イタリア電力大手のエネル(ティッカーシンボル:ENEI)とスペイン銀行大手のサンタンデール(SAN)は3月9日、顧客のエネルギー・トランジション(#1)をサポートすべく、覚書(MOU)を締結したことを発表した(*1)。
今回のMOUを通じ、両社は一般家庭および企業向けに太陽光発電設備やリチウム電池、エネルギー効率化ソリューションの供給と融資を行う。エネルの先端エネルギーサービス事業部門であるエネル・エックス・グローバル・リテール(Enel X Global Retail)が、顧客ごとにカスタマイズされたターンキーソリューションを提供するとともに、サンタンデールはそのソリューションに合わせた融資を行う方針だ。
エネルのアルベルト・デ・パオリ最高財務責任者(CFO)は、サンタンデールのような一流の金融機関との提携を通じ、ネットゼロ社会の実現に向けてさらに一歩前進したと話す。サンタンデールのシニア・エグゼクティブ・バイスプレジデントを務めるジョゼ・エム・リナレス氏は、エネルのような長年にわたるパートナーと提携し、世界中の顧客がよりサステナブルなエネルギーモデルへ移行するサポートを強化していくことを喜ばしく思うと言及した。また、サンタンデール・コーポレート&インベストメントバンキング部門は、再生可能エネルギーファイナンスのパイオニアとして、この変化(よりサステナブルなエネルギーモデルへ移行)を加速させることにコミットしていると付け加えた(*1)。
エネルは約54ギガワットの再生可能エネルギー生産能力を誇り、2030年までにその生産能力を3倍ほどに引きあげる目標を掲げる世界有数のグリーンエネルギー企業だ。また、40年までに火力発電所の閉鎖やガスの小売事業から撤退することで、直接・間接排出ともにネットゼロの達成にコミットしている。一方、サンタンデールは顧客の低炭素社会への移行をサポートすべく、30年までに2,200億ユーロ規模にのぼるグリーンファイスナンス(#2)への取り組みを推進する。また、パリ協定をサポートすべく、50年までにグループ全体でネットゼロエミッション(実質排出ゼロ)の達成を目指す。
エネルやサンタンデールが拠点とする欧州が、環境や気候変動分野で主導権の確保を目指すなか、各国企業の連携による、ネットゼロ社会の実現に向けた取り組みに期待したい。
(#1)エネルギー・トランジション…従来の石炭や石油などの化石燃料を中心とするエネルギー構成から、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを中心としたものに大きく転換していくこと。
(#2)グリーンファイナンス…地球温暖化対策や再生可能エネルギーなど、環境分野への取り組みに特化した資金を調達するための債券(グリーンボンド)や借入(グリーンローン)を指す。
【参照記事】*1 エネル「Enel and Santander sign their first global deal to support clients’ clean energy transition」
HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
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