ESG投資信託の成績や信託報酬は?5つのファンドを比較【2022年4月】

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近年、SDGsとともに、投資メディアなどで聞かれるようになったESG投資について、気になる方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。ESGは環境・社会・企業統治の観点から企業活動を評価する新しい指針を表明したものです。投資判断にあたって大事な内容ですが、全容を把握するのは少々大変です。

当記事では、ESG投資関連ファンドをピックアップし、詳細を解説しています。また、ESG投資の成り立ちや意義、これからについても解説します。ESG投資について、内容をおさえておきたい方や、投資先を探している方はご確認ください。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※信託報酬など、課税対象となる数値はすべて税込表示としています。

目次

  1. ESG関連ファンドをピックアップ
  2. ファンドごとの概要と特徴
    2-1.ブラックロック-ブラックロックESG世界株式ファンド
    2-2.世の中を良くする企業ファンド(野村日本株ESG投資)
    2-3.シュローダー-シュローダー・アジアパシフィックESGフォーカスF資産成長型
    2-4.HSBC ESG米国株式インデックスファンド
    2-5.CAM ESG日本株ファンド
  3. 今後のあたらしい企業のあり方を示すESG
    3-1.ESG投資とは?
    3-2.PRI(国連責任投資原則)
    3-3.SDGsとESG
  4. 投資のスタンダードはESG投資へ
    4-1.ESGの視点がない企業は選ばれない
  5. まとめ

1.ESG関連ファンドをピックアップ

SBI証券が取り扱うESG投資関連ファンドを以下にピックアップしました。

ファンド名 基準価額 純資産 信託報酬 トータルリターン/1年 トータルリターン/3年 シャープレシオ/1年
ブラックロック-ブラックロックESG世界株式ファンド(為替ヘッジなし) 21,670円 4,982百万円 0.7608%程度 15.38% 15.39% 1.17
野村-世の中を良くする企業ファンド(野村日本株ESG投資) 9,226円 2,321百万円 1.584%
シュローダー-シュローダー・アジアパシフィックESGフォーカスF資産成長型 19,514円 2,188百万円 1.837% -5.81% 8.99% -0.71
HSBC-HSBC ESG米国株式インデックスファンド 14,674円 1,904百万円 0.2465%以内 21.61% 1.67
キャピタル-CAM ESG日本株ファンド 14,265円 1,870百万円 1.496% -2.16% 7.32% -0.16
野村-野村インデックスファンド・先進国ESG株式 14,060円 1,690百万円 0.297%以内 27.33% 1.96
三井住友DS-三井住友・日本株式ESGファンド 12,520円 1,395百万円 1.188% 5.38% 8.20% 0.44
りそなAM-Smart-i 先進国株式ESGインデックス 15,739円 1,371百万円 0.2365% 21.81% 1.45
UBS-UBS MSCI先進国ESG株式インデックス・ファンド 17,670円 1,227百万円 0.4345%程度 14.89% 15.03% 0.92
三菱UFJ国際-eMAXIS ジャパンESGセレクト・リーダーズインデックス 13,134円 1,186百万円 0.44%以内 3.59% 9.56% 0.3

※数値は4月1日時点

ESG投資関連ファンドは、インデックスファンドとアクティブファンドが混在しています。信託報酬は0.2%台から1.8%台とかなりの幅が見られます。

トータルリターンでみる運用成績は、インデックスファンドのほうが良く、アクティブファンドは、6ヶ月や1年の短期間の運用成績が思わしくありません。

2.ファンドごとの概要と特徴

以下、5つのファンドの概要を紹介します。

2-1.ブラックロック-ブラックロックESG世界株式ファンド

ブラックロックESG世界株式ファンドはブラックロックジャパンが運用するファンドです。限定為替ヘッジありと為替ヘッジなしの2つのコースから選択可能です。

各企業のESGに着目しながら投資を行います。ビックデータ分析や最新テクノロジーを駆使したブラックロック独自の計量モデルを駆使しつつ、ESGと投資収益のバランスを勘案したポートフォリオを構築。

2022年2月末日発行の月次報告書によると、構成銘柄の国別比率は、アメリカが67.8%、日本6.7%、カナダ3.7%と続きます。業種別の配分上位は、情報技術が24.1%、金融15.8%、ヘルスケア11.6%です。

主要銘柄は、Apple、Microsoft、Amazon、Alphabetとなっており、アメリカのIT大型株が中心。月次報告書には、運用レポートの記載はありませんでした。Apple、Microsoft、Amazon、Alphabet以下の構成銘柄は、テスラ、VISA、エヌビディア、ジョンソンアンドジョンソンなど、大型株中心に構成されています。

2-2.世の中を良くする企業ファンド(野村日本株ESG投資)

