日本銀行の決済機構局が、「自律的な金融サービスの登場とガバナンスの模索」と題した日銀レビューレポートを4月28日に公開した。北條真史 氏および鳩貝淳一郎 氏による連名となっている。
本レポートは、暗号資産における分散型金融(DeFi)の実態を捉えるためのものだ。近年、日本でも利用が急増しているが、利用者のニーズに応える新たな金融サービスを生み出す可能性などとともに、課題やリスクも指摘されている。
日銀は、「イノベーションとリスクの両面を意識しつつ、暗号資産市場や分散型金融の動向を注視していくことが重要である。」との見方を示した。
レポートでは、DeFiの市場規模としてTVL(Total Value Locked)を用いた上で、代表的なDeFiサービスとしてUniswap(DEX)とCompound(レンディング)を例にあげている。両者の説明を踏まえ、2020年6月より話題のイールドファーミングやガバナンストークンについても解説した。
DeFiの潜在的なメリットと課題と題したパートでは、金融システムに競争をもたらす可能性があるとする一方で、利用者保護の問題やスマートコントラクトが不具合を内包する可能性があることも指摘している。
まずはDeFiのメリットとして、主に次の3つを説明した。
- 競争をもたらす可能性
- 新たなサービス創造の可能性
- アクセシビリティが向上する可能性
DeFiでは、金融インフラ(カストディアン、エスクローエージェント、中央清算機関)の役割が自律的なプログラムによって担われることから、第三者による監査の必要性が低減される可能性や、既存の金融インフラに比べて運営が効率的になる可能性がある
DeFiでは容易に新規サービスの立ち上げができるため、実験的な試みを繰り返し行うことができる。また、単一のプラットフォーム(イーサリアム)の上に構築されているため、複数のサービスを組み合わせて新規サービスを立ち上げることもしやすい
DeFiでは、誰でもどこからでもインターネットを通じて利用でき、金融サービスへのアクセシビリティが向上する
続いて、DeFiのリスクについては主に次の2つを指摘した。
- 利用者保護
- スマートコントラクトの不具合と影響拡大
DeFiには、中央集権型取引所のような上場審査がなく、流動性が低いものも含め様々なトークンが取引され、値動きについても既存の金融商品とは異なっている。また、レバレッジに関する規制も存在しない
スマートコントラクトに内包された不具合や脆弱性が顕現化して損失が生じた場合でも、自動的に動作し続けるため外部からサービス停止や取引の巻き戻しなどの対応を行うことは難しい。スマートコントラクトの検証が必ずしも十分でないまま、サービスの提供を急ぐ事例も散見され、懸念が示されている。また、悪影響はDeFiサービス間の依存関係によって、他サービスにも拡大する可能性がある
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【参照記事】(日銀レビュー)暗号資産における分散型金融―自律的な金融サービスの登場とガバナンスの模索―
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