知っておくと暗号資産トレードで役立つ「ギャン理論」とは?最終編

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今回は、暗号資産トレードに役立つ「ギャン理論」について、大手暗号資産取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では暗号資産コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。

目次

暗号資産や株式、FXトレードなどで資産運用を行っている方が増えてきています。投資商品についてどのような戦略を立てるべきか、勉強している投資家も多いと思います。

投資の世界で一つ共通して言えることは、人間が取引しているという点です。つまり人間の心理や期待、予想が値動きを作り出していると言えます。そのため、チャートには普遍的なパターンが存在します。

多くの投資家が共通してやってしまう間違いを防ぐためにベテランの知見がまとめられた「ギャン理論」というものがあります。ギャン理論は投資家のバイブルとされ、誤った判断や行動を防ぐのに役立つ格言がいくつも書かれています。これまでギャン理論の格言を18番目(上編、中編下編)まで紹介して来ましたが、ここではギャン理論の19番から最後までを解説したいと思います。

19. 値ごろ感だけで取引禁止

値ごろ感というのはチャートが大きく変動した時に、「これだけ動いたら少しは逆にいくだろう」とか「ここまで下落してるんだからそろそろ底だな」と無闇に判断してしまうことを意味しています。つまり、「何となく安いから買ってみよう」という類のトレードはNGということです。

値ごろ感で安いとか高いと感じているときは他の初心者トレーダーも同じことを考えており、みんなと同じようにトレードをしている時点で勝てるトレーダーにはなりません。値ごろ感でトレードしている限り確実に負けると思ってください。

20. ピラミッディングはレンジブレイクをしてから

これは、明確な判断材料が出てからポジションを積み上げるということを意味しています。ギャン理論は、「トレンドフォローでのトレード」を重視としており、レンジブレイクでエントリーを行うことは基本であり重要なポイントです。レンジブレイクというのは、サポートラインやレジスタンスラインを割ったタイミングです。大きなトレンドに乗れば頻繁に売買を行わなくても利益は大きく取れるため、このブレイクしてからエントリーするという基本をまずは守ってトレードするようにしましょう。

そもそも、ポジションの積み増しというのは初心者にはかなり難しいことです。通常であれば、一旦利益確定したいという感情が先にくるはずであり、ここを耐えてトータルの損益分岐点を悪くしてもトレンドに乗るという行為のため、心理的な負担は大きくなります。また、ドローダウンが起きれば、精神的に負担はさらに高まります。ドローダウンが回復するのかどうかはわからないため、必ず損切りラインは明確にしてトレードしましょう。

21. ピラミッティングはトレンドが明確な場合のみ

こちらは、「レンジブレイクをした時」×「トレンドが明確に出ている時」にのみ、ピラミッティングを行うことを意味しています。レンジ相場の時にピラミッティングを行うことは控えるようにしましょう。

しかし、難しいのは時間軸によってレンジ相場なのか、トレンド中のレンジ(時間調整)なのかが判断できない時です。トレンド中のレンジブレイクと判断出来る場面の一例をあげると、日足チャート以上でトレンドが出ており、その小休止としてしっかりとしたレジスタンスラインやサポートラインができた場合などが想定できます。この判断は難しい場合がありますが、経験を積むにつれて理解できるポイントでもあります。

22. 「両建て」でポジションのヘッジは行わないこと

両建てというのは通常はあまり必要のない投資行動です。両建ての悪い使い方は、最初に取ったポジションの評価損が膨らみ、損切りができずに両建を利用するというものです。これは心理的な負担を抑えているだけであり、言い換えれば負けを認めることができない手法となります。

トレードでは負けを素直に認めてポジションを閉じることが何よりも大切です。もちろん機関投資家のように実現益として決済した場合に税金が発生することを回避するために両建てで利益確定のようにしているものの、決済せずに翌期に持ち越すと戦略もあります。これはしっかりと計画して行うものであり、初心者の段階ではまだ考える必要はないでしょう。

両建ては一時的な負担軽減にすぎず、この行動を取っている時点で負けているトレーダーということを自覚するようにしてください。

23. 十分な理由がなければポジションを決済してはいけない

ポジションを決済する際に、一番行ってはいけない行動があります。それはなんとなく利益が出ているからと、ポジションをクローズして利益確定を行うことです。

よく「利食い百人力」という言葉がありますが、ギャン理論の格言の方が個人的には大切だと考えています。初心者でFXをスタートすると、ポジションで利益が出てくると早めに決済を行いたくなる衝動に駆られます。

