NFT×CC0の可能性

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今回は、Web3.0とDAOをテーマに事業を行うFracton Ventures株式会社から寄稿いただいたコラムをご紹介します。

目次

  1. CC0とは
    1-1. CC0の概要
    1-2. 従来の課題とCC0による解決策
    1-3. CC0の事例
  2. CC0 NFTプロジェクト
  3. NFTとの関係性・親和性
  4. まとめ

CC0を採用したNFTプロジェクトが見受けられるようになりました。そもそもCC0とは何なのでしょうか?CC0がNFTと交わることでどのような化学反応をもたらし得るのでしょうか?今回はCC0とNFTの関わり合いについて述べていきたいと思います。

CC0とは

CC0はNFTに関する専門用語でもなければ、暗号資産(仮想通貨)やブロックチェーンに関係する言葉でもないので、初めにCC0とは何かについて述べたいと思います。

CC0の概要

CC0とは、非営利団体Creative Commons(CC)が提供するCCライセンスの1つであり、クリエイターが著作権を放棄して作品をパブリックドメインに置くことを可能にするパブリック専用ツールです。CCのそもそもの目的としては、世界の差し迫った問題を対処する際に知識と創造性を共有する際の法的な障害を克服する手助けとなることです。CCの取り組みの1つとして、先述の通りCCライセンスの提供をしており、そのライセンスの1つとしてCC0があります。

CC0を使用することで、作品の再利用者は条件なしで、メディアやフォーマット上の素材を配布したり、リミックスしたり、応用したり、構築したりすることができます。他のCCライセンスは著作者が著作権を保持したまま様々な許諾を選択できるのに対して、CC0はクリエーターに自動的に与えられる著作権やデータベースの保護や独占権を放棄する、つまり「No Rights Reserved(いかなる権利も保有しない)」という全く別の選択肢を与ます。

従来の課題とCC0による解決策

従来の課題として、著作権の保護期間が切れる前に作品をパブリックドメインにすることは困難でした。その理由として、法的な問題があります。その1つとして、どのような権利が自動的に与えられて、いつどのようにしてその権利が失効されるのか、自発的に権利を放棄することができるのかは法域によって法律が異なるということが挙げられます。また、著作者が法律で自動的に付与された権利を自発的に放棄しようとしたとしても、多くの法制度で禁止されています。

この解決策として、CC0があります。CC0はクリエイターが自分の作品に関する全ての著作権とその他の権利を、法律で認められている範囲内で放棄する方法を提供します。CC0はオープンソフトウェアライセンスと同様に特定の法的管轄区域の法律に適応しない普遍的な手段です。もちろん、CC0であったとしても全ての法域における全ての著作権を完全に放棄することができませんが、世界中の複雑で多様な著作権に関するシステムを考えると、CC0はパブリックドメインに貢献するための選択肢を提供し得るとのことです。

CC0の事例

出典:Europeana

CC0を活用した事例の1つとしてEuropeanaがあります。Europeanaは、ヨーロッパにあるデジタルライブラリであり、CC0を活用して文化作品についてのメタデータをパブリックドメインに公開しています。Europeanaは、このメタデータの使用に関する全ての制限を撤廃することによって、開発者やデザイナーなどがEuropeanaにある様々な作品のコレクションをヴィジュアル的に表現できるアプリケーションやモバイルゲーム、そしてウェブサイトなどを作成する機会を提供します。

もし、Europeanaが独占的に作品のコレクションを囲い込んでいた場合、こういったコラボレーションの実現は困難であったと思います。Europeanaは、データから全ての著作権制限を削除することで、イノベーションと経済活動の促進を支援することを目指しているとのことです。

CC0 NFTプロジェクト

CC0を用いたNFTプロジェクトの1つにCrypToadzがあります。CrypToadzは、アーティストGremplinと友人たちのチームによって作られた6,969個のNFTヒキガエルの収集品シリーズで、クリエイターたちはこのCryptoToadzをパブリックドメインとして公表しました。

CrypToadzのホームページへ行くと、ページの一番下に「To the extent possible under law,Gremplinhas waived all copyright and related or neighboring rights to CrypToadz by Gremplin. This work is published from:United States.(法律上可能な範囲で、Gremplinは、CrypToadz by Gremplinに対するすべての著作権および関連・著作隣接権を放棄しています。この作品は、米国から出版されています。)」という記載があります。CrypToadzは誰でも利用可能なので、実際にスマートコントラクトの実装が可能なSolanaというパブリックブロックチェーン上でSolToadzが登場しています。

CrypToadzというCC0を採用しているプロジェクトがある一方で、決済大手Visa社が購入したことでも話題になったNFTプロジェクトである「CryptoPunks」はNFTライセンスを利用しています。NFTライセンスでは、所有者がNFTを「個人的、非商業的な用途」に使用することができますが、Larva Labsのクリエイターは、「Punks」に関するIPと著作権を保持しています。多くのNFTプロジェクトでは、CryptoPunksのように著作権を保持しているのが通例です。

