日清紡HDのESG・サステナビリティの取り組みや将来性は?株価推移、配当・優待情報も

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経営でESGやサステナビリティを重視する流れは強まっており、企業も自社の利益追求のみならず、環境や人権など幅広い課題の解決に貢献するよう求められています。

日清紡HDは繊維や無線通信など多彩な事業を営んでおり、サステナビリティに関しても積極的な取り組みを行っています。今回は日清紡HDのサステナビリティの取り組み、株価推移や業績について解説します。日清紡HDへの投資を検討している方、ESGに関心のある方は参考にしてください。

※2023年5月8日時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定のサービス・金融商品への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

目次

  1. 日清紡HDの概要
  2. 日清紡HDのESGに関する取り組み
    2-1.カーボンニュートラル実現のための気候変動対策
    2-2.水資源の保全・浄化などの活動
    2-3.日経「SDGs経営」調査2021の総合評価で4つ星に認定
  3. 日清紡HDの10年間の株価推移と業績
    3-1.10年間の株価推移
    3-2.業績
  4. 日清紡HDの将来性
  5. 日清紡HDの配当・優待情報
  6. まとめ

1.日清紡HDの概要

銘柄 日清紡ホールディングス
証券コード 3105
株価 1,048円
PER(会社予想) 9.11倍
PBR(実績) 0.62倍
配当利回り(会社予想) 3.45%

※2023年5月8日のデータ(株価は同年5月2日終値)

日清紡ホールディングスは東京都中央区に本社を構える、日清紡グループの持ち株会社です。日清紡というと繊維のイメージを持つ方もいるかもしれませんが、現在は主に以下8つの事業を展開しています。

無線・通信/ 通信機器、医療用電子機器、半導体などの製造・加工・売買および輸出入
マイクロデバイス 電気・電子機械器具や装置の設計、施工、管理
ブレーキ 自動車や輸送用機械器具に使われる摩擦材の開発・製造・加工・売買および輸出入
精密機器 ・特定産業用や一般産業用の機械装置や部品の開発・製造・加工・売買および輸出入
・機械装置の設置工事の設計・施工・管理
化学品 ・無機・有機の化学工業製品や医薬品その他の化学工業製品の開発・製造・加工・売買および輸出入
・建築、土木工事の設計、施工および管理
繊維 糸、不織布、衣服、繊維資材などの繊維製品の開発・製造・加工・売買および輸出入
不動産 不動産の売買・仲介・賃貸借・管理
その他 ・再生可能エネルギーによる発電・電気の販売
・低炭素社会および循環型社会の建築に関する素材などの製造・加工・売買および輸出入

上記で特に売り上げの大きい事業は、無線・通信、マイクロデバイス、ブレーキです。2022年12月期に決算によると、これらの事業で日清紡HDの売上のおよそ70%を占めています。

無線・通信事業では、社会インフラ、船舶、自動車などを対象に、無線技術による商品を展開しています。具体的な商品として商船向けのブリッジシステム、超音波関連機器などがあります。

マイクロデバイス事業では、アナログ半導体やマイクロ波関連技術に優位性を持ち、AV機器や産業機器などの分野で商品を展開しています。具体的な商品としては、センサに使われるオペアンプ、スマートフォンなどに搭載される小型マイクロフォンなどがあります。

ブレーキ事業では、自動車で重要な役割を担うパーツであるブレーキ用摩擦材の開発や製造などを行っています。自動車は大きな変化を迎えている業界で、日清紡HDもEV、FCVなど環境対応車、インテリジェントドライブなどの技術革新に対応すべく開発を推進しています。

2.日清紡HDのESGに関する取り組み

日清紡HDはESGやサステナビリティへの取り組みも盛んに実施しています。ここからは同社の取り組みの中から、環境分野のものをいくつか紹介していきます。

2-1.カーボンニュートラル実現のための気候変動対策

日清紡グループは、2050年までのカーボンニュートラル達成を宣言しています。実現に向け、省エネ活動、排出量削減などの気候変動対策を積極的に推進していく方針です。温室効果ガスの排出量削減目標は、以下の3段階で定めています。

  • 2024年目標:2014年度比で35%以上削減
  • 2030年目標:2014年度比で50%以上削減
  • 2050年目標:カーボンニュートラル

具体的な取り組みとしては、繊維事業での石炭ボイラー燃料の廃止、化学品事業での新たな冷媒への切り替えなどが挙げられます。温室効果ガス排出量は2018年から順調に減少していましたが、2021年度は新型コロナの影響からの回復需要により、生産量が回復したことで、排出量も微増しました。

2024年目標も間近に迫っており、順調に温室効果ガスの排出量を減らしていけるのかに注目です。

2-2.水資源の保全・浄化などの活動

水資源に関する活動も、日清紡グループがESGで特に重視している分野の1つです。グループ環境目標においても、売上当たりの水使用量を削減することが定められ、KPIでも管理されています。

同社の事業のうち、水使用量が多いのは繊維事業です。同社の合計の水使用量のうち、繊維事業で60~70%を占めており、いかに減少させていけるのかが鍵となっています。

具体的な活動として、まず地下水使用料の削減のため、地下水を利用する水冷エアコンから空冷エアコンへの更新工事を進めてきました。2021年度は3台を空冷エアコンへ切り替え、2022年度も18台の更新を計画しています。空調設備での水使用量削減にも取り組んでおり、熱交換器を効率の良いものに変更することで、蒸気使用量を削減しています。

