ESG投資は、投資を行うにあたって軸となる考え方として定着しつつあります。
投資のプロとも言える運用会社のリーディングカンパニー、野村アセットマネジメントでは、サステナビリティやESG投資に対して、どのような考え方を持っているのでしょうか。本記事では、野村アセットマネジメントのサステナビリティやESG投資への考え方を紹介するとともに、運営するESGファンドを紹介しています。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※信託報酬など、課税対象となる数値はすべて税込表示としています。
目次
- 野村アセットマネジメントとは
1-1.インベストメントチェーンとは
1-2.責任投資のあり方 - 野村アセットマネジメントのESGファンドの考え方
2-1.ESG統合
2-2.エンゲージメント・議決権行使
2-3.その他サステナブル戦略
2-4.サステナブル戦略の詳細 - 主なESGファンド
3-1.脱炭素ジャパン
3-2.世の中を良くする企業ファンド
3-3.野村サステナブルセレクト
3-4.世界フード関連株式オープン - まとめ
1.野村アセットマネジメンとは
野村アセットマネジメントは、野村グループの資産運用会社として、1959年に設立されました。現在では、日本を始めとして北米や中南米、アジア、欧州など世界の各拠点で資産運用ビジネスを展開しています。
2022年の12月末時点では、投資信託と投資顧問業の運用資産残高は66.5兆円に達しています。多くのETFも運用しており、日本をリードする運用会社の一つといっても差し支えないでしょう。
運用会社のリーディングカンパニーを自負する野村アセットマネジメントでは、責任投資を体現すべく、ESG投資の考え方をもとにインベストメントチェーンの強化に注力しています。投資の好循環の土台となるインベストメントチェーンは全ての行動の軸となる考え方です。
1-1.インベストメントチェーンとは
野村アセットマネジメントが強化ポイントとして掲げるインベストメントチェーンとは、資金を提供する投資家と、資金を調達する企業が同じ価値観をともにすることで、社会全体の富を増やすことができる、という考え方です。
野村アセットマネジメントは、運用会社として投資インフラの強化と好循環を生み出すことに注力します。インベストメントチェーン強化のための、重要課題は以下3点です。
- よい運用商品やサービスの提供
- 責任投資の推進
- デジタル化推進による運用力と利便性の向上
その他、投資先の企業との建設的な対話を通じて価値観の共有を図っています。
1-2.責任投資のあり方
野村アセットマネジメントが強く意識している項目に、責任投資があります。責任投資は、持続可能な社会に対して責任を持つ投資行動のことで、ESG投資の根幹をなす考え方にもなっています。
目先の利益だけにとらわれていては、社会存続はままなりません。リーディングカンパニーには、未来の世代へ責任を持った行動が求められます。
健全な地球環境の実現
持続可能な脱炭素社会の実現に向けて、投資先企業へ対面を通じて、気候変動問題への取り組みを促しつつ、野村アセットマネジメントとしても出来ることを模索しています。具体的には、気候変動や機会に対する運用の高度化、カーボンニュートラルへ向けてのCO2削減目標の設定が挙げられます。
運用会社の立場としてはESGファンドの運用が、主なサステナビリティ活動となっています。
ダイバーシティ、インクルージョンへの取り組み
さまざまなバックボーンを持つ人材が伸び伸びと活躍できるように、自社および投資先へ、環境整備を促します。
野村アセットマネジメントが取り組む内容は、女性活躍が目覚ましい日本株式銘柄をまとめたETFの運用や、Job型人事制度の導入、仕事と育児の両立支援などが挙げられます。特に女性活躍について、注力しています。
コーポレートガバナンス
投資先企業や野村アセットマネジメントが掲げる企業理念や経営目標を達成するために、コーポレートガバナンス機能が十分に発揮されるよう努めています。
コーポレートガバナンスは健全な企業運営への取り組み、とも言いかえることができます。野村アセットマネジメントでは、経営のモニタリングモデルを構築し、専門家による社外取締役の起用や、ガイドラインに沿った規律ある議決権行使などを主な取り組みとして公開しています。
2.野村アセットマネジメントのESGファンドの考え方
野村アセットマネジメントでは、投資信託、ETFにて、多くのESG関連ファンドを運用しています。野村アセットマネジメントのESG運用では、7つのESG手法の中から3つの要件を満たす必要があります。
運用の軸となる3つの手法は、以下のとおりです。
2-1.ESG統合
ESGの評価を行う上でもっとも基本的な手法です。投資先を選定する段階で、今まで選別の軸となっていた財務情報の他に、非財務情報も含めて分析、検討する戦略です。
年金機構など長期運用にて収益を目指すファンドなどが、長期の事業リスクや競争力を図る上で、積極的に非財務情報を活用し、市場予想よりも大きなリターンを狙うために用いるケースが多く見られます。
非財務情報はすなわちESG要素となり、財務情報に現れない内容も、重要な選定要素となるのです。
