今回は、メルカリの暗号資産事業について、大手仮想通貨取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では仮想通貨コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。
目次
- 株式会社メルカリについて
1-1. メルカリの概要
1-2. メルカリとはどんなサイトか?
1-3. メルカリの事業展開 - 新設立された子会社「メルコイン」
2-1. メルカリが暗号資産事業に進出する背景
2-2. 最終的にはNFT関連事業の展開も見込まれる
2-3. Eコマースと暗号資産 - NFTマーケットプレイスと暗号資産
3-1. GMOグループの「Adam byGMO」 - まとめ
CoincheckやGMOコインなどの暗号資産取引所やブロックチェーンゲーム会社などがNFTマーケットを展開していますが、暗号資産関連企業以外でのNFT市場への参入が始まっています。
大手の音楽・芸能関連企業であるエイベックスグループに属するエイベックス・テクノロジーズは著作権関連のNFT事業の展開を本格化し、広告会社の電通もNFT事業を支援するための子会社を設立しました。
日本のフリーマーケットプラットホームの最大手である株式会社メルカリは、暗号資産やブロックチェーンに関するサービスの企画・開発を行うことを目的とした子会社「株式会社メルコイン」を立ち上げました。メルコインは2022年を目途に暗号資産事業を対外的にスタートする予定です。そこで今回は株式会社メルカリが暗号資産事業に進出する理由や今後の展開、既存のNFTマーケットプレイスへの影響などについて解説したいと思います。
①株式会社メルカリについて
まずは株式会社メルカリの概要等、基礎的なことについて解説します。
メルカリの概要
2013年に設立された株式会社メルカリは、3年後の2016年に黒字化し2018年6月に東証マザーズに上場している企業です。
社名と同名となるフリマアプリ「メルカリ」という個人売買のプラットホームサービスを提供し2021年現在で月間利用者数(MAU)が1,900万人を超える圧倒的な人気を得ています。直近の業績である2021年の第2四半期の決算は売上高が前年比41%増の266億円、営業利益は10億円で3期連続の黒字となっています。
メルカリとはどんなサイトか?
株式会社メルカリが運営する個人売買プラットフォーム「メルカリ」はフリマアプリと称されるように、個人が気軽にサイト上に売りたい商品を掲載して販売できるというものです。個人オークションの日本最大手であるヤフーオークションと違い、メルカリの場合はオークション機能はありません。
メルカリの事業展開
メルカリは個人売買プラットフォームに関連する派生サービスも展開しており、ユーザーがお互いの住所情報を公開せずに配送させるサービスなどもあります。
また、2019年には決済サービスのメルペイを立ち上げています。メルペイのMAUは1,000万人と、メルカリの会員全体の約42%が使用しています。暗号資産取引所の遥かに凌ぐ会員基盤を抱えているユーザー基盤をもとに、暗号資産に関連するサービス展開を計画中のようです。
②新設立された子会社「メルコイン」
2021年4月に暗号資産やブロックチェーンに関するサービスの企画開発を行うことを目的とした子会社であるメルコインを設立しました。
株式会社メルカリのプレスリリースでは設立目的が以下のように説明されています。
暗号資産事業に関しては、「メルカリ」における売上金のビットコインでの受取り機能の提供や、「メルペイ」における決済・送金機能に留まらない与信、暗号資産・資産運用の機能の提供等、より簡単に金融サービスを利用できる環境を目指していきます。また、価値交換を実現するブロックチェーンの技術に取り組むことで、NFT(Non-fungible token)等、これまでのモノ・お金に限らず、サービスやデジタルコンテンツなどのあらゆる価値を誰もが簡単に交換できる新しい取引の形を創出し、さらなる顧客体験の向上や顧客基盤の拡大に繋げていきたいと考えています。【引用元】株式会社メルコイン設立に関するお知らせ
また、2021年の7月1日にメルコインは暗号資産取引所が所属する日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)に入会しています 。
2-1. メルカリが暗号資産事業に進出する背景
メルカリでは独自の決済サービスであるメルペイの事業を手がけると同時に2018年頃からイーサリアムを中心とするブロックチェーンの研究開発を行っていました。これはPayPalやスクエアなどの米決済大手が暗号資産決済に対応していくなど暗号資産のユースケースが進むことが想定されていたからです。
2-2. 最終的にはNFT関連事業の展開も見込まれる
メルカリが暗号資産授業でどのような展開をしていくかはプレスリリースで発表された範囲でしかわかりませんが、初期段階では売上金を暗号資産で受取る機能を統合し、その後、暗号資産を使った資産運用やNFTのウォレットとしての機能が装着されるのではないでしょうか?
メルカリがNFTマーケットプレイスをオープンするかどうかは現時点では確定していませんが、NFTの出品ができるようになる可能性もあると考えられるでしょう。
2-3. Eコマースと暗号資産
米決済大手のPayPalやスクエアを始め、クレジットカード会社の世界的大手であるVISA カードとマスターカードも暗号資産取引決済を開始しています。政府による暗号資産決済の規制がない限りは今後、Eコマース領域での暗号資産決済は当たり前になっていく可能性があります。
現在ほとんどのEコマースサイトで独自のポイント制度がありますが、これもブロックチェーンをベースにしたトークンに切り替わる日が近いかもしれません。いずれにしても今後、Eコマースの世界に暗号資産が進出していく動きが本格的になると思われます。
NFTマーケットプレイスと暗号資産
現段階で主要なNFTマーケットプレイスでは基本的にプラットフォームのベースとなるブロックチェーンで使用されるトークンが決済にも使用されています。
NFTマーケットプレイスの課題の一つとして、暗号資産を所有するユーザーそのものの数が少なくマーケットがスケールしづらいという点があります。その課題解決の一つの策として、クレジットカード決済の導入や法定通貨とペッグされたステーブルコインを独自で発行し、NFTマーケットプレイスの決済通貨として導入しているNFTマーケットプレイスも誕生しました。
プラチナエッグが運営する「TOKEN LINK」というNFTマーケットプレイスで、CROSS LINKというブロックチェーンRPGで使用されるゲームアイテムのNFT銘柄を取り扱っています。「TOKEN LINK」はIOSTをベースとしたプラットホームで決済にもIOSTが使用されていますが、プラチナエッグが販売する日本円のステーブルコインでもあるJPYA(JPY Ascension)でも決済可能となっています。
このようにNFTマーケットプレイスで独自発行の暗号資産やステーブルコインが使用される動きが出てくる可能性があります。
3-1. GMOグループの「Adam byGMO」
GMOコインを運営するGMOグループはまもなくNFTマーケットプレイス「Adam byGMO」をオープン予定です。かなり魅力的なコンテンツが揃う期待のNFTマーケットプレイスで、クレジットカード決済も可能とする目論みです。
GMOグループの米国法人であるGMO-Z.com Trust Company, Inc.は、今年の3月に日本円と連動したステーブルコイン「GYEN」(ジーエン)を発行しました。公式発表はありませんが、「GYEN」とNFTマーケットプレイスの接続も視野に入れている可能性も否定できないと考えます。
④まとめ
メルカリが暗号資産事業に進出し、業界にどのようなインパクトを与えるかは、まだまだ未知数ですが、メルカリでNFTの出品が可能とならばNFTのマーケットの裾野の拡大に繋がります。メルカリには、そのような方向性での暗号資産事業への進出を期待したいところです。
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中島 翔
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