世の中を良くする企業ファンドは、野村アセットマネジメントが運用するファンドです。SDGsに貢献する国内企業へ投資することによって、長期的な運用を目指します。SDGsとは簡潔に言い表すと、持続可能な開発目標です。ESGとSDGsは相互に関連性を持っています。

2022年3月末発行の月次報告書には、世の中を良くしている企業として、小松製作所が挙げられています。同ファンドの「組入銘柄解説/ESGへの取り組み」では、次のように紹介されています。

創業者の理念「工業冨國基」に基づき、建設現場の技能労働者不足、鉱山など現場の安全性・生産性向上のため、ICT(情報通信技術)を活用したスマートコンストラクション(建設現場の見える化・無人化技術)普及により社会課題解決に貢献。これまでに約13000件の現場にスマートコンストラクションを導入。2050年までにカーボンニュートラル達成も目指す。

世の中を良くする企業ファンドは東証一部の企業を中心に、ESGの観点をもとに幅広い企業へ投資を行っています。主な構成銘柄は、信越化学工業、ソニーグループ、日立製作所、キーエンス、ダイキンなどです。比較的、電気機器や精密機器の企業が多くなっています。

運用レポートでは、今後の世界経済の成長は鈍化が続くと予想する一方で、社会的価値の創造を実現できる企業への投資を継続していくと報告されています。

2-3.シュローダー-シュローダー・アジアパシフィックESGフォーカスF資産成長型

シュローダー・アジアパシフィックESGフォーカスF資産成長型は、シュローダー・インベストメント・マネジメントが運用するファンドです。日本を含むアジア各国の株式を投資対象としています。銘柄選定はESG(環境・社会・ガバナンス)の観点に基づき、持続的な成長が期待できる企業を選択します。

資産成長型の他に、予想分配金提示型コースもあります。

2022年2月末日発行の月次報告書によると、銘柄の地域別組入比率は、日本が31.9%、続いて中国が17.9%、以下、台湾、オーストラリア、韓国と続きます。銘柄の主な組入業種比率は、情報技術が24.7%、金融が16.7%、一般消費財、サービスが15.5%です。

組入銘柄の上位は、台湾や韓国、中国の企業で占められています。主な企業は、台湾セミコンダクター、サムスン電子、テンセント・ホールディングス、メディアテック等。

ファンドマネージャーからの報告によると、ウクライナ情勢を起因とするインフレ、中国でおこなわれている新型コロナウイルス感染拡大防止のためのロックダウンが経済へ影響するとされています。中長期的には、アジア各国の企業へのESG投資は意義のあるものとして、定性評価による銘柄選択を続けていくとしています。

2-4.HSBC ESG米国株式インデックスファンド

ESG米国株式インデックスファンドは、HSBCアセットマネジメントが運用する米国株式インデックスファンドです。FTSE USA ESG Low Carbon Select Indexをベンチマークとして、連動する運用成績を目指します。

3月末日に発行された月次レポートによると、組入銘柄の主な業種別比率は、情報技術が36.8%、ヘルスケア18.8%、金融13.2%です。ベンチマークのFTSE USA ESG Low Carbon Select Indexは、ESGの取組評価、温室効果ガス排出量、化石燃料埋蔵量に基づき、FTSE Russell社から公表された組入銘柄の構成比率を反映しています。

組入銘柄は、アメリカ大型株ファンドでよく見るMicrosoftやApple、Amazonを始めとして、メルク・アンド・カンパニーやシスコ・システムズ、コカコーラカンパニーなどの組入も見られます。

2-5.CAM ESG日本株ファンド

ESG日本株ファンドは、キャピタルアセットマネジメントが運用する国内株式ファンドです。国内ESG調査のパイオニアであるグッドバンカー社の情報提供を受け、キャピタルアセットマネジメント独自の財務分析を加味した総合評価によって、投資銘柄を選定しています。

3月末日発行の月次報告書によると、主な業種別の組入銘柄は、電気機器22.6%、化学13.4%、情報通信業10%です。組入銘柄は、ソニーグループ、日立、塩野義製薬、三井物産などの企業が名を連ねています。

ファンドマネージャーによる今後の見通しには、ウクライナ情勢についての懸念が記されていました。レポートには、国に先んじて西側諸国の企業が行うロシアへの制裁は、株主が企業へ求めるESGの視点であると指摘されています。

ESG投資は今後の運用に欠かせないものとし、引き続き中長期的な視点で持続的成長が可能な企業への投資を継続するとしています。

3.今後のあたらしい企業のあり方を示すESGとは?

ESG投資の基本的な考え方は、今後も人類が地球に住み続けるためにはどうしたらよいか?という問いが起点となっています。世界のリーディングカンパニーには、地球の環境を守るためのガバナンスが継続的に求められるでしょう。

以下、ESG投資について開設します。

3-1.ESG投資とは?

