証券会社を経て、仮想通貨取引所でトレーディング業務に従事した後、現在は独立して仮想通貨取引プラットフォームのアドバイザリーや、コンテンツ提供事業を運営する中島翔のコラムを公開します。
目次
- Chainlinkの特性
1-1. ミドルウェアとしての役割
1-2. ブロックチェーン以外へのミドルウェアとしての起用
1-3. SWIFT(国際銀行間通信協会)との連携 - Chainlink(チェーンリンク)のユースケース
- LINKトークンの特性
- Chainlink(チェーンリンク)の創設者:Sergey Nazarov氏
- Chainlink(チェーンリンク)の課題
- Chainlink(チェーンリンク)を購入できる取引所
6-1. SBI VCトレード - Chainlink(チェーンリンク)の今後の展望
9月16日に国内の仮想通貨取引としては初めてSBI VCトレードに上場され、注目を集めている仮想通貨が、Chainlink(チェーンリンク:LINK)です。
仮想通貨への投資を検討している方にとって、市場に存在する様々な仮想通貨の違いがわからない方も多いと思います。仮想通貨の多くは、現実社会の課題を解決するために構築された固有の「ユーティリティ(利用用途)」があります。各通貨の「ホワイトペーパー」には開発コンセプトがまとめられており、最終的なゴールに向けた開発ロードマップが示されています。投資家はホワイトペーパーや実際の開発状況を参考にしながら、総合的に投資判断しています。
このシリーズでは、個別の仮想通貨が「何の目的のために作成され、どのような特性があるのか、将来性が見込めるのか」について深堀しています。今回は、Chainlink(チェーンリンク:LINK)という通貨を説明していきます。
①Chainlinkの特性
Chainlinkはアメリカのスマートコントラクト社によって設立され、2019年5月にメインネットがローンチしました。Chainlinkは外部システム上で管理される情報を、ブロックチェーンネットワークに持ち込む「オラクル」の分散型ネットワークを構築しています。それでは、Chainlinkの特性について3つに分けて説明していきます。
1-1. ミドルウェアとしての役割
ミドルウェアとは、ソフトウェアとハードウェアの中間処理を行うもののことです。Chainlinkは、スマートコントラクトをオフチェーン(ブロックチェーンの外部の情報)に繋ぐためのミドルウェアとして開発されています。オフチェーンだけでなく、異なるブロックチェーンやdAppの中間処理役としても機能します。
1-2. ブロックチェーン以外へのミドルウェアとしての起用
スマートコントラクトは、様々な契約をプログラム化して自動的に実行する技術です。今までスマートコントラクトは外部の現物資産との接続が困難でしたが、Chainlinkにより現物資産との結びつきが可能となります。例えば、Chainlinkを使用すれば、WebアプリケーションやPayPal、クレジットカードの銀行決済といった金融・証券・保険・貿易などの実生活のあらゆる分野で、スマートコントラクトと既存データ(市場データ・銀行システム・商品データ)を安全に管理することができます。
1-3. SWIFT(国際銀行間通信協会)との連携
SWIFTとは、世界各国の金融機関に電子的な送金メッセージの伝送サービスを提供している機関です。様々な国際送金がSWIFTを通じて行われています。2016年に開催されたSibosと呼ばれる世界各国の金融機関関係者が集う国際会議で、SWIFTはChainlinkを使用したPoC(概念実証)を発表しました。バークレイズ、BNPパリバ、フィデリティ、ソシエテジェネラル、サンタンデールの金利データを用いて、債券の売買と配当付与をスマートコントラクトで処理しました。
②Chainlink(チェーンリンク)のユースケース
Chainlinkのプロジェクトチームは、スマートコントラクトと外部情報をリンク(繋ぎ合わせる)する主な働きにおいて、77のユースケースを打ち出しています。
77のユースケースには、金融、送金、決済、保険、企業データベース、サプライチェーン、賭博、行政、個人情報、衛星やAIとの連結、公共事業、政府機関などが含まれています。
例えば、スマートコントラクトを既存のPayPalや銀行システムに接続し、金融プロセスの情報をシームレスに統合できます。金融機関の送金レートを取得し、国境を越えた決済機能のために国際決済メッセージング標準SWIFTを利用することもできます。
チェーンリンクは、スマートコントラクトをスマートカーのIoTセンサーデータに接続して、自動車保険を合理化できます。今後IoTが普及するにつれて、サービスの垣根を越えた様々なシステムやアプリケーションがスマートコントラクトに連結することで、利便性の向上と便利な新サービスの開発が可能になります。
