ロームのESG・サステナビリティの取り組みは?配当情報も

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半導体メーカーとして知られるローム株式会社は、電子機器や自動車、産業機器など幅広い分野に搭載される電子部品の開発・製造・販売を行っており、強みである電子工学の技術では、社会が抱える様々な課題解決に取り組んでいます。また、ローム独自の技術によって、あらゆる機器の「小型化」を実現し、枯渇する資源問題の解決に取り組んでいるのも特徴です。

この記事では、ロームのESG・サステナビリティの取り組みについて詳しく説明していきます。なお、最新の業績や株価動向、配当情報についても解説しているので、興味のある方は参考にしてみてください。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※本記事は2023年1月3日時点の情報をもとに執筆されています。最新の情報については、ご自身でもよくお調べの上、ご利用ください。

目次

  1. ロームの特徴
  2. ロームのESG・サステナビリティの取り組み
    2-1.環境課題解決への取り組み
    2-2.ダイバーシティ・従業員エンゲージメント強化への取り組み
    2-3.持続可能なサプライチェーンマネジメント
    2-4.コーポレートガバナンスの強化
    2-5.ロームのESG・サステナビリティに関する外部評価
  3. ロームの業績・株価動向
  4. ロームの配当推移
  5. まとめ

1 ロームの特徴

ロームは、京都に本社を置く半導体メーカーで、日本のみならずアジア・ヨーロッパ・北米で、LSI(大規模集積回路)やディスクリート半導体、LEDなど、電子機器や自動車、産業機器などに搭載される電子部品の開発・製造・販売を行っています。

ロームでは、大電流を扱える「パワー半導体」や、電力制御を細やかに行える「アナログ半導体」を中心として、社会課題の解決に取り組んでいます。

パワー半導体の主力製品には「SiCパワーデバイス」などがあります。SiCパワーデバイスは、高電圧・高電流に耐えられるため、電気自動車、5G通信、太陽光発電、サーバーセンターなど広く使用されており、電力変換のロス低減や機器の小型化・効率化、省エネルギー化に大きく貢献しています。

アナログ半導体の主力製品には「アナログIC」があります。アナログICは、細やかな電力制御が可能になるため、自動車の自動運転化に必須となる車載カメラモジュールなどに使われており、事故の未然防止に貢献しています。

また、ロームは、材料調達から組み立て、パッケージに至るところまでグループ内で行う垂直統合型生産体制を構築しており、高品質製品の大量生産を可能としています。

2 ロームのESG・サステナビリティの取り組み

ロームは、「パワーとアナログにフォーカスし、お客様の省エネ・小型化に寄与することで、社会課題を解決する」という経営ビジョンのもと、社会課題の解決に繋がる革新的な商品開発をはじめ、人材育成やダイバーシティ推進により、活き活きと働ける職場環境の整備に努めています。

それでは以下で、ロームのESG・サステナビリティの取り組みについて詳しく見ていきましょう。

2-1 環境課題解決への取り組み

ロームは、持続可能な社会の実現に向けたグループ目標「2050年環境ビジョン」を策定しています。具体的には、「気候変動」「資源循環」「自然共生」の3つのテーマを柱とし、CO2排出実質ゼロおよびゼロエミッション、生物多様性の保全を推進しています。

気候変動の取り組みでは、事業活動により発生する2050年度のCO2排出実質ゼロに向けて、事業活動全体での省エネルギー化や再生可能エネルギーの導入、環境配慮型の事業体制構築を進めており、事業活動全般における環境負荷低減に努めています。

気候変動の取り組みにおける2021年度の実績は、温室効果ガス排出量が2018年度実績比で6.2%の削減(目標達成)、温室効果ガス排出量単位が2018年度実績比で17.2%削減(目標達成)、環境配慮型商品の開発割合100%維持(目標達成)に成功しています。

資源循環の取り組みでは、開発・調達・生産・販売までの一連の事業活動を通し、限りある資源の無駄を削減するほか、資源循環の最大化、廃棄物排出量の削減、水再生利用率の向上を図っています。

また、SiCパワーデバイスを中心とした高効率デバイスにより、システムの小型化を通じ、材料、廃棄物の削減に貢献しています。

資源循環の取り組みにおける2021年度の実績は、再生資源化率が国内外連結で97.9%(目標達成)、前工程工場の廃棄物排出量単位が2020年度実績比で7.0%増加(目標未達成)、後工程工場の廃棄物排出量単位が2020年度実績維持(目標達成)に成功しています。

