欧州中央銀行(ECB)は9月19日、金融政策の一環として保有する社債で脱炭素化を推進する新たな措置の詳細を公表した(*1)。企業の気候変動への取り組みを数値化した「気候スコア」を導入し、脱炭素化対策に優れた企業の社債購入にティルト(傾斜)する。
同措置を通じ、欧州連合(EU)域内の気候変動にひもづくリスクへのエクスポージャー(#1)削減をはかり、EUの気候中立目標に沿ったグリーン・トランジション(#2)を後押しする。
具体的には①過去の排出量、②将来の排出量削減に関する目標、③温室効果ガス(GHG)排出の情報開示という3つのサブスコアをもとに、企業の脱炭素化への取り組みを数値化する。
社債の保有に気候スコアで傾斜をかけることにより、脱炭素に資する企業が発行する社債をより多く購入できるようにする。同措置は2022年10月以降に発行される社債の買い入れに適用される。ECBは23年第1四半期より、保有する社債の気候関連情報の公表も始める方針だ。
ECBは7月上旬、気候変動が金融機関に与えるリスクを測るストレステスト(健全性審査)の結果をはじめて公表した(*2)。その結果、損失額は700億ユーロ(約9.5兆円)に達する見込みだという。
欧州は脱炭素化の分野で世界をリードしようと目論んでおり、気候変動への取り組みに積極的な金融機関も多い。例えば、スペイン大手ビルバオ・ビスカヤ・アルヘンタリア銀行(ティッカーシンボル:BBVA)は7月、不動産・建設業界の脱炭素化に資するテクノロジーへの投資に向け、米ベンチャーキャピタルのフィフスウォールと提携した(*3)。気候テックに関する知見を得て、独自の助言サービスの提供を図る。
ECBが脱炭素化対策に優れた企業の社債購入に傾斜する方針を示したことで、今後は欧州の金融機関にも同様の取り組みが広がるか注目される。
(#1)エクスポージャー…投資家が保有する資産のうち、特定のリスクにさらされている資産の割合のこと。
(#2)グリーン・トランジション…環境に配慮したサステナブルな社会への移行。
【参照記事】*1 欧州中央銀行「ECB provides details on how it aims to decarbonise its corporate bond holdings」
【参照記事】*2 欧州中央銀行「Banks must sharpen their focus on climate risk, ECB supervisory stress test shows」
【関連記事】*3 スペイン銀BBVAと米フィフスウォール 不動産業界の脱炭素化技術向け投資で協業

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