スペインの電力大手イベルドローラ(ティッカーシンボル:IBE)は5月31日、風力タービンのブレード(風車の羽根)など再生可能エネルギーの導入時に使用される部品をリサイクルする新会社を立ち上げた(#1)。業界全体の中長期的な課題である部品のリサイクル化に取り組み、同国のエネルギー・トランジション(#1)とサーキュラーエコノミーを推進する。
スペイン北部ナバーラ州にブレードのリサイクルを手掛ける新会社「エナジーループ(EnergyLOOP)」を立ち上げた。イベルドローラのスタートアップ企業支援プログラム「PERSEO(#2)」を通じ、産業廃棄物の管理や土壌汚染の浄化などを手がけるFCC Servicios Medio Ambiente傘下の FCC Ámbitoと共同で新会社を設立。風力タービン大手のシーメンスガメサ・リニューアブルエナジー(SGRE)も支援する予定だ。SGREはスペインの風力発電所の53%において同社製の風力タービンが使用されており、ブレードのリサイクル化に関する知識・経験を有している。
イベルドローラは新会社の設立に際し「当初の目的は風力タービンブレードの部品(主にガラスやカーボンファイバー、レジン)を回収し、エネルギーや航空宇宙、自動車、繊維、化学、建設業界などで再利用することである」と述べた(*1)。
ブレードはリサイクルが難しいため、使われなくなったものはほとんど埋め立てられている。2030年には欧州で年間約5,700基の風力タービンが廃棄されるとイベルドローラは試算する。
風力タービンを持続可能な方法で処理することが大きな課題となるなか、複数の業界プレーヤーがブレードをリサイクル・リユースする可能性を探り、サーキュラーエコノミーを推進する取り組みを強化している状況だ。
たとえば、デンマークのオーステッド(ORSTED)は21年6月、陸上および洋上風力発電所で廃棄する風力タービンブレードをすべてリユース、リサイクル、または回収する取り組みを開始した。米ゼネラル・エレクトリック(GE)傘下のGEリニューアブルエナジーや、デンマークの風力タービン大手ヴェスタス(VWS)なども同様の取り組みを推進している。
(#1)エネルギー・トランジション…従来の石炭や石油などの化石燃料を中心とするエネルギー構成から、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを中心としたものに大きく転換していくこと。
(#2)PERSEO…電力業界におけるサステナビリティに特化したスタートアップ企業への投資、戦略的提携、パイロットプログラムの推進などを通じ、革新的なテクノロジーやビジネスモデルを構築するスタートアップ企業を支援するイベルドローラのプログラム。
【参照記事】*1 イベルドローラ「Iberdrola and FCC launch EnergyLOOP to lead the way in wind turbine blade recycling」

HEDGE GUIDE編集部 ESG投資チーム

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