自然共生の取り組みでは、地球の生物多様性が生み出す恵みから様々な恩恵を受けていることを認識した上で、自然環境との調和、製品化学物質管理の徹底に努めています。

自然共生の取り組みにおける2021年度の実績は、生物多様性保全体制の整備、中期目標の策定、ローム本社の緑化整備による緑地価値の向上、各拠点における生物多様性保全活動の実施、自治体との生態系保全に関する連携など、「生物多様性保全への具体的な取り組みを検討する」という2021年度目標の達成に成功しています。

2-2 ダイバーシティ・従業員エンゲージメント強化への取り組み

ロームは、「人が輝く職場を創る」という人事ビジョンのもと、人財を持続的な企業価値向上の源泉と捉え、ダイバーシティ(多様性)推進や働きがい向上により、従業員エンゲージメント改善・強化を図っています。

ダイバーシティ推進の取り組みでは、女性社員・外国人社員の積極採用を行っており、2022年3月末時点で、グループ全体の女性社員割合は28.5%、外国人社員の割合は74.3%と高い採用水準となっています。

また、管理職など、キャリアアップ支援に向けた研修プログラムも用意されており、女性社員向けでは、女性従業員が自分らしさを発揮しながら活躍できるよう支援する「キャリアデザイン研修」や管理職を目指す女性従業員を支援する「女性リーダー育成研修」などがあります。

従業員エンゲージメント強化の取り組みとして、様々なライフスタイル・ライフステージに身を置く社員一人ひとりが働きやすく、最大限の力を発揮できる仕組み構築を行っています。

多様な働き方を推進する制度では、在宅しながら勤務を可能とする「在宅勤務制度」や勤務の終業時間と翌日の開始時間の間を一定時間空け、休息時間を確保する「インターバル制度」など、働き方改革につながる様々な制度があります。

また、限定基幹職の社員を対象に基幹職へのコース転換を推進する「コース転換制度」も設けており、キャリアアップへの挑戦を支援しています。

育児・介護につながる支援制度では、「育児休業(父親も含む)」「介護休業」をはじめ、過去の有休未消化部分を介護や育児休暇・休業に充当できる「積立休暇」など、ローム独自の制度を利用することができます。

2-3 持続可能なサプライチェーンマネジメント

ロームの商品を安定的に供給するためには、強固な調達体制と取引先とのパートナーシップの構築が必要になります。そこでロームでは、持続可能なサプライチェーンマネジメントを重要課題の一つとし、自然災害や感染症などの未曾有の事態にも対応でき、かつ高品質な商品を安定供給するサプライチェーン構築に努めています。

持続可能なサプライチェーンマネジメントに向けた取り組みでは、BCM(事業継続マネジメント)体制の強化、グリーン調達の推進、CSR調達活動の推進を行っています。

BCM体制の強化では、評価・監視プログラムを通じ、取引先の関係強化を図っています。評価・監視プログラムは、製品品質、納期、供給の持続性などの活動総合評価やRBA行動規範(労働者の敬意・尊厳、環境負荷に対する責任の基準)に基づく評価などを行い、必要に応じて改善を要請しています。

グリーン調達の推進では、気候変動などの環境課題に対して、サプライチェーン全体で取り組んでおり、環境法令や条例、国際ガイドラインの遵守および環境に配慮した材料の調達を行っています。

CSR調達活動の推進では、労働・安全衛生・環境・倫理・危機管理体制の構築・管理システムからなるロームグループのCSR調達ガイドラインの推進を取引先に求めることで、持続可能なサプライチェーン構築を目指しています。

2-4 コーポレートガバナンスの強化

コーポレートガバナンスとは、株主利益の最大化を目的に、法令や経営方針、行動規範にそった事業活動を行っているか監視する仕組みのことです。ロームでは、コーポレートガバナンスを事業活動の基盤と位置づけ、持続的な成長と企業価値・株主価値の向上を目指しています。

ロームのコーポレートガバナンス体制は、取締役会が監督機関を担い、取締役の職務を監督しています。監査等委員会は、取締役の職務執行の適法性や妥当性に関する監査を行うほか、内部監査部を通じて、各部門の内部監査を行っています。

