今回は、Web3.0とDAOをテーマに事業を行うFracton Ventures株式会社の鈴木雄大 氏から寄稿いただいたコラムをご紹介します。
目次
NFTは社会でどのように役に立つのでしょうか。またNFTを持っていることで恩恵を受けることはあるのでしょうか。その一つの事例ともなるあたらしいNFT担保ローンによる資金供与事例が海外で生まれましたので、背景事情を含めてご説明致します。
世界初のDAOへのNFT担保ローンの実施
まずこのタイトルだけを見て何をさしているのか、ご理解いただく方は少ないのではないでしょうか。DeFi(分散型金融)のツールを用いることで、NFTだけでこんなことが行えるのかと驚くべき事例です。
早速この物語を読み解いていきます。まず以下の登場人物たちをご紹介します。
- C.R.E.A.M. Finance:DeFi(分散型金融)プロトコル、担保となる暗号資産をスマートコントラクトにロックすることで貸借が可能
- Iron bank:DeFiプロトコル間の暗号資産の貸付を行うプロトコル、プロトコル間に限って無担保で暗号資産のプロトコル相互貸付を行うことが可能
- PleasrDAO:NFT収集を行うDAO(自律分散型組織)
C.R.E.A.M Financeは大手DeFiプロトコルの分析サイトである、DeFi Pulseでも21位(*)にランクインするDeFiのレンディングプロトコルです。10種類の暗号資産の貸し借りに対応しており、プロトコルとなるスマートコントラクトにロックされている暗号資産残高(TVL)は535億円(*1)にものぼります。
*及び*1は記事執筆の2021年7月末現在を指す。
PleasrDAOとは
次に登場するのが、DAO(ダオ)と呼ばれる分散型組織です。DAOはDecentralized Autonomous Organizationと呼ばれる言葉の頭文字を取った言葉で、日本語に訳すのであれば自律分散型組織と訳されます。このDAOの一つとして存在しているものが、PleasrDAOです。
DAOの種類としてはざまざまな目的や用途のものがあるのですが、このPleasrDAOは、NFTを収集しているDAOとして有名です。将来的にはDAOで蓄える資金を生かした投資などを行っていくようではありますが、現在は特にNFTアートの収集チーム(組織)として機能しています。
なかでも有名なのはエドワード・スノーデン氏がNFTマーケットプレイスであるFoundation(ファウンデーション)にて販売をしたSnowden NFTの購入を行ったDAOであることです。この時にはオークション事態が加熱したこともあり、結果的に落札額は驚異の2,224ETH(約5,980万円)であったこと、そしてそれが個人ではなくアートコレクションを行うDAOであったことも合わせて話題になりました。
実は過去にも、こうした著名人のNFTは過去も有名な方が落札をする、また落札をすることで有名になるパターンがありました。例えばBeepleの過去最高額NFTであったTHE FIRST 5000 DAYSを落札したことMetakovanもそれまではあまり有名ではなく、BeepleのNFT作品のオーナーとなってから一躍有名になった経緯があります。
さて話をPleasrDAOに戻すと、このDAOが業界の著名人によって支えられているDAOであることがわかってきます。以下のリンクからDAOのメンバーを見ることができます。
DAOのメンバーにはブロックチェーン分野に投資を行っているMechanism CapitalのAndrew Kang氏、Compound及びCompoundプロトコルの創業者Robert Leshner氏、Aave及びAaveプロトコルのStani Kulechov氏など、業界の有名人が参加していることが特徴です。
NFTで資金を借りる未来、その意図
ここからが本題です。PleasrDAOは所持しているNFTを担保にすることでC.R.E.A.M. Financeの新機能であるプロトコル間ローンであるIron Bankを用いて、実際の資金(暗号資産)を借りることに成功しました。しかもその額は$3.5M(約3.83億円)というとても大きな金額です。
NFTを担保にして、NFT価値に紐づく資金調達を行うことは過去も海外のコミュニティで実験的に行われてきましたが、①NFTを所有するDAOが、②DeFiプロトコルを用いて、③NFT担保ローンにて資金供与を受ける、例は過去になく世界初の事例となりました。
このIron Bankについてあまり詳細が出ていませんが、Decryptの取材においては「銀行間ローン」のようなものであると語っており、プロトコル間での優遇されたレンディングを可能にしているものと思われます。
NFTとDAOがコラボレーションする未来に何が起きるのか
このような事例が示すNFTの可能性は何でしょうか。NFTはアーティストやクリエイターに対して”オーナーシップ”を持った経済圏を作ることを、アーティストドリブンな社会を作りやすくするきっかけを与えました。そこで生まれたアートに対して、アートコレクターは単一の存在ではなく、グループとしてNFTアートを収集していくことに成功しました。
さらに、今回のようにそこから一歩進み一部の所有するNFTを担保に、DeFiと組み合わせ、資金を借りることで更に次のNFTアートの収集を行うようなそんな流れが出来つつあります。
このようなNFTの収集や、NFT担保といった世界は少し遠い世界にも聞こえるかもしれません。しかしNFTアートは単なるデジタルアートではなく、ブロックチェーン上で生成された、所有できるデジタルアートです。こうした新しい経済券特有の、ある意味で奇想天外にも思えるNFTの使い方を知っておくことがこの先のNFTのイノベーションを理解するきっかけになるのではないでしょうか。
ディスクレーマー:なお、NFTと呼ばれる属性の内、発行種類や発行形式によって法令上の扱いが異なる場合がございます。詳しくはブロックチェーン・暗号資産分野にお詳しい弁護士などにご確認ください。
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