ESG投資は、財務情報だけでなく、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)要素も考慮した投資のことを指します。大きな資産を運用する機関投資家の間では、企業の財務だけでなく、環境保全にも目を向けるサステナビリティに注目したESG投資がスタンダードとなっています。

今後の投資における企業評価は、どんな手段を使ってでも儲けることが正義、ではありません。人類が住む地球環境を保全しつつ、持続可能な社会の維持に貢献しているか?という点が重点的に見られるようになります。

3-2.PRI(国連責任投資原則)

PRI(国連責任投資原則)は、投資活動にESGの考え方を取り入れる、などの項目で構成された機関投資家の投資原則です。原則に賛同する機関投資家は署名のうえ、遵守状況を適宜開示、報告します。

2018年の5月時点で、世界の1965の機関投資家が署名済みです。日本では年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)を筆頭に63の機関投資家が署名しています。

PRI(国連責任投資原則)の6つの投資原則は以下のとおりです。

  1. 投資分析と意思決定のプロセスにESGの視点を組み入れる
  2. 株式の所有方針と所有監修にESGの視点を組み入れる
  3. 投資対象に対し、ESGに関する情報開示を求める
  4. 資産運用業界において本原則が広まるよう、働きかけを行う
  5. 本原則の実施効果を高めるために協働する
  6. 本原則に関する活動状況や進捗状況を報告する

ESG投資が運用のスタンダードになれば、ESGの視点をもたない企業は投資家の信用を得られなくなります。信用を失うと、出資を募ることが難しくなり、大規模な企業運営が難しくなるでしょう。企業にとってもESGは重要な課題です。

3-3.SDGsとESG

SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称です。SDGsは2015年9月の国連サミットで採択されました。国連に加盟している193カ国が2016年から2030年の15年間で達成する目標として掲げられました。

目標は17の項目に分けられています。内容は、環境やエネルギー、貧困や教育、ジェンダーギャップや平和、国家間格差の是正などです。地球に優しい環境を作り、国家間の格差を是正し、できるだけ公平な世の中を作りたいという願いが込められています。

ESGとSDGsの根本的な考え方は同じです。ESGは投資からの視点、SDGsは市民社会や企業からの視点。SDGsは達成までの目標がかなり詳細に設定されています。現在、世界のトレンドは環境や社会に配慮しながら、収益をめざす方向にシフトしています。

4.投資のスタンダードはESG投資へ

ESG投資は現在、世界のスタンダードとなりつつあります。今後、大規模な企業展開を考える企業には、ESGの視点は欠かせません。現在のESG投資をとりまく状況を解説します。

4-1.ESGの視点がない企業は選ばれない

2020年のESG投資総額は35兆3,000億ドルに達しました。2018年から2020年の2年間で、世界のESG投資額は15.1%成長しています。

ESGの視点を持ち、どのように取り組んでいるか、投資家は厳しい目で企業を見ています。企業に対する投資家からの圧力は強まる一方です。以下、ESG視点による投資家からの企業への働きかけの一例です。

  • 石油メジャー、電力会社へ取り組んでいる温暖化対策の開示を求める決議案が多発
  • 2020年のみずほFGの株主総会では、パリ協定に基づく投資を行うために企業戦略の開示をもとめる議決案が34%を獲得
  • ドイツのAlstria社では、2021年の株主総会で1セントの「Green Dividend」を提案し、85%の賛同を得る

世界のリーディングカンパニーをはじめ、これから飛躍を目指すあたらしい企業にとってもESGの意識は重要な項目です。前述のとおり、ウクライナ侵攻に対する各企業のロシアへの対応は、ESGの視点に基づいていると見られます。

日本では、2015年に年金積立管理運用独立行政法人(GPIF)がPRI署名機関となり、2015年12月のパリ協定を経て、継続的にESG投資への対応を進めています。2020年10月には2050年までのカーボンニュートラル達成を発表しています。

世界規模で見ると日本のESG投資市場はまだ低く、企業のESG評価は海外先進国に比べて改善が遅れ気味です。年々ESG視点の企業選びは加速していくでしょう(参考:財務省「 ESG投資を巡る課題」)。

まとめ

ESGとは環境(E: Environment)、社会(S: Social)、ガバナンス(G: Governance)の略称です。人類が直面している温暖化や水不足、人権問題などを考慮し、持続可能で豊かな社会の実現を目指す投資行動を目指すもので、企業はESGやSDGsに基づいた行動が求められています。

これから投資をスタートする方は、一度ESGやSDGsについて、学んでみてはいかがでしょうか。個々の投資活動が世界へどう影響を与えるのか?という点をあらためて確認できるでしょう。

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sayran

「資産形成をより身近に」をモットーに、証券会社にて投資信託を中心にリスクの低い資産形成をオススメしていました。 テキストではよりわかりやすくみなさんの興味分野を解説し、資産形成の理解を広めていきたいと思っています。