シスメックスのESG・サステナビリティの取り組みは?株価・配当推移も

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検体検査分野でトップシェアを維持するシスメックス株式会社は、検査機器や試薬などの提供を通じ、病気の予防・早期発見・早期治療に貢献しています。また、最先端技術を用いた付加価値の高い製品・サービスにより、検査の効率化や患者の負担軽減など、持続可能な医療インフラの構築に努めています。

そこでこの記事では、シスメックスのESG・サステナビリティの取り組み内容について詳しく解説していきます。株価動向や配当情報についても解説しているので、ESG投資に興味がある方は、参考にしてみてください。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※本記事は2023年1月11日時点の情報をもとに執筆されています。最新の情報については、ご自身でもよくお調べの上、ご利用ください。

目次

  1. シスメックスの特徴
  2. シスメックスのESG・サステナビリティの取り組み
    2-1.製品・サービスを通じた医療課題解決
    2-2.責任ある製品・サービスの提供
    2-3.魅力ある職場の実現
    2-4.環境への配慮
    2-5.ガバナンスの強化
  3. シスメックスのESG・サステナビリティに関する外部評価
  4. シスメックスの業績・株価動向
  5. シスメックスの配当推移
  6. まとめ

1 シスメックスの特徴

シスメックスは、兵庫県神戸市に本社を置く医療機器メーカーで、世界190カ国以上で事業展開するグローバル企業です。シスメックスでは、血球計数、血液擬固、尿沈渣などの検体検査分野でトップシェアとなっており、病院の検査室や検査センターなどに検査機器や試薬、ソフトウェアを提供しています。

検体検査は、健康状態や病気の有無、進行度合いの把握が可能になるため、病気の予防や治療方針を決定する重要な指標となっており、シスメックスは「検査」における大きな役割を担っています。

シスメックスの主力事業は、検体検査に必要な機器や試薬等を提供する「ダイアグノスティックス事業」です。ダイアグノスティックス事業では、血液や尿、細胞などを分析する機器・試薬の提供はもとより、検査機器のメンテナンスや学術サポートなど、検査業務の効率化や検査機器の安定稼働をサポートしています。

シスメックスの製品・サービスは、日本のみならず世界中で需要があるため、海外売上比率80%以上とグローバルカンパニーとしての地位を確立しています。

2 シスメックスのESG・サステナビリティの取り組み

シスメックスは、検体検査分野を軸に世界の医療課題解決に貢献することを目指しているほか、環境配慮や多様性及び人権の尊重など高まる社会からの要望に向けて取り組みを進めています。

以下、シスメックスのESG・サステナビリティの具体的な取り組み内容をご紹介していきます。

2-1 製品・サービスを通じた医療課題解決

シスメックスは、医療インフラの整備が遅れる新興国などで、検査・診断領域の強みを活かした医療課題解決に取り組んでいます。例えば、世界保健機関(WHO)が定める世界三大感染症の一つである「マラリア」においては、シスメックスの血液検体機器である「他項目自動血球分析装置」が活躍しています。

従来のマラリア検査は、簡易診断キットや顕微鏡検査が用いられており、約15分~30分の時間がかかる一方、シスメックスの他項目自動血球分析装置では、約1分で高精度に自動測定することが可能になるので、早期診断・早期治療に大きく貢献しています。

また、AIやIoTなどの技術革新により、医療情報のデジタル化や治療用アプリケーションなどの「デジタル医療」が進んでおり、治療方針の最適な決定を支援しています。

上記のように医療分野における技術革新によるバイオインフォマティクス(生命科学と情報科学の融合技術)は、一人ひとりに最適な医療を提供する「個別化医療」の実現を可能にします。個別化医療の実現は、最適な治療方法や薬剤の提供により、患者の負担軽減や、医療の無駄低減による検査業務の生産性向上に繋がります。

2-2 責任ある製品・サービスの提供

シスメックスは、責任ある製品・サービスの提供を行う上で、品質と信頼の追求とサプライチェーンマネジメントの強化に努めています。

シスメックスでは、製品の安全性、品質の維持・向上を図るため、開発、製造、販売、サービスの各部門の責任者からなる「品質会議」を毎月開催しているほか、従業員に対しては、品質・安全に関わる専門的な教育を実施しています。製品開発プロセスにおいても、市場に導入するまでに5つの審査を設けることで最終製品の品質確保に努めています。

