米マクドナルド(ティッカーシンボル:MCD)は12月15日、伊電力大手エネル(ENEI)の北米事業本部エネル・ノースアメリカと、189メガワットのバーチャルPPA(仮想電力購入契約)を締結したと発表した(*1)。これにより、マクドナルドは米国のサプライチェーンで使用する電力の100%を再生可能エネルギーで賄える見込みとなる。
同契約の下、エネル傘下のエネル・グリーンパワーがテキサス州グライムズ郡で進める太陽光発電プロジェクト「ブルージェイ」より、再エネおよび再エネ証書(REC)を購入する。北米物流協議会(NALC)に加盟する5社(Armada, Earp Distribution, Martin Brower, Mile Hi Foods and The Anderson-DuBose Company)と共同で購入を進める計画だ。共同購入する189メガワットの再エネ電力は、米マクドナルドの900店舗超で年間に使用する再エネに相当する。
ブルージェイ太陽光発電プロジェクトは、2023年にフル稼働する見通し。マクドナルドとサプライヤーを合わせた年間電力購入量は平均47万メガワット時(MWh)超になると試算される。これは、毎年17万トン超の炭素排出もしくは毎年8,000万マイルのトラック走行時に排出される温室効果ガス(GHG)に相当する。ブルージェイプロジェクトには88.2メガワットの蓄電池電力貯蔵システムも含まれ、地域の電力系統の信頼性確保をサポートするものとなる。
企業のGHG排出量の算定や報告の方法を示すGHGプロトコルにおいて、サプライチェーンの排出はスコープ3に分類される。スコープ3は事業者の活動に関連する取引先の排出となるため(たとえば製品の輸送・流通など)、削減に向けた取り組みや算定が難しいものになる。環境分野で世界的に権威のある英NGOのCDPが公表したレポートによると、企業のGHG排出の75%はスコープ3からによるという(*2)。
エネルは顧客のエネルギー・トランジション(#1)を支援する取り組みを推進する。3月にはスペイン銀行大手サンタンデール(SAN)と提携した(*3)。一般家庭および企業向けに太陽光発電設備やリチウム電池、エネルギー効率化ソリューションの供給と融資を行う。
エネルでは「Open Power for a brighter future」をスローガンに掲げているが、米マクドナルドでは未来に向けた気候変動対策を行っている。米マクドナルドは気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)からの勧告に基づき、初の気候リスクとレジリエンス(強じん性)の概要を発表するなど、持続可能なサプライチェーンの実現に向けて取り組みを行っている(*4)。そのため、今回の電力の100%を再生可能エネルギーで賄う方針は、米マクドナルドの実現したいことが少しずつ進んでいるのではないかと考えられる。
(#1)エネルギー・トランジション…従来の石炭や石油などの化石燃料を中心とするエネルギー構成から、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを中心としたものに大きく転換していくこと。
【参照記事】*1 マクドナルド「McDonald’s & U.S. Logistics Partners Tackle Supply Chain Emissions in New Enel Solar Energy Deal」
【参照記事】*2 CDP「CDP Technical Note: Relevance of Scope 3 Categories by
Sector」
【関連記事】*3 伊電力エネルと西サンタンデール銀行 顧客のエネルギー・トランジション支援
【参照記事】*4 「Climate Risk&Resiliency Summary 2021」
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