SDGsやESG、サステナビリティの活動が世界的に進む中、日用品大手のライオン株式会社では、「健康な生活習慣づくり」と「サステナブルな地球環境への取組み推進」を軸に、社会及び環境課題に向けて活動しているため、サステナビリティの取り組みやESG投資に興味のある方は注目しているのではないでしょうか。
この記事では、ライオンの特徴、株価動向、ESG・サステナビリティ、株主優待内容について詳しく解説するので、参考にしてみてください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※本記事は2022年9月30日時点の情報をもとに執筆されています。最新の情報については、ご自身でもよくお調べの上、ご利用ください。
目次
1 ライオンの特徴
ライオン株式会社は、東証プライム市場に上場する日用品メーカーで、洗剤、石鹸、歯磨き粉、医薬品など生活関連の幅広い商品を製造・販売しています。中でも、歯磨き粉の「クリニカ」「システマ」、ハンドソープの「キレイキレイ」、洗濯用洗剤の「ソフラン」、解熱鎮痛薬の「バファリン」などは、ライオンの主力商品として高い知名度があります。
また、東南アジアを中心に、海外にも事業展開しており、今後はインドなど南アジアにも事業拡大する予定です。
以下は、過去5年のライオンの業績推移です。
決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期利益 |
---|---|---|---|---|
2017年12月期 | 342,703百万円 | 30,479百万円 | 31,998百万円 | 20,883百万円 |
2018年12月期 | 349,403百万円 | 34,196百万円 | 35,658百万円 | 25,606百万円 |
2019年12月期 | 347,519百万円 | 29,832百万円 | 31,402百万円 | 20,559百万円 |
2020年12月期 | 355,352百万円 | 44,074百万円 | 44,494百万円 | 29,870百万円 |
2021年12月期 | 366,234百万円 | 31,178百万円 | 34,089百万円 | 23,759百万円 |
2022年12月期(予想) | 375,000百万円 | 27,500百万円 | ― | 20,000百万円 |
2020年は新型コロナウイルスの感染拡大により、衛生商品需要が高まり、ハンドソープや消毒液などの衛生関連商品の売り上げが大きく伸びました。しかし、2021年以降は、物価高による原材料費の高騰で利益が上がりにくくなっているほか、原材料費がさらに上昇すれば、価格転嫁により利益減となる可能性もあるため、今後の動向もチェックする必要があります。
2 ライオンの株価動向
ライオンは、景気動向に業績が左右されにくいディフェンシブ銘柄に位置づけられていることもあり、長期の株価は堅調に推移しています。過去10年では、株価が2倍以上、2020年のピーク時には5倍以上に上昇するなど、長期では高パフォーマンスを記録しています(※2022年9月30日時点)。
直近では、2020年7月30日の2,823円をピークに、下落相場が続いています。2022年の最安値は1,263円なので、ピーク時から1,560円安くなっています。2020年は、新型コロナウイルスの感染拡大により、ハンドソープなどの衛生品の販売が好調だったほか、台所用洗剤や消毒液などの販売も伸びたことで、株価が最高値を記録しました。
2021年以降は、新型コロナウイルスの収束に伴いハンドソープや消毒液の販売が落ち込んだほか、原材料費の高騰も利益を圧迫しています。2022年9月30日時点の株価は1,600円台で推移しています。
2022年1-6月期にハンドソープなどの「ビューティーケア事業」や、歯磨き粉などの「オーラルケア事業」の販売が好調だったこと、海外事業の売上も堅調だったことを受けて、株価はやや戻しています。
3 ライオンのESG・サステナビリティの取り組み
