エネルギー資源の枯渇問題に積極的に取り組んでいる日本の上場企業は?事例や株主還元も

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石油や天然ガスなどのエネルギー資源を利用することで豊かな生活を送れる一方、近年はエネルギー資源の埋蔵量が減少しており、近い将来に枯渇する可能性もある深刻な状況です。

そのような中、世界各国でエネルギー資源枯渇問題に向けた取り組みが進められており、日本国内でも企業が省エネルギー化や再生可能エネルギー・次世代エネルギーへの転換などを進めています。

そこで、この記事ではエネルギー資源の枯渇問題へ積極的に取り組んでいる日本の上場企業をご紹介します。取組事例だけでなく株主優待や配当などの株主還元についてもご紹介しますので、環境などに配慮した企業へ投資するESG投資にご興味のある方は参考にしてみてください。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※本記事は2023年4月11日時点の情報をもとに執筆されています。最新の情報については、ご自身でもよくお調べの上、ご利用ください。

目次

  1. エネルギー資源の枯渇問題とは
    1-1.日本に与える影響
    1-2.エネルギー資源の枯渇問題に向けた取り組み
  2. エネルギー資源の枯渇問題に積極的に取り組んでいる上場企業
    2-1.東急不動産ホールディングス株式会社(3289)
    2-2.トヨタ自動車株式会社(7203)
    2-3.東日本旅客鉄道株式会社(9020)
  3. まとめ

1 エネルギー資源の枯渇問題とは

私たちの豊かな生活は、電気やガス、ガソリンなどのエネルギーがなくては成立しません。しかし、これらのエネルギーを生み出す石油や天然ガス、石炭などの天然エネルギー資源は無限にあるわけではなく、このまま使い続けると近い将来枯渇する可能性が指摘されています。

自然界から採れる石油や天然ガス、石炭などの資源は1次エネルギーと言われ、電気や都市ガス、ガソリンなど私たちが直接使用できる2次エネルギーに姿を変えて利用されています。

近年、2次エネルギーの消費量は、人口増加や経済発展などに伴って世界中で急増し、これに伴い1次エネルギーの消費量も飛躍的に増えたことでエネルギー資源が枯渇の危機を迎えています。

資源エネルギー庁が発表した「エネルギー白書2022」によると、世界全体でのエネルギー消費量は1965年から石油換算で年平均2.3%増加しており、2020年には1965年の約3.6倍にまで増えました。

このようなエネルギー消費量の増加に伴って、天然のエネルギー資源は埋蔵量の減少が指摘されており、このまま使用を続けると石油は53.5年、天然ガスは48.8年、石炭は139年で枯渇する計算になります。

また、石油や天然ガス、石炭は化石燃料と呼ばれている通り、2次エネルギーに変換される過程で多くの二酸化炭素を排出します。排出される二酸化炭素は地球温暖化なども引き起こす要因なので、エネルギー資源の枯渇問題とCO2排出量の削減問題は密接な関係にある環境問題となっています。

1-1 日本に与える影響

エネルギー資源の枯渇問題は世界中で認識されている重大な問題ですが、日本では自国で1次エネルギーを確保できる比率(エネルギー自給率)が低いことから、更に深刻な問題として捉える必要もあります。

日本はもともと天然のエネルギー資源に恵まれた国ではありませんが、1960年度は石炭など国産の天然資源で国内使用の58.1%に相当する1次エネルギーを賄っていました。しかし、高度経済成長に合わせて石炭から石油への燃料転換が進むにつれて輸入依存度が高まり、2020年度のエネルギー自給率は11.3%と低水準になっているのが現状です。

以下は、資源エネルギー庁の公表値をもとに2020年度の主要国のエネルギー自給率についてまとめた表です。

国名 エネルギー自給率
ノルウェー 759.3%
オーストラリア 345.5%
カナダ 182.6%
アメリカ 106.0%
イギリス 76.0%
フランス 54.9%
ドイツ 34.7%
韓国 19.1%
日本 11.3%

このように日本のエネルギー資源は他国に比べて不足しているため、原子力など非化石燃料への転換を進めてきましたが、2011年3月11日に発生した東日本大震災で重大な原発事故が起こると原子力エネルギーの積極的活用も難しくなり、以下の通り、化石燃料への依存度は依然として高いままとなっています。

エネルギーの構成 1973年度
(第1次オイルショック)
2010年度
(震災前)
2021年度
化石燃料 94.0% 81.2% 83.2%
原子力 0.6% 11.2% 3.2%
水力 4.4% 3.3% 3.6%
再生エネルギー等 1.0% 4.4% 10.0%

