米国政府とインド政府は10月7日、クリーンエネルギー分野での関係強化を図る大臣共同声明を発表した(*1)。公正で持続可能なエネルギー・トランジション(#1)の加速にコミットする。
両国は2021年9月の首脳会談で、「米印クリーンエネルギー戦略的パートナーシップ(SCEP)」を締結。「決定的な10年(critical decade、#2)」といわれる2030年までに、排出量の削減と気候変動の緩和目標を達成するうえで、クリーンエネルギーを大規模に導入するというビジョンを共有する。今回の声明発表は、SCEPの進捗確認と更なる関係強化を図る狙いがあるとみられる。
気候とクリーンエネルギー分野で協力することにより、安価なエネルギーへのアクセスとエネルギー正義(#3)を促進するとともに、持続可能な経済成長と公正なエネルギー・トランジションを支援しなければならない。そのようななか、両国は新興燃料・テクノロジー、電化、最終消費部門の脱炭素化について進捗を確認した。
また、二酸化炭素(CO2)の排出削減が困難な産業(hard-to-abate産業)、スマートグリッドやエネルギー貯蔵、CO2の回収・有効利用・貯留(CCUS)といった分野で協議を行った。「クリーンエネルギー研究促進のためのパートナーシップ(PACE-R)」を通じた、革新技術に関する研究についても話し合われた。
今後2ヶ国は、グリッド・インタラクティブ・エフィシェント・ビルディング(GEB、#4)や電気自動車といった分散型エネルギー資源の評価、再生可能エネルギーの導入促進、エネルギーの効率化・保全推進、運輸部門の電動化と脱炭素化、石油・ガス業界のバリューチェーン(価値連鎖、#5)での排出量の削減などに取り組む。
米国とインドは、それぞれ世界第2位と3位のCO2排出国となる(燃料燃焼によるCO2排出量ベース)。米バイデン政権は21年、30年までにGHG排出量を05年比50-52%削減すると発表。22年8月には気候変動対策を中心とする新たな歳出・歳入法が成立した。歳出規模は4,300億ドル(約63兆1,000億円)超にのぼる。歳出の大半は気候変動対策に充てる。
一方、インドは8月、GHG排出削減目標を引き上げ、30年までにGDP原単位のGHG排出量を05年比で45%削減することにコミットすると発表した(*2)。同年までに電源構成にしめる再生可能エネルギーの割合も50%に引き上げる。
(#1)エネルギー・トランジション…従来の石炭や石油などの化石燃料を中心とするエネルギー構成から、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを中心としたものに大きく転換していくこと。
(#2)決定的な10年…1.5℃目標を追求するうえで、30年までに対策を加速させる必要があるとみられている。
(#3)エネルギー正義…エネルギー利用による便益と費用の公平な分配や、透明性の高い意思決定プロセスの確保などを意味する。
(#4)GEB…グリッド(送電網)と建築物を双方向で繋ぎ、分散型のエネルギー資源を供給の担い手として利用。
(#5)バリューチェーン…企業の事業活動(原材料調達から製造、流通、販売、アフターサービスまで)を価値創造のための一連のながれとしてとらえ、付加価値を分析するツール。
【参照記事】*1 米エネルギー省「U.S.-India Strategic Clean Energy Partnership Ministerial Joint Statement」
【関連記事】*2 インド、30年までのCO2排出05年比45%削減にコミット。再エネ比率50%に引き上げ
フォルトゥナ
【業務窓口】
fortuna.rep2@gmail.com
最新記事 by フォルトゥナ (全て見る)
- ネイチャーファイナンス、金融機関向けネイチャーポジティブ投資支援ツール「NatureAlign」を発表 - 2024年11月19日
- 2050年ネットゼロ達成見込みはG2000企業の16%、脱炭素化にAI活用中の企業もわずか14%。アクセンチュア最新調査 - 2024年11月19日
- ゼネラル・ギャラクティック、シード期に12億円調達。CO2利用した化石燃料フリー天然ガス生成技術を開発へ - 2024年11月19日
- 環境NGOのCDPと欧州財務報告資本グループ(EFRAG)が高い相互運用性を確保。環境データエコシステムの効率性向上へ - 2024年11月19日
- カナダ、石油・ガス業界向けのGHG排出の上限設定。19年比35%減。26年分から排出量の報告義務 - 2024年11月19日