ESGやサステナビリティが世界中で広がったのは、国連サミットの「SDGs(持続可能な開発目標)」が採択された2015年ですが、ライオンはそれより以前から環境保全に関する取り組みに注力している企業で、2007年には地球環境大賞、2008年には環境省から「エコファースト企業」に認定されるなど環境課題に対する高い意識があります。
ライオンでは、「サステナブルな地球環境への取組み推進」「健康な生活習慣づくり」の2つを重要課題に掲げています。以下、詳しく見ていきましょう。
3-1 サステナブルな地球環境への取組み推進
ライオンは、2019年にパリ協定(気候変動抑制の国際的な協定)やSDGsなどに、事業を通じて貢献するための長期環境目標「LION Eco Challenge 2050」を策定しており、その重要課題として「サステナブルな地球環境への取組み推進」を掲げています。
具体的には、2050年までに事業所活動におけるCO2排出量ゼロとカーボンネイティブを目指し、2030年までに事業所活動のCO2排出量55%削減(対2017年、絶対量)、ライフサイクルのCO2排出量30%削減(対2017年、絶対量)、ライオンの事業全体における排出量を上回るCO2削減に貢献(国内)することを目標としています。
また、資源循環型社会の実現に向けて、2050年までに循環し続けるプラスチックの利用と持続可能な水使用も目指しており、2030年までに石油由来のプラスチック使用率を70%以下、ライフサイクルにおける水使用量30%削減(対2017年、売上高原価位)を目標としています。
そのほかにも、生物多様性や水環境問題にも率先して対応しています。1960年代、河川へ破棄した合成洗剤が分解されなかったことで、河川が泡で覆われる「河川の発泡問題」が発生しました。そこで、ライオンは分解されやすい洗剤原料に転換し、現在は生分解性洗剤がスタンダードになっています。
また、1970年代には、当時の洗剤に配合されている「リン」により、富栄養化による赤湖が発生し問題になりました。そこでライオンは、洗剤の無リン化をいち早く行い、無リン化洗剤を推進したケースもあります。このほか自社工場が立地する周辺流域の生物多様性を保全する活動をNPO法人や関連団体と共に行っています。
上記の例は一部であり、ライオンはこのほかにも環境配慮型のエコ商品を多く開発しています。その中で、原材料調達から廃棄までの各段階における環境負担を定量的に評価する「ライオンエコ基準」を策定しており、評価項目と評価基準は以下の通りです。
2021年は、ライオンの家庭用商品の売上のうち82%がライオンエコ基準をクリアした商品となっており、環境問題に大きく貢献しています。
ライフサイクルステージ | 評価項目 | 評価基準 |
---|---|---|
1 原料調達 | 植物原料の使用、持続可能な原料の使用 | ・内容物の中の植物原料比率が50%以上 ・植物由来原料の中で、生物多様性に配慮した原料を50%以上使用 |
2 材料調達 | リサイクル材料の使用、植物由来材料の使用 | ・再生材料の使用率が10%以上 ・板紙の場合は、古紙または間伐材、認証林パルプの使用率が94%以上 ・植物由来樹脂の使用率が20%以上 |
3 製造 | 省エネ、水使用量の削減、化学物質使用量の削減、廃棄物量の削減 | ・製造段階の温室効果ガス、水使用量、原料以外の化学物質使用量、排気物質量を基準製品より20%削減 |
4 物流 | 濃縮化、コンパクト化 | ・基準製品より、20%以上の内容物を濃縮化あるいは容器をコンパクト化 |
5 使用 | 使用時の省エネ、使用後の温室効果ガス排出量の削減、水使用量の削減 | ・製品仕様に伴うエネルギーを基準製品より20%以上削減 ・使用後に排出される温室効果ガスを基準製品より20%以上削減 ・使用時の水使用量を基準製品より20%以上削減 |
6 廃棄 | 包材削減、詰め替え | ・本体容器包材料を基準製品より15%以上削減 ・詰め替え容器包材料を本体包材料の50%以上削減 |
(※「基準製品」はLION Eco Challenge 2050の目標基準年である2017年販売の製品とする)
3-2 健康な生活習慣づくり
