持続可能な成長のため、投資でもESGやサステナビリティを重視する流れは強まっています。企業も自社の利益追求のみならず、環境や人権など幅広い課題の解決に貢献するよう求められています。
リンテックはシール、ラベル、フィルムなど私たちの身近にある製品の製造・開発を手掛ける企業で、ESGに配慮した経営も行っています。今回はリンテックのサステナビリティの取り組み、株価推移や業績について解説します。
※2023年1月16日時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定のサービス・金融商品への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- リンテックの概要
- リンテックのESGに関する取り組み
2-1.環境配慮型製品の開発
2-2.環境マネジメントシステムの構築と運用 - リンテックの10年間の株価推移と業績
3-1.10年間の株価推移
3-2.業績 - リンテックの将来性
- リンテックの配当・優待情報
- まとめ
1.リンテックの概要
銘柄 | リンテック |
証券コード | 7966 |
株価 | 2,112円 |
PER(会社予想) | 10.77倍 |
PBR | 0.64倍 |
配当利回り(会社予想) | 4.17% |
※2022年1月16日のデータ
リンテックの事業領域は一言でいうと「粘着性の製品」で、具体的にはシールやラベル用の粘着紙、粘着フィルム、各種テープなどがあります。その他にもガラス飛散防止フィルム、内装用化粧フィルムなど、多種多様な製品を取り扱っています。単純に比較はできませんが、競合企業はポストイットやラベルなどを手掛ける米国のスリーエム社などです。
リンテックは紙やフィルムに加え、テープやラベルの特性を引き出すための関連装置の開発・製造も行っています。バーコードプリンタ、ラベリングマシン、半導体関連装置など、ソフト(素材)とハード(装置)の相乗効果の発揮を目指す総合的なアプローチとなっています。
2.リンテックのESGに関する取り組み
リンテックはサステナビリティやESGに関する取り組みも推進し、ウェブサイトには多数のプランや取り組みの情報が掲載されています。ここではその中から代表的な物をいくつか紹介します。
2-1.環境配慮型製品の開発
リンテックグループは、ものづくりを担う企業の責任として、環境配慮型製品の開発を推進しています。設計段階から、資源採取・原材料調達、製造過程、廃棄までを含めた環境負荷低減を行っています。
環境配慮型製品の例として、バイオマス粘着剤使用の再剝離タイプラベル素材があります。近年は容器のリユース・リサイクルのため、きれいに剝がせるラベルの需要が高まっています。そこでバイオマスラベル素材の商品ラインナップに再剝離タイプの新アイテムを追加し、2021年9月13日から販売を開始しました。再剝離性を損なうことなく、二酸化炭素排出量の削減に貢献しています。
2-2.環境マネジメントシステムの構築と運用
環境マネジメントシステムとは、事業者が環境に関する方針や目標を自ら設定し、達成に向けて取り組んでいくための体制・手続きのことです。環境省も、環境マネジメントは事業活動を環境に優しい内容に転換するための効果的な手法であり、幅広い事業者が積極的に取り組んでいくことを期待するとしています。
リンテックでも「地球は一つ、大きな視野で快適環境に尽力しよう」というスローガンのもと、環境マネジメントの構築・運用を行っています。中期目標(2020年度~2022年度)と実績は下記のとおりです。
項目 | 目標 | 2021年度実績 | 結果 |
---|---|---|---|
CO2排出量 | 対前年度原単位で1%削減 | 0.02%増加 | 目標未達 |
電力使用量 | 対前年度原単位で1%削減 | 0.82%増加 | 目標未達 |
用水使用量 | 対前年度原単位で1%削減 | 1.2%改善 | 目標達成 |
廃棄物発生量 | 対前年度発生量から1%削減 | 5.9%増加 | 目標未達 |
CO2排出量や電力使用量はほぼ前年並みという結果になりました。2021年度は新設備の稼働もスタートし、生産が増大したことも加味すれば健闘したと言えるのかもしれませんが、結果は目標未達成です。
用水使用量も厳しい状況でしたが、前年比で1.2%の改善を達成できました。品種替えの際の用水再利用を検討し、引き続き削減に取り組むとしています。
3.リンテックの10年間の株価推移と業績