2-2.エンゲージメント・議決権行使
株主として企業へ、ESGに関する案件へ積極的に関わるように促します。具体的には株主総会での議決権行使や経営者との面談、情報開示要求などが該当します。啓蒙活動なども含め、運用会社としてできることを、さまざまな観点から働きかけていく方法です。
国債や地方債などの公共債だけに投資するファンドでは、エンゲージメントを行っていないケースもあります。
2-3.その他サステナブル戦略
その他にサステナブル戦略として、「ネガティブ・スクリーニング」「ポジティブ・スクリーニング」「規範に基づくスクリーニング」「サステナブル・テーマ投資」「インパクト投資」の5つのうちいずれか一つを活用していることが3つ目の条件です。
2-4.サステナブル戦略の詳細
ESG統合やエンゲージメント・議決権行使を覗いた5つのサステナブル戦略を以下に紹介します。前述のその他サステナブル戦略には、5つのうち一つを活用している点が条件です。
ネガティブスクリーニング
ESG手法の基本であり、世界に広く浸透しています。武器、ギャンブル、たばこ、アルコール、原子力発電、ポルノなど、倫理的でない反道徳的と定義される事業を通じて収益をあげる企業を、投資先から除外します。
ポジティブスクリーニング
同種の業界や投資対象の中で相対的に見て、ESG関連の評価が高い企業へ投資します。ESG評価が高い企業は、中長期的な業績が高くなる点に着目した手法です。
規範に基づくスクリーニング
ESG分野の国際基準をクリアしていない企業を投資先リストから除外する手法です。国際基準をクリアできていない企業は、人権問題や環境問題、汚職などの課題をクリアできていません。
不祥事企業を除外することで、国際社会のルールに則った企業でポートフォリオを組むことができます。
サステナブルテーマ投資
再生可能エネルギー、持続可能な農業、男女同権、多様性などサステナビリティに貢献する企業や投資テーマに対して投資する戦略です。
インパクト投資
社会や環境へ貢献する技術やサービスを提供する企業を投資対象とします。投資収益だけでなく、社会や環境に対して目に見えて良い影響を与えているか、という点が重要視されます。
3.主なESGファンド
野村アセットマネジメントが運営するESGファンドを4つ、ピックアップしました。
3-1.脱炭素ジャパン
脱炭素ジャパンは、脱炭素の実現に貢献する企業への投資を通じて、社会的課題の解決に寄与しつつ投資収益を追求するファンドです。
脱炭素への貢献度合いは、温室効果ガスの削減率によって計測されています。2050年までに炭素排出量ゼロを世界で目指しているため、カーボンニュートラルへの働きかけは国内でも重要課題の一つとなっています。
ファンドの主な投資対象企業は、脱炭素ビジネスを展開する企業、脱炭素のための取り組みを行う企業です。
その他脱炭素ジャパンでは、7つの目標の解決を目指すとしています。
3-2.世の中を良くする企業ファンド
世の中を良くする企業ファンドが掲げるテーマは、社会課題の解決と投資リターン獲得の両立です。社会課題解決を目指す企業への投資を通じて、SDGs達成に貢献することを目標としています。
ファンドは以下5つの社会課題に着目します。
- 高齢化社会
- 社会効率化
- 地域社会
- 新興国の生活改善
- 環境とエネルギー対策
3-3.野村サステナブルセレクト
野村サステナブルセレクトは、インパクト投資の観点をもとに運用を行うファンドです。前述のとおり、インパクト投資とは社会課題が目に見えて良い影響を与えているか、という点に着目した投資手法です。
野村サステナブルセレクトは以下、6つの社会課題に取り組む企業へインパクト投資を行います。
- 気候変動の抑制
- 天然資源の有効活用
- 安全な飲料水の提供
- 基本的な金融サービスの提供
- 生活習慣病の改善
- 感染症の撲滅
特設サイトには、投資金額に応じてインパクトが算出できるフォームが設けられており、社会課題への貢献を実感できるようになっています。
3-4.世界フード関連株式オープン
世界フード関連株式オープンは、農業や水関連などの食糧生産関連、食料製造や飲料製造、食品加工関連、食品小売や外食などの食料提供関連にいたるまでの各企業へ幅広く投資を行います。
食に関する社会課題は、先進国食品ロスや、発展途上国の貧困問題、将来想定される食糧危機への備えなど、ESG投資の中でも重要な課題です。
世界フード関連株式オープンは、社会課題となっている食の問題へ取り組む企業への投資を通じて、社会貢献を目指しています。海外の企業を中心に構成されており、ESGに対して明確な問題意識を持ち、取り組みが伺えます。
まとめ
野村アセットマネジメントでは、投資を通じて社会貢献を行う姿勢が強い点が特徴的です。ファンドの運営をより高度化することによって、より良い投資活動を行うための企業努力を垣間見ることができます。
蓄積したあらゆるノウハウをファンド運営に反映させており、ESG指標に基づいた投資先選びは先鋭化されています。業界のリーディングカンパニーとして、ESG投資環境の整備に期待が集まります。
sayran
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