メルセデス・ベンツ、廃タイヤから車両部品生産へサーキュラーエコノミー推進。米リヴィアンとも提携し商用EV共同生産も

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ドイツ自動車大手メルセデス・ベンツグループ(ティッカーシンボル:MBG)は8月24日、化学大手BASF(BAS)とおよび熱分解スタートアップ企業ピュルム・イノベーションズ(Pyrum Innovations、PYR)と共同で、廃タイヤを原料としたリサイクル素材を活用して自動車部品を製造すると発表した(*1)。ケミカルリサイクルにより製造段階のサーキュラーエコノミー(循環型経済)を推進する。

BASFが農業廃棄物から得たバイオメタンと、ピュルム・イノベーションズが開発した廃タイヤ由来の熱分解油を融合してプラスチックを製造する。同素材は石油由来のバージンプラスチック(再生素材でないプラスチック)と同等の特性をもち、塗装や衝突安全性能の観点からもメルセデスが求める高い水準を満たすという。これらの特性を持つことで、未使用(一次)プラスチックを用いた多くの自動車部品を代替できる可能性がある。2022年には、同素材を電気自動車(EV)「EQE」と「Sクラス」のドアハンドルに活用する。さらに「Sクラス」の衝撃吸収装置や、新型EV「EQE SUV」にも採用する見通しだ。

メルセデスは、持続可能なリサイクル素材の活用を徐々に拡大するとともに、ケミカルリサイクルを推進していく方針としている。30年までに原料全体に占めるリサイクル素材の割合を40%に引き上げ、39年までにバリューチェーン(価値連鎖、#1)全体でカーボンニュートラルの達成をめざす。製品の設計段階から廃棄段階を考慮した「環境配慮設計(DfE)」の取り組みを推進すべく、バイオマスバランスアプローチ(#2)やケミカルリサイクルといった手法を取り入れる。

さまざまな業界で脱炭素化にむけたサーキュラーエコノミーへの取り組みが強化されている。米コカ・コーラ(KO)は、北米の主力ブランド「DASANI(ダサニ)」で100%リサイクルペット(rPET)容器を採用する(*2)。スペイン電力大手イベルドローラ(IBE)は、風力タービンのブレード(風車の羽根)などのリサイクル化に取り組む(*3)。

また、独メルセデス・ベンツグループ(MBG)は9月8日、新興電気自動車(EV)メーカーの米リヴィアン・オートモーティブ(RIVN)と提携し、欧州で商用EVを生産すると発表した(*3)。

両社は組み立てラインを共有し、それぞれの大型電動バンを生産する計画だ。投資やテクノロジー、サプライヤーを共有することでコスト削減をはかる。中東欧にあるメルセデスの既存工場ちかくにEV専用工場を新設し、数年以内に生産を開始する。

メルセデスの大型電動バンは、2025年以降に投入する新たなEVバン・アーキテクチャーを基盤とする見込みだ。一方、リヴィアンの車体プラットフォームは、アマゾン(AMZN)むけに開発した軽バンプラットフォームの次世代版となる。

メルセデス・ベンツ・バン(商用車)部門のヘッドを務めるマシアス・ゲイセン氏は「現在はバン型の新車種の全EV化を加速させている。リヴィアンとは、サステナブルで優れた製品を供給し、バン市場の電動化を推進するという戦略を共有している」と述べた(*4)。

リヴィアンのR.J.スカーリンジ最高経営責任者(CEO)は「魅力的な製品・サービスをつくることで、世界が化石燃料の消費からの移行するのを促すべく、当社は設立された。顧客のみならず地球にとってベネフィットのある本当に優れた電動バンを製造したい」と言及し、メルセデスとの提携を歓迎した(*4)。

メルセデスは10年以上前から電動バンを生産。乗用車部門も電動化を推進しており、30年までに全販売車種のEV化をめざす。8月にはカナダ政府との提携を発表(*5)。持続可能なバッテリーの製造やクリティカルミネラル(重要鉱物)の供給などで関係強化をはかる。

一方、リヴィアンはアマゾン(AMZN)へ配送用EVトラックを納入する。ミシガン州の工場でEVピックアップトラックとスポーツ用多目的車(SUV)も生産している。

(#1)バリューチェーン…企業の事業活動(原材料調達から製造、流通、販売、アフターサービスまで)を価値創造のための一連のながれとしてとらえ、付加価値を分析するツール。

(#2)バイオマスバランス・アプローチ…再生可能原料を化学品製品の第一段階で化石資源とともに使用。その後、バイオベースの量が認証された方法で特定製品にわりあてられる。バイオマスバランス製品の製造に必要なだけの再生可能原料が化石原料の代わりに投入されたことが独立機関により認証される。この手法をもちいることで、従来と同等の製品性能を有するとともに、化石資源使用量の削減や温室効果ガス(GHG)排出量の低減につながる。(BASFのバイオマスバランス・アプローチ参照)

【参照記事】*1 メルセデス・ベンツグループ「From scrap tyres to door handles – Mercedes-Benz takes firm grip of circularity
【関連記事】*2 米コカ・コーラ、100%リサイクルペットと透明ボトル採用。サーキュラーエコノミー推進
【関連記事】*3 イベルドローラ、風力タービンブレードをリサイクル化。サーキュラーエコノミー推進
【参照記事】*4 メルセデス・ベンツ「Mercedes-Benz Vans and Rivian move to partner on electric van production
【関連記事】*5 カナダ政府、VW・メルセデスと提携。クリーン輸送強化し気候変動対策

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フォルトゥナ

日系・外資系証券会社に15年ほど勤務。リサーチ部門で国内外の投資家様向けに株式レポートを執筆。株式の専門家としてテレビ出演歴あり。現在はフリーランスとして独立し、金融経済やESG・サステナビリティ分野などの記事執筆、翻訳、および資産運用コンサルに従事。企業型DC導入およびiDeco加入者向けプレゼンテーション経験もあり。
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