欧州委員会は2月26日、仮想通貨について議論した会議の概要を発表した。会議には産業界の代表者や専門家らが参加し、FinTechに関する行動計画やG20におけるEUの立ち位置に活かすことを目的として行われた。
現在、仮想通貨市場はグローバル規模で広がっており、世界中の投資家や消費者、仲介業者が取引に関わっている。EU市場はその一部分を占めるに過ぎないため、G20に代表されるような国際レベルでの話し合いと協力が望まれるところだ。その前段階として、EUの仮想通貨への向き合い方を明確にすることに同会議の意義があった。
同会議では、仮想通貨が金融市場に与える影響、仮想通貨の利用における危険性とチャンス、近年話題となっている仮想通貨を利用した資金調達手段のイニシャルコインオファリング(ICO)の発展、の3点について主に話し合われた。会議の結論は以下の通りだ。
仮想通貨は従来の意味での通貨ではなく、その価値は保証されておらず、少なからず投機の対象となっている。このため消費者や投資家は、投資で損をする危険性も含め、相当なリスクに晒されることとなる。一方で、ブロックチェーン技術は金融市場の中で大きな可能性を秘めている。ヨーロッパは競争力を維持するためにも、この最新技術を歓迎しなければならない。
次に、ボラティリティが高い仮想通貨に対しては、そのリスクを消費者、投資家に警告することが肝要であり、全ての国・地域に対し明確かつ頻繁に行われなければならない。
また、ICOは革新的な企業が多額の資金を集めるための手段となっている。これはチャンスでもあるが、投資家を相当なリスクに晒すという問題もある。例えば、発行人の身元や事業計画の透明性が欠如していることで、詐欺まがいのプロジェクトに巻き込まれる事案も多く発生している。
欧州委員会は、どのような状況で仮想通貨とその関連サービスに現行の規制が適用されるのか、さらに見極める必要があるとした。これは、個別の仮想通貨、トークンを取り巻く事実や状況に大きく左右される。そのため、欧州委員会は、これら仮想通貨に対する現行の規制のリスク、チャンス、適合性を査定したうえで、EUレベルの規制措置が必要か判断を行う。
仮想通貨はマネーロンダリングや不法行為への資金供与に関連したリスクを有する。このため、欧州委員会は、仮想通貨取引所やウォレットサービスの提供者がマネーロンダリング対策指令の対象となるべきだと提案、2017年12月に議員の間で合意に達したこの規制を取り込むよう加盟国に呼びかけていた。
総括すると欧州委員会は、EUレベル、G20を含む国際レベルで、他の関係者らと市場の監視を続ける。欧州委員会は危険性とチャンスの見極めに基づいた行動を取る用意ができており、同会議で話し合われた事柄を今後の国際会議でどう活かすか決めるとの姿勢を示した。
同会議の後、3月に開催されたG20では、仮想通貨について監視は継続するが、規制は当面見送るとの方針が確認された。他の関係者らと市場の監視を続ける、という欧州委員会のスタンスが反映された面もある一方、仮想通貨への規制については見解の相違が埋まらなかったようだ。
【参照サイト】Remarks by Vice-President Dombrovskis at the Roundtable on Cryptocurrencies
木村つぐみ
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