ESG投資信託のメリット・デメリットは?ESGファンドの比較も【2021年7月】

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最近、「SDGs」や「サステナビリティ」という言葉を目にすることが増えて来ましたが、投資の世界では2006年頃からESGという指標が使われるようになりました。ESGは企業の成長や投資の対象に関わる指針ということはわかるものの、ESGの具体的な内容についてはいまいちイメージがつかめないという方もいるでしょう。

この記事では、企業成長におけるESGの重要性と、投資指標としての見方を解説しています。SBI証券で取り扱いがある、ESGをテーマとして扱うファンドも紹介しています。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

目次

  1. ESGとは?
    1-1.環境(Environment)
    1-2.社会(Social)
    1-3.ガバナンス(Governance)
  2. 世界に浸透するESG投資への流れ
    2-1.日本
    2-2.海外
  3. ESGスコアのスクリーニングと投資手法
    3-1.ネガティブスクリーニング
    3-2.国際規範スクリーニング
    3-3.ポジティブ・スクリーニング
    3-4.サステナビリティ
    3-5.インパクト・コミュニティ
    3-6.ESGインテグレーション
    3-7.エンゲージメント
  4. ESG投資のメリットとデメリット
    4-1.ESG投資のメリット
    4-2.ESG投資のデメリット
  5. ESG関連のファンド
  6. まとめ

1.ESGとは?

ESGとは、企業の長期的な成長を図るための指標で、Environment(環境)Social(社会)Governance(ガバナンス)の頭文字を取った略称です。

企業がこれから先の未来に向けて成長していくには、この3つの観点から長期的なビジネスチャンスや、事業に内在するリスクを把握しなければいけない、という考え方が世界的に広まりつつあります。単に収益を上げればいい、という考え方では持続可能な成長は望めないとされています。

ESGへの取り組みが薄い企業には大きなリスクが内在しており、長期的な成長は難しいと見られています。以下、ESGの観点を表にまとめました。

環境(Environment) 社会(Social) ガバナンス(Governance)
二酸化炭素排出の削減
水質汚染の改善
再生可能エネルギーの使用
生物多様性の確保
職場での人権対策
ダイバーシティ
ワークライフバランスの確保
労働災害対策
児童労働問題の改善
地域社会への貢献
業績悪化に直結する不祥事(政治献金や賄賂を含む)の回避
リスク管理のための情報開示や法令順守
社外取締役の活用 など

1-1.環境

脱炭素という言葉がキーワードとなっている現代において、製品を作る時に太陽光、風力、地熱など環境にやさしいエネルギーを確保し、利用することはESGにおいて重要な要素となっています。今後、資源が枯渇したり高騰する可能性が高まる中、廃棄物を利用し、リサイクル可能な素材の作成ができる企業は、安定的な成長が望めると見られています。

環境に配慮することは、未来の社会にとっても意義のあることなのです。

1-2.社会

従業員と社会の関係性はとても密接です。少子化により人手不足が進む中、人材の育成や従業員の確保、労働安全性の確保など、さまざまなバックグラウンドをもつ従業員にとって働きやすい環境作りは、これからの企業運営に欠かせない要素となっています。

最近では、介護休暇や産休、育休、時短勤務制度など働きやすい環境を整える企業が増えています。

1-3.ガバナンス

日本証券取引所グループは、企業のコーポレート・ガバナンスを「会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組み」と定義しています。

透明性の高い会社運営をし、有事の時は迅速に対応できるような組織をつくることが求められます。経営陣や取締役の資質担保や、役員報酬の開示など、透明性の高い運営体制が必要です。

2.世界に浸透するESG投資への流れ

ここ数年でESG投資への流れは急速に進み、現在ではESG指標ありきの投資を試みるケースも増えています。国内と海外に分けて、ESG投資への流れを見ていきましょう。

2-1.日本

日本でESG投資への流れを作ったのは、年金積立金管理運用独立法人(GPIF)と言われています。年金積立金管理運用独立法人(GPIF)では、2019年時点で151兆円がESGを考慮した投資へ回されており、今後もESGを考慮した投資が継続されていきます(参照:2019年度ESG活動報告)。

金融庁もESG指標に基づく投資を推進しており、2017年に改定された「『責任ある投資家』の諸原則《日本版スチュワードシップ・コード》」の中で、機関投資家が投資先の企業について、ESG要素の状況を的確に把握することを義務付けました。

この内容は2020年にさらに改定され、持続可能性(サステナビリティ)への配慮についても付け加えられたことで、投資についてよりESG指標が重要視されています。今後、日本ではESG投資の残高がいっそう積み上がっていくと見られています。