しかしこの衝動に負けている間は、トレーダーとして未熟な証拠です。こうした衝動に屈して理由なく決済していると、その一つのトレードで利益を出せても、いずれ損失を大きく出し、最終的に9勝1敗でもトータルで損失を被るような結果になりかねません。

ここまできたら利益確定するというラインを最初に設けると思います。途中の評価益だけをみて決済して、自分自身を安心させようという行動は控えるようにしてください。

24. 儲けた後は、取引量を減らす

これはトレードで大きく勝利した後に自分を律するための行動です。これは冷静に次のトレードに臨むためのクールダウントレードとしてとても重要な意味を持ちます。

利益が出ると自信が過信に変わることがあり、これはトレードで一番怖いことです。大きく負けて初めて、l自分が過信していたことに気づくのです。そのような人間の弱い心を律するためにギャン理論はこの格言を入れていると言えるでしょう。

人間が弱い生き物であることを忘れず、冷静に機械的にトレードすることを心がけましょう。利益が大きく出た後は取引量を落としてクールダウン期間を設けるようにしてください。

25. 相場の天井や大底を予想はしない

チャートを眺めて「ここが大底だな」とか「ここまで上昇したから天井なのかな」などと考えることは多いでしょう。もちろん、そうした見方は分析に必要ですが、大底とか天井を狙ってエントリーしようとすることはやめましょう。

相場の天井や大底というのはどれだけ分析してもわかるわけがありません。もちろんそこでエントリーできれば大きなリターンを得ることができますが、それができたら預言者というレベルの芸当です。つまり、トレンドが出たのを確認してから、その道の途中でエントリーしなさいということがこの格言の真意です。

26. 他人の意見には従っていけない。自身で研究することが大切

最近ではSNS等で様々なトレーダーが方向感や相場感を発言しています。そうしたSNS上のトレーダーの意見に従ってトレードして、負けて文句を言ったりする人がいますが、その時点でその人は負けるトレーダーとしての性質を備えていると言えます。利益を出しているトレーダーほど戦略を複数持ち、どのような状況でも自分なりの対処法に従ってトレードしています。

他人の意見に従っている時点で相場が見えておらず、自分で勉強せずに利益を出し続けられるほど相場は甘くないと言えます。投資の世界では9割の投資家が損をしているとも言われ、大衆心理と同じ方向でトレードしていれば負けるのは時間の問題です。

例え有名トレーダーが自分と反対の意見をツイートしていても、気にならないほど勉強し、自信を持つことが重要です。自分自身で勉強し経験を積みながら他人の意見に惑わされないようにしましょう。

27. 損失が出た場合は次のトレードの取引量は減らすこと

特に損失が出た後の心理的な対処法はトレーダーとしての生命線とも言える重要なポイントです。

通常、投資家が損失を被ると、「いくら損をしたから次はこのくらいの取引量でこのくらいの利幅を取れば取り返せる」といった考え方をしてしまいがちですが、これは危険です。取り返すという感情が強くなるほど、より大きな損失への道を歩んでいます。

その時は冷静な状態ではなく、正常はトレード判断ができない可能性が高くなります。このような時こそクールダウンの期間を取ることがとても大切です。取引量を減らし、これまでのルールを逸脱していないか、やけになっていないかをしっかりと考えながら取り組みましょう。

クールダウンは長期的に相場で生き残っていく上で、損切りと同様に大切な手段です。しっかりと身につけましょう。

28. 間違ったエントリー・決済をしない

最後の格言は、これまでの27項目を総括するような格言となっています。間違ったエントリー・決済とは、やみくもなエントリー・決済をするなということです。

自分自身が決めた戦略通り、ルール通りにエントリーから決済まで行うこと。そして、ルールを逸脱していないか、心理的に追い込まれたり、焦ったりして間違った行動を取っていないか。とった総括的な内容がこの格言には含まれています。

ギャン理論を辞書のように常備する

ギャン理論について4つに分けて記事にまとめてきましたが、ギャン理論にはそれだけ大事な内容が盛り込まれてています。何度も繰り返して読むことで、自身のトレードに活かせるようになると思います。

格言の表面上の言葉だけ読み流してわかった気になっても全く無意味です。格言が示している相場の怖さを理解するために、このギャン理論を何度も読み直すと良いでしょう。

初心者の間は毎日格言に目を通すだけでもとても良いと思います。朝礼で社訓を読む企業がありますが、そのような感じでギャン理論を読んでから相場と向かい合ってみてはいかがでしょうか。

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中島 翔

一般社団法人カーボンニュートラル機構理事。学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。また一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12