NFTとの関係性・親和性

NFTとCC0を組み合わせることによる効果は、NFTを所有しながら、それをオープンに共有することで他の人が好きなように使えるようにすることを可能にすることです。NFTが様々なアーティストに受け入れられた理由は、自分の作品の贋作が作成されても見分けがつき、オリジナルの作品に価値がつくためであり、コピーが容易なデジタルアートにおいてNFTは効果的に働きます。

それにも関わらず、CC0によって自分の作品を誰でもフリーで利用可能な状態にして、作品に関するあらゆる権利を放棄するというのは矛盾しているように聞こえるかもしれません。この矛盾を理解するためには、デジタルデータ(元の画像)とNFTを分けて考えると分かりやすいと思います。

NFTは唯一無二のものであり、コピーできないと言われていますが、現在流通しているNFTのほとんどは元の画像データはアーティストや企業が持っています。つまり、作品をトークン化したもの(NFT)は唯一無二な存在として市場に流通していますが、作品自体はクリエイターが持っています。このことは、NFTはコンテンツの「所有権」を提供してくれますが、「著作権」に関してはクリエイターにあるのが大半ということを意味しています。

CC0 NFTはクリエイターが持っている作品自体の「著作権」を放棄するということです。CC0 NFTは誰でも二次利用することができるので、予想外のコラボレーションが行われることが期待できます。先述のEuropeanaにおいてライブラリのメタデータを基に開発者やデザイナーがヴィジュアライズ化したように、CC0 NFTにおいてもこのようなコラボレーションが可能になります。CC0 NFTが広く二次利用された場合、元のCC0 NFTの周りに人が集まり、そこからインスピレーションを得た人たちが益々集まってくるという構図になります。このような現象は、NFTを中心としたコミュニティが出来上がり、クリエイター同士の予想外のコラボレーションが実現してイノベーションを促進し、そこから生み出されたものはクリエイターたちの想像を超えるものになり、結果としてNFTそのものの価値も高めることになります。

CC0 NFTはクリエイター、開発者、アーティストなどによるコラボレーションが可能になりますが、より多くの人々を巻き込む意味合いでもポテンシャルがあると考えます。近年のコンテンツ周りの状況は、他人が作った作品を堪能するよりも作品を介して自分自身で体験をすることの方に需要があるように考えます。前者は、映画やテレビなどを視聴する行為を指し、そのコンテンツを楽しむ主体は「受動的」な傾向があります。一方で、後者は、SNSによる発信やフィジカルなイベントへの参加することを指し、「積極的」な姿勢で体験をします。端的に言うと、CDを聴いて音楽を楽しむよりも、フェスに参加しながら歌ったり踊ったりすることの方が楽しかったり、ドラマを見るよりも自分で今後の展開を考察している方が楽しかったりする感覚です。つまり、私たちは受動的に他人の作品を堪能するよりも、積極的な姿勢で自分なりの物語を作り上げる方が楽しいということです。

ここで、現在のNFTの現状を見ると、一流のアーティストや膨大なIPを抱える企業が自分達が保有しているデジタルデータをNFTとして出品するという傾向があるように思えます。確かに、NFTはデジタル作品を創作しているアーティストにとっては嬉しい技術革新ですが、コンテンツを楽しむユーザーにとっては、自分の物語として昇華していません。つまり、現状のNFTは完結された作品として提供されているのがほとんどで、クリエイターからユーザーへというトップダウン的です。ユーザーが自分の物語として体験をするには、ボトムアップ的にユーザーと共に作品を作り上げていくという要素が重要になるかと思います。NFTをCC0にすることでオープンで誰でも利用可能になることはユーザーが自分の物語として創作する余地ができるのではないでしょうか。

まとめ

CC0とは、非営利団体Creative Commonsが提供するライセンスの1つで、作品の著作権を放棄して作品をパブリックドメインに置くことを可能にします。

NFTはコンテンツの所有権を提供することができますが、コンテンツそのものの著作権はアーティストが持っています。NFTをCC0にするということは、誰でもその作品を基に創作をすることを意味します。多くの人々がCC0 NFTの二次創作をすることで、そのNFTの周りにコミュニティが産まれ、予想外のコラボレーションが期待でき、そして、そのコミュニティの盛り上がりはやがてNFT自体の価値をあげ得るというものです。

これが唯一無二ものを表すNFTと誰でも利用可能にするCC0という一見相反するように見える両者が交わった時の化学反応であると考えます。

ディスクレーマー:なお、NFTと呼ばれる属性の内、発行種類や発行形式によって法令上の扱いが異なる場合がございます。詳しくはブロックチェーン・暗号資産分野にお詳しい弁護士などにご確認ください。

【参照記事】NFTs and CC0
【参照記事】!croak: An intro to CrypToadz 🐸
【参照記事】CC0

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守 慎哉

Fracton Ventures株式会社リサーチャー。DAO分野に強みを持ち、コモンズ・公共財におけるガバナンスのあり方などのリサーチを担当。その他CoinPost×あたらしい経済で立ち上げた「CONNECTV」の共同編集長をも務める。