ここからはリンテックの株価推移や業績について見ていきましょう。
3-1.10年間の株価推移
リンテックの直近10年間の株価推移を見ると3つの波があります。まずは2015年1月までの上昇で、株価が一時3,000円に到達しました。2つ目は2018年8月までの上昇で、3,300円以上を記録しましたが、その後2019年にかけて大きく下落しました。
2020年以降は2,000円~2,800円のボックス圏で、やや方向性のない動きとなっています。ただし2022年1月からの直近1年間は、下落相場が続いており、2,700円台から2,100円台となりました。
2022年11月には12カ月の移動平均線が24カ月の移動平均線を上から下に抜け、デッドクロスを形成しました。出来高のトレンドも増加の気配がなく、直近の株価推移に関しては厳しい状況です。
3-2.業績
直近5年間の業績推移は下記のとおりです。
項目 | 2018年3月期 | 2019年3月期 | 2020年3月期 | 2021年3月期 | 2022年3月期 |
---|---|---|---|---|---|
売上高 | 249,030 | 250,942 | 240,727 | 235,092 | 256,836 |
営業利益 | 20,095 | 17,977 | 15,440 | 17,030 | 21,584 |
経常利益 | 18,389 | 17,993 | 14,484 | 16,770 | 22,698 |
※単位:百万円
2021年3月期までは業績の伸び悩みが見られましたが、2022年3月期は売上高、営業利益、経常利益はすべて前年増を達成しました。「アドバンストマテリアルズ事業部門」という、半導体チップの製造・実装で使われる特殊粘着テープなどを手掛ける事業が伸びたことが主な要因です。半導体や電子部品関連の好調な需要に支えられた結果となりました。
直近の2023年3月期について、第2四半期までの業績は売上高が前年比14.9%増、営業利益はマイナス16.6%となっています。売上高は米国子会社での買収効果や円安影響もありプラスとなりましたが、パルプを含む原燃料価格上昇が営業利益のマイナスにつながりました。
2023年の通期予想においても、売上高は前年増、営業利益と経常利益は前年減を見込んでいます。当初予想より下方修正を行っており、業績はやや厳しい状況が続いているようです。
4.リンテックの将来性
リンテックの将来性について、ESG・サステナビリティと業績の両面から考察していきます。
まずESGですが、積極的に数々の取り組みを行っており、環境マネジメントシステムなどでは目標と実績を公開しています。CO2や電力などの削減について、業績拡大とともに使用量が増える側面もあり、大きな効果はまだ出せていないようです。
ただし自社にとって不利な情報も公開する姿勢は評価されるべきものと言えるでしょう。環境配慮製品の開発、廃棄物削減、環境負荷物質削減などの取り組みも行っているため、今後さらに大きな成果を期待したいところです。
業績について前年度は大きく伸長しましたが、2023年3月期は利益面で苦戦しています。売上高は好調ですが、原材料費や燃料の高騰が大きくマイナスに響いているようです。世界的な動向であり、一社の努力だけではカバーできないのが苦しいところです。
5.リンテックの配当・優待情報
1株あたり年間配当 | 2022年3月期実績:88円 2023年3月期予定:88円 |
主な株主優待 | なし |
2023年3月期は、前年と同じ配当を予定しています。現在の株価水準である2,100円から計算される配当利回りは約4%です。一見すると高い水準に見えますが、2022年1月からの株価下落によって利回りの数字が大きくなっている側面もあることはおさえておくべきでしょう。
まとめ
リンテックの事業内容やESG関連の取り組み、株価推移や業績について解説しました。シール、ラベルなど粘着性の製品を中心に開発・販売しているメーカーです。ESGに関しても、バイオマス原料を使用した再剝離タイプラベルなどの環境配慮型の製品開発を行っています。
業績に関して2022年3月期は好調でしたが、2023年3月期は原材料や燃料の価格高騰で利益が減少しており、今後どのように対処するかが問われています。株価も直近1年間では下落が続いており、短期的な投資環境としては厳しい状況です。
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