また、経営の軸となるサステナビリティ経営においては、サステナビリティ経営委員会が監督機関を担い、サステナビリティに関する方針や目標等を議論しています。

コーポレートガバナンス強化の取り組みでは、第三者の視点から客観的に取締役会の実効性を評価する施策導入を進めており、問題点や改善点の見える化を図っています。

2-5 ロームのESG・サステナビリティに関する外部評価

ロームのESG・サステナビリティの取り組みは、外部機関から高い評価を受けています。以下は、構成銘柄として選定されているESG指数と受賞実績です。

ESG指数/受賞実績 概要
FTSE4Good Index 環境・社会・ガバナンスについて優れた対応を行っている企業が選定されるESG指数
FTSE Blossom Japan ESG評価の高い日本企業が選定されるESG指数
FTSE Blossom Japan Sector Relative Index 各セクター内において、相対的にESGの対応が優れた日本企業のパフォーマンスを反映するESG指数
MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数 米MSCI社が提供するESG評価に優れた日本企業が選定されるESG指数
「EcoVadis」社の2021年のサステナビリティ評価で最高ランクの「プラチナ」評価獲得 「環境」「労働と人権」「倫理」「持続可能な資源調達」からCSR活動を評価
CDP「水セキュリティ調査」で最高評価「Aリスト」に選定 国際環境非営利団体CDOの水資源調査において、A~D-のスコアで評価
「SUSTAINA ESG AWARDS 2022」の総合部門でシルバークラスを受賞 環境・社会・ガバナンスに積極的に取り組む企業を称える表彰制度
「健康経営優良法人~ホワイト500」に5年連続で認定 経済産業省と日本健康会議が主催する優良な健康経営を行う法人を顕彰する制度
「第10回 企業の品質経営度調査」で総合ランキング5位を獲得 製造業を対象に、企業の品質経営度を調査し、評価する制度
ABINCより「いきもの共生事業所認証」を取得 生物多様性に配慮した緑地づくりや管理・利用などの取組みを第三者評価・認証する制度
ローム本社工場が「緑の認定」SEGESを取得 緑を守り育てる活動を通じて、社会や環境に貢献している企業を第三者評価・認証する制度

3 ロームの業績・株価動向

ローム(6963)は、電子機器や産業機器、自動車関連などの半導体部品を提供していることから、株価が景気の影響を強く受ける「景気敏感株」の側面を持ちます。また、ロームは、売上高の大半が海外から構成されているので、海外の経済状況などにも注意を払う必要があります。

2020年(3月期)は、新型コロナウイルスや中国の景気減速の影響もあり、カーナビやカーオーディオなど車載向け部品や産業機器向け部品の売上が減少し、純利益は前期比44%減の大幅減益となりました。ただし、電気自動車の需要拡大や今期以降の半導体需要持ち直しの期待から、株価は4月以降上昇に転じ、1年を通じて13.7%の上昇となっています。

2021年(3月期)は、新型コロナウイルスの影響で、その年の前半は業績が振るわなかったものの、秋以降、自動車やFA(生産工程の自動化を図るシステム)向けのLSI(大規模集積回路)が好調だったことから、純利益は前期比44%増、株価は1年を通して4.8%の上昇となっています。

2022年(3月期)は、世界的な半導体需要拡大により、自動車向け部品、LSI、半導体素子が好調だったことや、円安・ドル高も寄与し、純利益は前期比81%、売上高は過去最高を更新しています。2022年12月26日時点の株価は9,530円台で推移しています。

4 ロームの配当推移

ロームの配当政策は、連結配当性向30%を目安として、継続的に株主還元を行う方針です。また、余剰資金については、M&Aや設備投資、研究開発費等に活用し、中長期的な成長の実現に伴う企業価値拡大を目指しています。

ロームの過去5年の配当推移は以下の通りです。

年度 配当金
2019年3月 150円
2020年3月 150円
2021年3月 150円
2022年3月 185円
2023年3月(予想) 200円

2022年度は、業績好調に伴い、年間配当160円から185円に増額修正されています。2023年度も業績好調が予想されており、年間配当200円の増配予想となっています。

まとめ

ロームは、原点である小型抵抗器やIC開発で培った技術を活用し、パソコン、スマホなどの電子機器をはじめ、自動車、産業機器の高機能化に寄与しています。また、最適化された高効率デバイスによる周辺機器の削減や最終製品の小型化により、枯渇する資源問題の解決にも貢献しています。

最近は、電気自動車の登場によって、電気損失を大幅に減らせるSiCパワーデバイスの需要が高まっており、中長期的な業績拡大も期待できるESG銘柄となっています。なお、投資にはリスクもあるので、慎重に検討することが大切です。

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HEDGE GUIDE 編集部 株式投資チーム

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