これらの成果もあり、日清紡グループの水使用量実績は、2021年度に7.0百万m³と、前年比で 16%減少しました。売上当たりの水使用量は13.8m³/百万円となり、前年比24%減少しました。主な要因は繊維事業で、空調利用分を一部リサイクルで補えることにより、水使用量が減少しました。

水のリサイクル量実績は0.80百万m³で、前年度水のリサイクル量と比較して7%増加しました。繊維事業でリサイクルが進んだことにより、リサイクル量も増加しています。

2-3.日経「SDGs経営」調査2021の総合評価で4つ星に認定

日経「SDGs経営」調査とは、SDGsに積極的に取り組み、企業価値向上に繋げている企業を評価するための調査です。「SDGs戦略・経済価値」「社会価値」「環境価値」「ガバナンス」の計4つの分野の質問で構成されています。

日清紡グループは、2021年の総合評価で4つ星に認定されました(参照:日経リサーチ「日経SDGs経営調査結果アーカイブ」)。「SDGs戦略・経済価値」「社会価値」「環境価値」はSランク評価、「ガバナンス」はA++の評価でした。4つ星より上のランクの企業も存在するため、日清紡グループは今後もさらなるランクアップが期待されます。

3.日清紡HDの10年間の株価推移と業績

ここからは、日清紡HDの株価推移と近年の業績について見ていきましょう。

3-1.10年間の株価推移

直近10年間では、2015年と2018年に2つの山が形成され、いずれも一時1,600円以上を記録しました。その後2020年まで下落が続き、一時600円台になりましたが、2021年以降は緩やかに上昇しています。

直近では1,000円台に回復し、大きな下落の動きはありません。一方で強い上昇の気配も見られないため、以前の1,600円台の水準に近づけるのかに注目です。

3-2.業績

直近5年間の業績は以下のとおりです。

項目 2018/12 2019/12 2020/12 2021/12 2022/12
売上高 4,162 5,096 4,570 5,106 5,160
営業利益 -25 64 12 217 154
当期純利益 -71 -66 135 248 197
営業利益率 -0.6 1.3 0.3 4.3 3.0

単位:億円(1億円未満は切り捨てで表示)

2021年度は増収増益で、売上高は5つの分野ですべて対前年プラスを達成、営業利益も4つの分野でプラスとなりました。

2022年度は減益となりましたが黒字は維持しています。減益の要因は、無線・通信分野において電子部品需給ひっ迫の影響を受けて大型案件が減少したこと、ブレーキ・精密機器分野で原燃料価格が高騰したことです。

2023年12月期について、売上高は7.9%増、営業利益は55.5%増、経常利益は32.4%増を予想しています。ブレーキ・精密機器における原燃料コストの高騰に対して価格転嫁を進め、家電向けビジネスも堅調に推移することにより、大幅に利益が改善される見通しとのことです。

4.日清紡HDの将来性

ここからは日清紡HDを投資先として見たときの将来性について、ESGと業績の両面から考察していきます。まずESGに関して、気候変動や水資源など環境分野を中心に、数多くの取り組みが見られます。

具体的な活動内容と効果、年度ごとの推移など、詳細な情報がホームページ上で確認できることからも、同社がサステナビリティに注力している姿勢がうかがえます。温室効果ガス削減については期限が間近の目標も掲げており、今後も公表される情報の内容が注目されます。

近年の業績では、2020年度に新型コロナによる影響が見られましたが、2022年度では回復しています。また2018年度と2019年度は利益がマイナスでしたが、2020年度以降は黒字を維持しています。利益面で改善が見られる一方、今後売上をどう伸ばしていけるのかが課題となるでしょう。

5.日清紡HDの配当・優待情報

1株あたり年間配当 2021年12月期実績:30円
2022年12月期実績:34円
2023年12月期予定:36円
主な株主優待 商品詰め合わせまたは寄付

2022年12月期は、売上・利益とも堅調であったことから増配となりました。2023年12月期にも増配を予定しています。

株主優待制度では、12月末時点で1,000株以上の保有者は以下のいずれかを選べます。

  • 日清紡コットン100%クッキングシートなど不織布製品の詰め合わせ(定価3,000円相当)
  • 環境保全や人道支援を目的とする募金への寄付(金額は3,000円/人)

まとめ

日清紡HDのESG関連の取り組み、株価推移や近年の業績について解説してきました。同社の起源である繊維事業の他にも、無線通信、マイクロデバイス、自動車のブレーキの摩擦材など多角的な経営を行っています。

新型コロナの影響を受けたものの、2022年度は売上・利益ともに回復しました。ESGでも気候変動対策や水資源保護といった環境面などで積極的な取り組みを行っており、今後も活動による成果が期待されます。

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安藤 真一郎

マーケティング会社に勤務した後、ライター・コラムニストに転身。 さまざまなジャンルの執筆を行う途中でマネーリテラシーの重要性に気づき、現在はマネー・金融分野を中心に執筆活動を行う。投資、資産形成、年金、税制度、ローン、節約、キャッシュレス決済など多数の執筆実績あり。投資に関しては中長期での利益獲得を目指し、米国株式や先進国株式を中心とする投資スタイル。ファイナンシャルプランナー資格保有。