2-2.海外

世界のESG投資への関心は、2006年に国連が「PRI(責任投資原則)」を提案したことから始まりました。今後、企業への投資はESGの3要素を考慮して選定するべき、と当時の国連事務総長であるアナン氏が提唱したのです。

欧州を中心にESG投資の運用残高は増え続け、2025年には世界全体で53兆ドルに達するとも言われています(参照:ブルームバーグ)。世界的なパンデミックや温暖化による気候変動が起こる現代の状況と合わせて、今後ESG投資はますます世界に浸透していくと予想されています。

3.ESGスコアのスクリーニングと投資手法

ESG投資には「GSIA(世界持続可能投資連合)」という団体が定めた7つのスクリーニングと投資の手法があります。イメージは掴めるものの、詳細があいまいになりがちなESG投資において、7つのスクリーニングと投資手法は重要な指針です。

以下、詳細を表にまとめました。

ESG投資の指標 詳細
ネガティブ・スクリーニング 特定の業種や、個別企業をポートフォリオから除外する
国際規範スクリーニング 国際規範に違反した企業をポートフォリオから除外する
ポジティブ・スクリーニング 各業種からESG評価が高い企業でポートフォリオを組む
サステナビリティ ESG特有のテーマである、クリーンエネルギー、グリーンテクノロジー、サステナブル農業などを投資対象に組み込む
インパクト・コミュニティ 社会問題や環境問題の解決を目的とした投資
ESGインテグレーション 今までの投資手法にESGの要素を取り入れて総合的な投資判断を行う
エンゲージメント ESGの課題について、経営陣との対話を行い、株主としての意見を表明する

3-1.ネガティブスクリーニング

ネガティブスクリーニングはESGの観点からみて、問題のある企業の詳細を調べ、投資先から除外する方法です。現在では、化石燃料、原子力発電、武器製造、ポルノ、温室効果ガス排出、などのキーワードによってスクリーニングし、除外するケースが多くなっています。

3-2.国際規範スクリーニング

環境破壊や人権侵害などESGに関連する国際規範をもとにスクリーニングし、最低限の基準に達していない企業を除外します。

参考にする国際規範は、国際労働機関(ILO)が定める児童労働や強制労働に関する条約や、人権の保護や環境への対応に関する10の原則からなる「国連グローバル・コンパクト(UNGC)」など、さまざまな規範があります。どの国際規範を参考とするかは機関投資家の自由となっており、定めはありません。

3-3.ポジティブスクリーニング

ポジティブスクリーニングは、ESGの観点から見て評価の高い業種や企業をスクリーニングし、投資する方法です。投資先の選定には、指数算出会社が評価した、ESG格付け指数を使います。ESG投資を行うにあたって、中心となるスクリーニング方法です。

3-4.サステナビリティ

ESG要素の中の持続可能性(サスティナビリティ)に関連するテーマで投資をする方法です。主なテーマには再生可能エネルギーや水処理などがあります。

株式だけでなく、国や地方自治体、企業が環境保全の資金のために発行するグリーンボンドと呼ばれる債券も拡大しています。

3-5.インパクトコミュニティ

インパクトコミュニティ投資は、利益だけでなく社会や環境にいい影響をどの程度与えているか、を重視する投資手法です。ESGを考えた取り組みを行い、与えた影響を数値化して評価するのが特徴で、新興国における子供の識字率や就学率アップを支援する企業のプロジェクトを評価する際は、活動によって実際に何%アップしたのかを数値化し確認します。

行動に伴って成果がでているか、という点が重要になります。

3-6.ESGインテグレーション

ESGインテグレーションは、国際団体であるGSIA(Global Sustainable Investment Alliance)によって、財務分析だけでなく、ESG要素も投資判断として組み込まれていること、と定義されています。ESGについて積極的に取り組み、成果を目に見える形で公表している投資先を選定する方法です。

3-7.エンゲージメント

エンゲージメントは日本語に訳すと議決権行使という意味です。ESG投資においては企業との建設的な対話のことを意味しており、具体的な方法としては、企業への取材、経営層との面談、会議での意見表明など内容はさまざま。

エンゲージメントの目的は、投資先の企業をよりよい方向へ導き、企業価値の向上と、長期的な株主利益を確保することです。

4.ESG投資のメリットとデメリット

ESG投資のメリットとデメリットも確認しておきましょう。

4-1.ESG投資のメリット

  1. 長期投資に向いている
  2. 社会貢献に参加できる

ESGに積極的に取り組んでいる企業は、社会から肯定的に認知され、不正や不祥事による経営の失敗や倒産のリスクが少なくなるとされています。評判のよい企業は資金調達も行いやすく、長期視点で見た企業運営が可能となるのです。