③LINKトークンの特性
Chainlinkの分散型ネットワークにおいて、LINKトークンは担保価値として使用されます。ノードは作成するスマートコントラクトと同等のLINKトークンを保有する必要があります。つまり、スマートコントラクトの経済圏が大きくなるほど、高価値のLINKノードが必要になります。
アプリケーションの実用シーンでは、スマートコントラクトの作成者は、スマートコントラクトの価値に応じてノードに一定以上の評価とLINKトークンの担保量を求めることになります。100万ドルの債券は、担保が100ドル程度のノードを選択することはないでしょう。Chainlink(チェーンリンク)の創設者セルゲイ・ナザロフ氏は、金融の世界で高額のスマートコントラクトが作成され、それぞれが分散型オラクルを必要とする未来を見据えています。
④Chainlink(チェーンリンク)の創設者:Sergey Nazarov氏
この方は、両親の影響もあり5歳からコンピューターを学習していたそうです。ニューヨーク大学を卒業後に起業家を目指し、大学時代の教授が設立した企業でテクノロジー関連のスタートアップをサポートされたようです。その後、小さいころから学んでいたコンピューターとプログラミングの技術を活かし、ブロックチェーンと外部情報を繋ぐ仕組みであるChainlinkを開発しました。
⑤Chainlink(チェーンリンク)の課題
Chainlinkの利点についてお伝えしてきましたが、課題についても解説したいと思います。
Chainlinkはまだ市場でトップ通貨としての地位を確立していません。価格変動が起こりやすいため、長期的な目線で投資する方がベターでしょう。2019年には、米国の仮想通貨取引所コインベースに上場した際に、LINKトークンの価格は2倍に高騰し、数週間に渡って乱高下しました。
また、Chainlinkを導入する企業などの動向についても確認した方がいいでしょう。利用する企業が増加すれば増加するほどChainlinkの価値は高まると言えます。
仮想通貨である以上、規制上のリスクは常につきまといます。Chainlimkは2017年にICO(イニシャルコインオファリング)で3,200万ドルを調達しました。今後、トークンセールに対する規制上の情勢が変化する可能性はゼロではないため、当局の動向に気を配るようにしましょう。
⑥Chainlink(チェーンリンク)を購入できる取引所
次にChainlinkが購入できる主要な仮想通貨取引所をご紹介します。Chainlinkは日本国内の仮想通貨取引所で初めてSBI VCトレードに上場しています。
6-1. SBI VCトレード
SBI VCトレード(新VCTRADE)はSBIグループのSBI VCトレード株式会社が運営する仮想通貨取引所です。SBI VCトレードは2021年9月現在、国内で唯一LINKの取り扱いを行っています。SBIホールディングス傘下の信頼性の高い仮想通貨取引所で、グループ傘下の住信SBIネット銀行などを利用することにより出金手数料も低く抑えることが可能です。
⑦Chainlink(チェーンリンク)の今後の展望
ChainlinkはSWIFTをはじめ、様々な企業がその技術を支持しています。そのため、今後ますますChainlinkを使用したシステムが増えることが期待できるでしょう。
2019年6月には、GoogleがChainlinkの技術を自社の「BigQueryデータサービス」に統合しました。BigQueryクラウドデータをChainlinkに経由させ、予測市場や先物契約等のアプリケーション開発に活用しています。
また、同6月に、Oracle(アメリカのIT大手)のスタートアップ部門「Oracle Blockchain Platform」でChainlinkの分散型オラクル技術を使用できるよう連携を行いました。Chainlinkを使用することで、スマートコントラクトと外部のデータソースや支払いシステムと接続することを目的としています。
2021年4月15日には、Chainlink2.0と題された新たなホワイトペーパーを発表しています。この計画では、システムの更なる拡張を進め、スケーラビリティの改善とプライバシーの保護を強化したDAppsを構築できるようになることを目指すとされています。
Chainlinkでは着実に基盤となる提携企業が決まってきています。ブロックチェーンアプリケーションが実用化するにつれて、スマートコントラクトで使用する資産価値がどのようなペースで拡大していくのかが、投資時期を見定めるポイントとなりそうです。
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中島 翔
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