また、シスメックスの試薬や検査機器は、世界中の医療現場で必要とされているため、製品の安定供給確保が必須となっています。そこでシスメックスでは、製品の安定供給に向け、生産体制を国内で構築しているほか、非常時における工場間の相互供給体制の構築や輸送面での代替ルートの確保や調達先の複数化を実施しています。

2021年度は、材料供給がひっ迫する中で、購入量の確保や在庫の積み増しを実施した上、物流の混乱に対しては、代替航路を用いるなどの対応で製品の安定供給を継続させました。

2-3 魅力ある職場の実現

シスメックスは、医療課題解決に取り組むグローバル企業として外部競争力を強化するために、魅力ある職場を提供し続けることが重要な課題であると考えています。シスメックスの魅力ある職場の実現に向けた取り組みは大きく分けて3つあります。

1つ目は、ダイバーシティ&インクルージョンの推進です。「ダイバーシティ&インクルージョン」とは、多様な人材を活かし、能力が発揮できるようにする取り組みのことです。シスメックスでは、国籍・人種・性別・年齢・職歴・障がい者を問わず、人物本位での採用を方針として掲げています。

2つ目は、人材育成です。シスメックスでは、「選抜型研修」「階層型研修」「自立選択型研修」の3つの軸の研修体系があり、業務遂行における基礎~実践的な知識・スキルや将来的な経営人材、グローバルリーダーの育成まで幅広く実施しています。

3つ目は、職場環境です。シスメックスでは、様々なライフスタイル・ライフステージに合わせ、多様な働き方を推進する制度を実施しています。具体的には、時間と場所を選択できる働き方を提供する「スマートワーク制度」や、育児・看護休暇、配偶者出産時休暇など、様々な制度を利用でき、「子育てサポート企業」として、厚生労働省から次世代認証マークを取得しています。

2-4 環境への配慮

シスメックスは、2025年までの長期環境ビジョン「シスメックス・エコビジョン2025」を策定しており、2025年度までに、事業活動におけるCO2排出量50%削減、事業活動における水消費量15%削減、事業活動におけるリサイクル率93%以上、生物多様性においては、脱植物由来原料製品のラインアップ拡充を目指しています。具体的な取り組みとして、製品ライフサイクルにおける環境配慮と事業活動における環境負荷低減が挙げられます。

製品ライフサイクルにおける環境配慮の活動では、検体検査装置の省電力化及び小型化、試薬使用量の削減など環境に配慮した製品開発に取り組んでいます。例えば、2021年に発売された検体搬送システム商品群では、サイズを15%削減、消費電力は40%削減と環境に配慮した設計となっています。

調達においても、環境負荷が少ない原材料、部品の調達を推進しているほか、調達先にもCSR(企業の社会的責任)調査を実施するなど、グリーン調達の推進及びサプライチェーンマネジメント強化に取り組んでいます。

事業所における環境負荷低減の活動では、生産拠点ごとにエネルギー使用量の削減目標を設定し、高効率な空調システムや照明のLED化、人感センサーなど、省エネルギーを実現するための設備を進めています。

2-5 ガバナンスの強化

コーポレート・ガバナンスとは、企業経営を管理・監督する仕組みのことで、経営の効率化や不正防止を目的としています。シスメックスでは、コーポレート・ガバナンスの強化を重要な経営課題の一つと位置づけ、グループ全体の企業価値の最大化を目指しています。

シスメックスのガバナンス体制は、取締役会を監督機関とした上で、経営の透明性を向上させることを目的に、監査等委員会が取締役会を監査しています。また、業務執行の意思決定スピードの向上を図るため、執行委員会が経営計画における重要案件の討議・審議等を行っています。

ガバナンス強化の取り組みとしては、グループ全役員・従業員が遵守すべきガイドラインである「グローバルコンプライアンスコード」の推進を行っています。増収賄や人権侵害などを含むコンプライアンス上の問題に関しては、「内部通達制度」を設置することで、コンプライアンス違反の早期発見・防止に努めています。

また、情報・サイバーセキュリティ対策では、グローバル情報セキュリティ基本規定を定めた上で、グループ全従業員に対して、情報・サイバーセキュリティ教育を毎年実施するなど、グループ全体の情報セキュリティマネジメント体制を構築しています。