投資家からみても、利益のみに投資するのではなく、社会全体へ投資することになり、利益だけでない投資の意義を感じることができる点もメリットです。

4-2.ESG投資のデメリット

  1. 短期的な投資に向かない
  2. 調査に手間がかかる

ESGに積極的な企業は長い目でみて、社会や企業にとって有効な対策を行う性質上、短期的な収益を目標とする投資には向いていません。

ESGへの取り組みは財務情報のように数値化できないものも多く、投資先企業を選ぶ時は、ホームページやメディアの情報を網羅的に集める必要があるため情報収集に時間がかかることもデメリットの一つです。

5.ESG関連のファンド

SBI証券にて取り扱いがあるESGをテーマとしたファンドを、総資産が多い順番に並べてみました。同じESGをテーマとしたファンドでも、細かいテーマが異なり、構成銘柄の違いにより運用成績に違いが出ています。

※2021年7月10日時点 SBI証券の取り扱いファンドを参照

ファンド名 総資産額(百万円) トータルリターン 信託報酬 基準価額
ブラックロック-ブラックロックESG世界株式ファンド(為替ヘッジなし) 3,120 94.18% 0.7608%程度 19,175
シュローダー-シュローダー・アジアパシフィックESGフォーカスF資産成長型 2,542 100.49% 1.84% 19,430
キャピタル-CAM ESG日本株ファンド 2,378 49.13% 1.50% 14,614
野村-野村インデックスファンド・先進国ESG株式 (愛称:Funds-i 先進国ESG株式) 1,378 20.09% 0.297%以内 12,004
HSBC-HSBC ESG米国株式インデックスファンド 1,341 25.81% 0.2765%以内 12,538
三井住友DS-三井住友・日本株式ESGファンド 1,050 22.34% 1.19% 12,036
ブラックロック-ブラックロックESG世界株式ファンド(限定為替ヘッジあり) 915 93.44% 0.7608%程度 19,344
SBI-SBIグローバルESGバランス・ファンド(為替ヘッジなし) (愛称:グリーンインパクト) 720 19.87% 1.617%~1.637%程度 11,905
三菱UFJ国際-eMAXIS ジャパンESGセレクト・リーダーズインデックス 718 26.81% 0.44%以内 12,503
UBS-UBS MSCI先進国ESG株式インデックス・ファンド (愛称:みらいゲート・先進国ESG) 656 58.57% 0.4345%程度 15,659
りそなAM-Smart-i 先進国株式ESGインデックス 615 38.18% 0.29% 13,730
りそなAM-Smart-i 国内株式ESGインデックス 560 21.61% 0.24% 11,995
シュローダー-シュローダー・アジアパシフィックESGフォーカスF予想分配金提示型 391 0.39% 1.84% 9,729
SBI-SBIグローバルESGバランス・ファンド(為替ヘッジあり) (愛称:グリーンインパクト) 362 12.72% 1.617%~1.637%程度 11,284
ニッセイ-ニッセイ日本株ESGフォーカスファンド(資産成長型) (愛称:ESGジャパン) 72 45.06% 1.57% 14,380
シュローダー-シュローダー日本株ESGフォーカス・ファンド 28 33.91% 1.30% 13,160
ニッセイ-ニッセイ日本株ESGフォーカスファンド(年2回決算型) (愛称:ESGジャパン) 18 44.62% 1.57% 11,557

ESG関連ファンドには、インデックスファンド・アクティブファンドそれぞれが存在し、信託報酬もまちまちです。調査時点では上記ファンドにトータルリターンがマイナスのファンドはありませんでした。

まとめ

かつての投資は、財務諸表やIRなど、数値化されたものを基準に利益のみを追求していましたが、これからの時代の投資はESG投資の観点が主流となりつつあります。環境や人に優しい企業こそが、持続可能な会社運営ができると見られているのです。

ESGをテーマとしたファンドは数多くありますが、ESG要素の中でも、扱っているテーマがそれぞれ異なり、内容もさまざまです。ESG関連のファンドを探す時は、内容もよく確認した上で投資しましょう。

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sayran

「資産形成をより身近に」をモットーに、証券会社にて投資信託を中心にリスクの低い資産形成をオススメしていました。 テキストではよりわかりやすくみなさんの興味分野を解説し、資産形成の理解を広めていきたいと思っています。