ライオンは、健康な生活習慣づくりとして「健康、快適、清潔・衛生的な毎日の実現」をスローガンに、SDGs目標でもある「すべての人に健康と福祉を」の実現を目指しています。健康な生活習慣づくりの土台となる活動は大きく分けて2つあります。
1つ目は「オーラルヘルスケア習慣の普及活動」です。健康格差の縮小を目的に、自宅でできるヘルスケアや専門家による歯磨き指導など、予防歯科習慣への進化を図ります。また、IoTやAI等のテクノロジーを活用することで、楽しく学びながら取り組むことが可能になります。
この活動では、子供向けのヘルスケア指導等の取り組みにも注力しており、具体的には、歯磨きの仕方や磨く順番など、歌や動画、ポスターを通じて学ぶためのコンテンツ制作や、「全国小学生歯みがき大会」の開催も行っています。
また、ライオンが開発したアプリ連動型IoT歯ブラシ「クリニカKid`sはみがきおけいこ」では、歯ブラシの動きを感知することができるアタッチメント本体と絵本型コンテンツのアプリを併用することで、予防歯科習慣を楽しく学びながら身に付けることが可能になります。
そのほかにも、歯ぐきチェックツール「HAGUKI CHECKER」では、スマホで口の中を撮影するだけで、歯ぐきの「下がり、くすみ、ハリ」など口内の健康チェックができます。
健康な生活習慣づくりの土台となる活動の2つ目は、「清潔・衛生習慣の普及活動」です。ライオンは、清潔衛生習慣の定着化に向けて、正しい手洗い習慣づくりに取り組んでいます。また、ライオンの社員参画の清潔衛生イベントや、災害時清潔健康ケア、ホテル・飲食店従業員向けの清潔・衛生習慣サポートなど、地域や行政などと共に活動を推進しています。
最近は、新型コロナウイルスの感染拡大により、清潔衛生習慣の重要性が増しています。清潔衛生習慣は、子供のうちから習慣化することが重要なため、毎年全国の幼稚園や保育所などで園児に手洗いの大切さを教えています。
また、災害時には、衛生上のリスクが高まるため、普段から災害時の清潔健康ケアの理解を深めておく必要があります。そこで、ライオンは、災害時の備えについてまとめた冊子の発行や、防災イベント等で災害時の清潔健康ケアの情報提供を行っています。
そのほかにも、徹底した衛生管理が求められる飲食店・ホテル等に従事する方々を対象に、衛生管理サポートを行っています。サポートの一環として、手洗いの方法・タイミング・手洗い設備の管理ポイントなど、プロが知っておくべき衛生管理情報を「ハイジーンたより」にて提供しています。
このように、ライオンは環境保全や健康・福祉の推進に貢献しているだけではなく、「健康指針」として自社従業員の健康増進も掲げています。実際に、すべての事業所に「健康サポート室」を設けており、従業員の健康管理を行っています。
その結果、地域の健康課題や健康増進の取り組みをもとに、優良な健康経営を実施している法人を顕彰する制度である「健康経営優良法人 ホワイト500」に、ライオンが認定されています。
4 ライオンの株主優待内容
ライオンの株主優待は、年に1度、100株以上保有する株主を対象に、新製品を中心とした自社製品の詰め合わせを1セット贈呈しています。自社製品の詰め合わせは、洗濯用洗剤や歯ブラシ、歯磨き粉など日常生活で使える商品が中心です。ライオン商品を利用しながら価値を感じることができるので、消費者としても株主としても便利な優待内容となっています。
権利確定日は12月末なので、優待商品は権利取得の約2カ月後(12月末分は3月上旬)に届く予定です。
まとめ
ライオンは、環境保全の取り組みにおいて既に実績豊富な企業なので、現在のESG・サステナビリティの取り組みにおいても高く評価されています。
また、景気動向に左右されにくいディフェンシブ銘柄となっているほか、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)のESGインデックスに選定されるなど、ESG銘柄としても知られているので、サステナビリティやESG投資に関心のある方に適した投資先となっています。
なお、銘柄選びの際は、価格変動リスクにも注意しながら慎重に検討することが大切です。
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