欧州中央銀行、デジタル通貨のリテール統合課題と法的定義にフォーカス

ユーロ圏19か国の統一的な金融政策を担うECB(欧州中央銀行)は、今年初めにCBDC(中央銀行のデジタル通貨)の調査を目的とする作業部会を立ち上げた。ECBの専務理事は、Coindeskが主催するブロックチェーン・カンファレンス「Consensus(コンセンサス)」にて、作業部会が現在焦点を当てているCBDCの法的定義や運用面の課題について発言した。

ECBのイブ・メルシュ(Yves Mersch)専務理事は、タスクフォースが現在、リテールベースのCBDCに関わる課題に焦点を当てていると明かした。ホールセールのCBDCは関与する金融機関が同一であり、現状既にデジタル化されているという点で違いはないとしている。

議論の焦点の一つは、リテールCBDCが法定通貨(Legal Tender)であるかどうかだ。法定通貨であれば、オフラインを含めたあらゆる状況で使用できる必要がある。しかし、デジタルユーロが法定通貨でない場合、その法的定義を明確にする必要性が生じる。

別の問題は、ECBがユーロ紙幣と同様にデジタルユーロを独占的に発行するかどうかだ。メルシュ氏の見解では、ECBの排他的権限が適用されることは妥当だが、法的確実性が必要となる。

ECBが公的業務を民間事業者に委託できるかどうかという問題もある。リテールベースのCBDCは、ECBは3億~5億の人口と組織のアカウントを規制に準拠した形で管理する。メルシュ氏の意見では、この規模の銀行システムの仲介は負荷が大きい。

金利の問題も指摘された。金融危機に中央銀行がマイナス金利を導入する時、個人や企業に貯蓄を抑制するよう作用する。しかし、CBDCは「貯蓄」レイヤーに紐づいた「支払い」間口を持つことになるため、複数為替相場制の状況を生み出しかねない。

ECB専務理事によると、タスクフォースによるCBDCに関する継続中の調査は、技術的な問題を越えて政策と法的課題を含む細部にまで及んでいる。メルシュ氏は「時が来た時に、準備が整っているようにしたい」と結論付けた。

【参照記事】An ECB digital currency – a flight of fancy?

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高橋奈夕

高橋奈夕

国際基督教大学4年。NYに支社を置くブロックチェーン専門のベンチャーキャピタルで半年以上インターンとして勤める。バイリンガルを生かして海外の記事を翻訳し、よりよい情報を国内に広めることにコミットしている。