日本は、化石燃料の中でも使用割合の高い石油の多くを中東など政情不安定な地域からの輸入に頼っています。過去のオイルショックによる景気低迷など、輸入依存度が高いことは様々な国内リスクを高める要因にもなるため、日本ではエネルギー資源の枯渇問題と併せてエネルギー自給率の引き上げなども対策が急務となっています。

1-2 エネルギー資源の枯渇問題に向けた取り組み

エネルギー資源の枯渇問題に対しては世界各国で様々な取り組みが進められており、その取り組みには省エネルギー化や再生可能エネルギー・次世代エネルギーへの転換などがあります。

省エネルギー化とは、既存のエネルギー資源を長く使用することを目的にエネルギーの消費量などを減らす取り組みです。従来と同じエネルギー消費量でより多くの2次エネルギーを生み出す技術の開発など様々な取り組みが進められており、特にCO2排出量削減の観点から化石燃料の使用量削減については急ピッチで取り組みが進められています。

再生可能エネルギーへの転換とは、太陽光・風力・地熱・水力・バイオマスなどの非化石エネルギーを使用することで化石燃料など限りあるエネルギー資源から永続的に利用できるエネルギー資源へと転換を図る方法であり、温室効果ガスを排出しない点が大きな特徴です。

技術発展によりエネルギー資源として利用できるようになった水素などの次世代エネルギーへの転換と併せて世界各国で取り組みが進められています。

2 エネルギー資源の枯渇問題に積極的に取り組んでいる上場企業

日本では官民を挙げてエネルギー資源の枯渇問題に向けた取り組みが進められています。ここからは、エネルギー資源の枯渇問題に積極的に取り組んでいる上場企業について、その取り組み内容や株主還元などをご紹介します。

2-1 東急不動産ホールディングス株式会社(3289)

東急不動産ホールディングス株式会社は、ビル賃貸を柱にリゾート開発や再生エネルギーなども手掛ける総合不動産大手です。2014年の太陽光発電事業の参入を皮切りに「ReENE(リエネ)」のブランドで風力やバイオマス発電事業を展開しており、日本のエネルギー自給率向上などを目的に再生可能エネルギーの積極的な推進を行っています。

また、東急不動産は2019年に事業活動で使用する電力を100%再生エネルギーで賄うことを目指す国際的なイニシアティブ「RE100」に国内不動産業として初めて加盟しました。

「ReENE」事業で進めてきた全国各地の太陽光発電所や風力発電所、バイオマス発電所の電力を利用し、2023年1月31日には同社事業所とオフィスビルや商業施設、ホテルなどで使用する電力の再生エネルギーへの切り替えが100%完了しています。

今後も東急不動産が運営する発電所の能力を活かして再生エネルギー利用の実績を蓄積し、国内では金融機関以外達成企業の出ていない「RE100」の達成に向けた動きも加速しています。

株主還元

東急不動産ホールディングスは毎年3月末時点で500株以上保有の株主に対して産直品や同社施設の利用券と交換できるポイントを付与しており、2023年3月分からは長期保有の株主に対して5年毎に優待ポイントを加算するなど優待内容の見直しが行われました。

保有株式数 付与ポイント 5年毎の加算ポイント
500株~ 2,000 1,000
1,000株~ 5,000 2,500
5,000株~ 26,000 13,000
10,000株~ 54,000 27,000
15,000株~ 84,000 42,000
20,000株以上 120,000 60,000

また、100株以上保有の3、9月末日時点の株主に対して同社のリゾートホテルやゴルフ場、スポーツジムなどで利用できる優待券を株数に応じて贈呈しています。

また、配当性向30%以上を配当方針として打ち出しており、過去3期の配当推移は以下の通りです。

項目 年間配当額 中間 期末 配当性向
2020年3月期 16円 8円 8円 29.8%
2021年3月期 16円 8円 8円 53.1%
2022年3月期 17円 8円 9円 34.8%

2023年3月期は中間9円、期末10円の年間19円予想となっており、2期連続の増配予定となっています。

2-2 トヨタ自動車株式会社(7203)

トヨタ自動車株式会社は新車販売台数世界トップクラスの自動車メーカーで、住宅事業やアグリバイオ事業なども手掛ける日本を代表する大企業です。ハイブリッド車の導入など省エネ化を推進してきましたが、現在は化石燃料を使用しない水素エンジンや新しい環境技術の開発などでエネルギー資源枯渇問題に貢献する取り組みを進めています。