2021年度のガバナンス実績は以下の通りです。

実績(2021年度)
内部通達件数 28件
コンプライアンス違反件数 14件
情報セキュリティ教育受講者数 3,601名

3 シスメックスのESG・サステナビリティに関する外部評価

シスメックスのESG・サステナビリティの取り組みは、外部機関から高い評価を受けています。以下では、構成銘柄として選定されているESG指数と受賞実績などを一部紹介していきます。

ESG指数/受賞実績 概要
Dow Jones Sustainability Index 米S&P Dow Jones Indices社のESGの取り組みかつ持続可能な成長が期待できる企業を選定するESG指数
FTSE4Good index 英FTSE Russell社のESG評価に基づいて、優れた企業を選定するESG指数
FTSE Blossom Japan Index 英FTSE Russell社のESGについて優れた対応を行っている日本企業を選定するESG指数
FTSE Blossom Japan Sector Relative Index 英FTSE Russell社の各セクターにおいて相対的にESGの取り組みに優れた日本企業が選定されるESG指数
MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数 米MSCI社のESG格付けが相対的に高い企業を選定するESG指数
MSCI日本株女性活躍指数 米MSCI社の日本株の時価総額上位500銘柄の中から、性別多様性に優れた企業を選定するESG指数
S&P/JPY カーボン・エフィシエント指数 米S&P Dow Jones Indices社の環境情報の開示、炭素効率性の水準より構成銘柄の投資ウエイトを決定するESG指数
環境コミュニケーション大賞「環境報告部門 優良賞」 環境省と一般社団法人 地球・環境フォーラムが企画する優れた環境報告を表彰する制度
新・ダイバーシティ経営企業100選 経済産業省が企画するダイバーシティの推進を経営成果に結びつけている企業を表彰する制度
次世代認定マーク「くるみん」を取得 厚生労働省が企画する「子育てサポート企業」を認定する制度
「健康経営優良法人」に認定 経済産業省が企画する優良な健康経営を実践している企業が顕彰される制度

4 シスメックスの業績・株価動向

シスメックスは、医療機器や試薬を製造・販売するヘルスケア企業なので、株価が景気動向に左右されにくい「ディフェンシブ銘柄」の側面を持ちます。ただし、売上高の海外比率が高いことから、海外の政治・経済状況などの影響を受けやすい特徴があります。

2020年(3月期)は、検査機器などの販売が好調だったものの、試薬販売が悪化したことで、純利益は前期比15%減となっています。ただし、新型コロナウイルスの感染拡大による検査需要の期待から、株価は1年を通して66.4%の大幅上昇を記録しています。

2021年(3月期)は、試薬の売上が減少したことで、純利益は前期比5%減となり、国内および海外事業の売上高も微増で終わりました。しかし、2022年度は、検査需要の回復から利益増の予想が発表されたことで、株価は6月に底値をつけ、1年を通じて25.4%の上昇となっています。

2022年(3月期)は、血液や尿の検査需要が回復し、試薬の販売も好調だったことで、純利益は前期比38%増で過去最高を記録しています。しかし、株式市場は、中国で検査機器の減収幅が拡大したことによる先行き不透明感から、株価は年初から48.5%下落しました。2022年1月11日時点の株価は8,315円となっています。

5 シスメックスの配当推移

シスメックスの配当政策は、継続的な配当と業績に裏付けされた成果の配分を基本方針とした上で、連結での配当性向30%を目途に配当を行うとしています。

シスメックスの過去5年の配当推移は以下の通りです。

年度 配当額(円) 連結配当性向(%)
2018年3月期 66 35.1%
2019年3月期 70 35.4%
2020年3月期 72 43.1%
2021年3月期 72 47.1%
2022年3月期 76 36.0%

2022年3月期は、純利益が過去最高を記録したことで増配を決定し、2023年3月期においてもヘルスケア需要拡大を見込み、2期連続増配を計画しています。

まとめ

シスメックスは、高度な検査技術で診断、治療、予防における大きな役割を担っているほか、サプライチェーンとの連携により、持続的な安定供給を実現しています。また、デジタル医療技術からなる個別化医療により、患者の負担軽減や検査業務の効率化にも貢献しています。

株主還元では、継続的に配当を実施している一方、中国事業不振などの悪材料もあるので、投資を行う際には、慎重に検討することが大切です。

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HEDGE GUIDE 編集部 株式投資チーム

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