今回は、Web3.0とDAOをテーマに事業を行うFracton Ventures株式会社の大内裕未 氏から寄稿いただいたコラムをご紹介します。
目次
Public Nounsは、NounsというNFTプロジェクトをフォークした、公共財(Public Goods)への資金提供を目的としたプロジェクトです。本記事では、前提としてNouns DAOの仕組みについて解説しつつ、Public Nounsの意義や魅力を記述していきます。
余談ですが、10月10日にはFracton VenturesもPublic Nounsを購入しました。
Yeeesssss🔥🔥🔥 We DAO it🌏
We won the No.24 auction of @PublicNouns during @schellingpoint_ 🇨🇴
Happy to start contributing Public Nouns community🌱🌱🌱 https://t.co/LnlHV21xIl pic.twitter.com/ucFBQWlwbZ— Fracton Ventures #WECANDAOIT (@wecandaoit) October 10, 2022
Nounsとは
NounsはEthereum上のフルオンチェーンNFTで、24 時間に1体ずつオークションにかけられ続けます。Nounsの売上は全て、Noun所有者で構成されるNouns DAOのトレジャリーに送られます。
Nounsの創業に携わった10人の創業者(@cryptoseneca, @gremplin, @punk4156, @eboyarts, @punk4464, @_solimander_, @dhof, @devcarrot, @TimpersHD, @lastpunk9999)は「Nounders」と呼ばれます。Noundersには、最初の5年間、毎回10番目のNoun (Noun ID #0, #10, #20, #30…) が自動的にNoundersのマルチシグウォレットにトランスファーされます。
これによってオークションが止まることはなく、#9の次は#11というように、24時間ごとのオークションは続いていきます。
Nounsは、イーサリアムのブロックハッシュに基づいてランダムに生成され、すべてのNounは等しく希少です。現時点では、Nounsは背景(2)、体(30)、付属品(140)、頭(242)、メガネ (23)で構成されています。PlaygroundにてオフチェーンのNoun生成を試すことができます。
そして、NounsはCC0(Creative Commons Zero)を採用しています。CC0 は、知的財産をパブリックドメインにする著作権規格です。例えば、CC0 のアートワークをブランドのロゴとして無断で使用することができ、売上の一部を元の作成者に分配する必要もありません。これにより、コミュニティが勝手にマーケティングに貢献してくれる状態を作ることができます。
CC0 NFTに関しては、過去の記事でも扱っていますので、そちらを参照ください。
Nouns DAOの仕組み
先述の通り、Nounsの売上は100%Nouns DAOのトレジャリーに送られます。その資金は、Nounsのブランド構築のために使われるよう、Noun保有者による提案と投票によって決められます。プロポーザルの提出は2 Nouns以上を持つ人のみ可能で、投票は1 Nounsにつき1票で参加できます。Noundersはプロポーザルの実行をサポートします。
今までには、Nounsのドキュメンタリー映画の制作や、Nounsのコーヒーブランドの立ち上げ、ウクライナ支援などに資金を提供する案が可決されてきました。
Public Nouns
Public Nouns(pNouns)は冒頭で説明した通り、NounsというNFTプロジェクトをフォークして始まった、公共財(Public Goods)のサポートを目的としたプロジェクトです。
Public Goodsとは、非競合性(ある個人や集団による消費が、他の人々の残りの供給に影響を与えない)と、非排除性(特定の個人や集団の利用を排除できない)を有する製品やサービスのことです。Web3やDAOにおける重要なキーワードですが、その特性故に、Public Goodsにアプローチするインセンティブ設計が不十分です。Public Nouns DAOは、Nounsのようにコミュニティの力を活用し、公共財プロジェクトをキュレーションして有益なPublic Goodsへ資金提供します。
pNoundersと呼ばれるpNounsの創業チームは、Public Goodsをサポートする以下のコミュニティによって構成されています。
- MetaCartel – Investment DAO
- Panvala – Grants DAO
- Radicle – OSSのSocial DAO
- Optimism – EthereumのL2 Protocol DAO
- Clr.fund – 寄付プラットフォーム Protocol DAO
- Gitcoin – 寄付プラットフォーム Protocol DAO
- Moloch – Grants DAO
pNounsのユニークな点は、pNounsのキャラクターの頭は上記のDAOをモチーフとしたデザインになっているところです。そして、Public Nouns DAOでは、上記以外の新しいPublic Goods コミュニティを提案し、頭のデザインを加えることができます。
Fracton Venturesが購入したpNounは、Radicleモチーフのものです。PlaygroundにてオフチェーンでのpNounの生成を試すことができるので、以下の設定でFracton Venturesが保有しているpNounを生成してみてください。
12時間ごとに1つのpNounがオークションにかけられます。Nounsと同様に、売上は全額Public Nouns DAOのトレジャリーに自動で送金され、pNounders, Nouns DAO, Public Nouns DAOが報酬として毎回10番目のpNounを受け取ります。10月にコロンビアのボゴタで行われたschelling pointで、pNounの#10がGiveawayされました。
pNounsは、Public Goodsをサポートする個人やDAOが購入しており、強固なコミュニティが形成されつつあります。以下はそれぞれFracton Venturesのリサーチャー守が作成したpNounsホルダーリストと元GitcoinのQZ氏が作成したホルダーのTwitterアカウントリストです。
Public Nouns Holders List(⌐◨-◨, ⌐◨-◨)
A Twitter List by not_qz
既にPublic Nounsを中心にエコシステムが構築されていると言えるでしょう。初期からpNounsをサポートするホルダーの方々には注目です。
まとめ
Nounsは以下の点で非常に優れたNFTプロジェクトだと思います。
- フルオンチェーンであるため、アートワークの永続性が保証されている
- アートワークの生成、オークション、トレジャリーへの送金が全て自動で行われる
- 売上が中抜きされることなく100% DAOのトレジャリーに送金され、ファウンダーは代わりにNFTを報酬として受け取る仕組みになっている
- NFTの保有者はDAOのメンバーになり、売上の使用用途を決定できる
- CC0で、コミュニティのネットワーク効果によるブランド構築を実現している
さらに、pNounsは、Nounsのシンプルで優れた仕組みを利用して、Public Goodsへの新しい資金提供の手段を提示しており、非常にクールなプロジェクトです。
公共財におけるインセンティブ設計は特性上難しいですが、Web3、DAOの力を活用して新しい仕組みを作れるところに非常に可能性を感じています。Public Nounsコミュニティの拡大に引き続き注目していきたいと思います。
ディスクレーマー:なお、NFTと呼ばれる属性の内、発行種類や発行形式によって法令上の扱いが異なる場合がございます。詳しくはブロックチェーン・暗号資産分野にお詳しい弁護士などにご確認ください。
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