそこまで高くないものの、フード業界における受発注から請求までをデジタル化するサービスや売り手と買い手のマッチング、業務用食材を簡単に購入できる通販サイトなどが大きな強みとなっています。

また、独自のプラットフォームを利用できる強みを活かし、利用者である顧客の食品ロス削減に貢献しています。クラウド活用の受発注システムなどの利用によって外食産業を中心に余分な食材の発生を抑えることなどで食品ロス削減の取り組みを進めています。

なお、インフォマートには株主優待制度がありません。配当情報については下表の通りです(2020年1月1日付で1株につき2株の割合で株式分割を行っており、株式分割後の株数で計算したため中間・期末の合計が年間配当額と合わない部分がある点に留意してください)。

項目 年間配当額 中間 期末 配当性向
2022年12月期 0.72円 0.36円 0.36円 57.5%
2021年12月期 1.43円 0.47円 0.96円 60.7%
2020年12月期 3.71円 1.85円 1.86円 83.6%
2019年12月期 3.71円 1.84円 1.87円 50.0%
2018年12月期 3.67円 1.83円 1.83円 54.0%

インフォマートは50%を超える高い水準の配当性向を維持しています。なお、ここ数年売上高は順調に伸びているものの、積極的な設備投資などによって利益が圧迫されていることから2021年12月期からは大幅な減配となっています。

2023年12月期は中間・期末ともに0.23円の年間配当額0.46円予想で、2023年3月6日の終値(309円)から計算した配当利回りは0.15%です。

まとめ

日本では国を挙げて食品ロス問題に取り組む姿勢が明確になっています。SDGsや環境問題などの観点から企業にとっても避けては通れない問題で、様々な企業が食品ロス削減に向けた取り組みを進めています。

また、この記事でご紹介した会社以外でも多くの企業が食品ロス問題に取り組んでいます。特に外食産業や小売業では早急な対策が必要な社会課題の一つです。ESG投資などを行う際は食品ロス問題も重要な材料の一つとして検討してみてください。

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HEDGE GUIDE 編集部 株式投資チーム

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