トヨタは北米や中国で太陽光発電の導入や外部から風力発電による電力調達を行うなど再生エネルギーの活用にも積極的です。インドの現地法人トヨタ・キルロスカ・モーターでは太陽光発電の活用などで購入する電力の100%再生エネルギー化も達成しています。

また、住宅販売事業を手掛けるトヨタホームでは家庭で消費する電力を省エネや太陽光発電などで賄いエネルギー収支をゼロにする住宅「ZEH(ゼッチ)」を手掛けています。

電気自動車と家庭で使用する電力を相互に供給・利用できるゼロエネルギーハウスの「V2ZEH」は2021年度に省エネ大賞(省エネルギー性能に優れた製品やビジネスモデルが選出される賞で、一般財団法人省エネルギーセンターが主催し、経済産業省が後援となっています)を受賞するなど、家と車の両方で省エネに取り組めるビジネスモデルは外部からも高く評価されています。

株主還元

過去3期の配当推移は以下の表の通りです。なお、同社は2021年9月末を基準日として1株を5株にする株式分割を実施しており、下表は分割後の1株あたりの配当金額に換算した金額です。

項目 年間配当額 中間 期末 配当性向
2020年3月期 44円 20円 24円 29.9%
2021年3月期 48円 21円 27円 29.8%
2022年3月期 52円 24円 28円 25.3%

過去2期は堅調な業績を受けて連続増配となっていますが、2023年3月期は中間配当25円が出ているものの2023年4月8日時点で会社の配当予想が発表されていません。コスト高などの影響で第3四半期は増収減益となっているため、3期連続の増配は難しいとの見方が大勢です。

2-3 東日本旅客鉄道株式会社(9020)

東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)は、首都圏を中心とした東日本を営業エリアに持つ鉄道大手で、不動産賃貸や駅での物販事業も手掛けています。これまで、駅のホームやコンコース照明のLED化、空調設備の高効率化等によって省エネを進めており、鉄道事業における省エネ化にも取り組んできました。

ブレーキの際に発生するエネルギーの電気への変換や効率的なモーター制御など技術を活かした省エネ車両の導入だけでなく、山手線における列車乗務員の運転操縦による省エネ技術の研究など、JR東日本で使用するエネルギーの8割を占める列車運行の省エネルギー化が進められています。

また、水素を用いた燃料電池と蓄電池を併用した水素ハイブリッド電車「HYBARI(ひばり)」の開発に成功するなど次世代エネルギーの活用にも積極的です。

「HYBARI」はJR東日本の車両設計・製造技術と日立製作所(6501)の鉄道用ハイブリッド駆動システムの技術、トヨタ自動車の燃料電池の技術を結集して開発された車両で、現在は鶴見線や南武線などで実用化に向けた実証実験が行われています。

株主還元

東日本旅客鉄道は毎年3月31日時点で100株以上を保有している株主に同社の鉄道を優待料金で利用できる株主優待券などを贈呈しており、株数に応じた優待券の贈呈枚数は下表の通りです。なお、3年以上の長期保有株主はさらに加で1枚贈呈されます。

保有株式数 贈呈枚数(枚)
100株~1,000株 100株ごとに1枚
1,000株超~10,000株 10枚+1,000株超過分200株ごとに1枚
10,000株超~20,000株未満 55枚+10,000株超過分300株ごとに1枚
20,000株以上~50,000株未満 100枚
50,000株以上~100,000株未満 250枚
100,000株以上 500枚

過去3期の配当推移は下表の通りで、2021年3月期から2期連続で新型コロナウイルスなどの影響による大きな損失が発生しているものの年間配当100円をキープしています。

項目 年間配当額 中間 期末 配当性向
2020年3月期 165円 82.5円 82.5円 31.4%
2021年3月期 100円 50円 50円
2022年3月期 100円 50円 50円

2023年3月期は増収増益予定で赤字からの回復を見込んでいますが、会社の配当予想は中間、期末ともに50円の年間100円と据え置きです。今後も厳しい事業環境が続くと予想されており、配当についても業績に左右される展開が見込まれます。

まとめ

エネルギー資源の枯渇問題は私たちの豊かな生活を揺るがす大きな問題です。特に、1次エネルギーとして世界中で多く消費されている石油や天然ガスは50年前後で枯渇する計算となっており、この問題に対する取り組みは世界各国で急ピッチに進められています。

特に、日本はエネルギー自給率が低いという特有の理由などもあり、多くの企業がこの問題に対する取り組みを積極的に進めています。エネルギー資源の枯渇問題に積極的に取り組んでいる上場企業に関心のある方は、この記事を参考にご自身でも調査を進めてみてください。

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HEDGE GUIDE 編集部 株式投資チーム

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