知っておくと暗号資産トレードで役立つ「ギャン理論」とは?上編

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証券会社を経て、暗号資産(仮想通貨)取引所でトレーディング業務に従事した後、現在は独立して仮想通貨取引プラットフォームのアドバイザリーや、コンテンツ提供事業を運営する中島翔氏のコラムを公開します。

目次

  1. ギャン理論とは
  2. ギャン理論の28の法則
    1. 資金を10等分し、1回の取引額は全資産の10%とする
    2. 逆指値注文を利用して損失を限定する
    3. 過剰な投資は避け、資金配分のルールを徹底して行う
    4. トレーリングストップを利用して確実に利益を取りに行く
    5. トレンドは友達(トレンドに逆らわない)
    6. 迷ったときは手仕舞いしてトレードから一旦離れる
  3. ギャン理論に立ち返る

暗号資産のトレードを行っている半数以上はテクニカル分析を利用していると言われています。テクニカル分析を駆使することも大事ですが、相場には先人たちが残してくれた色々な考え方や理論が存在します。

投資対象は様々ですが、いずれの資産も人間が将来を見越して売買を繰り返し、価格が形成されています。本質的なポイントは共通していると考える投資家も多く、そうしたエッセンスが凝縮されている相場の理論を学ぶことはきっと役立つでしょう。ここでは有名な「ギャン理論」について3つの記事に分けて解説していきたいと思います。

①ギャン理論とは

ギャン理論とは、1929年のアメリカの大恐慌等相場の荒波を超えてきたトレーダーであるウィリアム・D・ギャン氏がそれまでの投資経験を活かして、相場理論としてまとめた28の法則を指します。これは「価値のある28のルール」と呼ばれており、現代でも投資家のバイブルとされています。以下ではその28のルールを順番に解説していきたいと思います。

②ギャン理論の28の法則

1. 資金を10等分し、1回の取引額は全資産の10%とする

相場を勝ち抜く上で一番大事なことは「リスクコントロール」であり、大きく勝てると良いですが、「負けないトレード」をすることの方が重要です。

初心者の場合、最初はどのくらいの資金量でトレードすべきかわからないと思いますので、全資産の10%を目安にトレードすると良いでしょう。

この法則のポイントは「最初のエントリー時点が資産の10%」であることです。トレンドに乗っていく過程でポジション量を増やすことを前提としています。常に10%にこだわってトレードをし続けるわけではないことに注意してください。例えば、上昇トレンド中の押し目などを利用してポジションを徐々に増やしていく「ピラミッティング」は、利益を伸ばす上で重要な戦略となります。

2. 逆指値注文を利用して損失を限定する

トレードでは常に勝ち続ける(勝率を100%にする)は不可能なので、負けることもあります。そのため逆指値注文で負けた時の損失幅を限定することがとても大切です。初心者の中には、一度の負けで資産の全てを失う様なリスキーなトレードを行っている人もいます。逆指値注文ができない投資家はいずれ相場から淘汰されるでしょう。ギャン理論はそうした基本中の基本を思い出すという意味ではとても大事な訓戒となります。逆指値注文はエントリーと同じタイミングでいれる癖をつけるようにしましょう。

3. 過剰な投資は避け、資金配分のルールを徹底して行う

こちらも資金管理やリスクコントロールに関する訓示となっており、その重要性を物語っています。1つめと重複しているように感じるかもしれません。それでは、全資産の10%で行ったトレードで損失を被った時に、投資家心理がどのように働くかを想像してみてください。

きっと、「負けた分を取り戻したい」という感情が出てくるでしょう。この格言はそうした欲を律する意味で書かれています。負けても淡々とルールに沿ってトレードを行うことが大事です。感情に身を任せてトレードした時点で、自分自身にすでに負けています。そうしたトレードを繰り返していては、相場の世界では必ず負けます。ルールから逸脱せずに自分を律してトレードしてください。

4. トレーリングストップを利用して確実に利益を取りに行く

トレーリングストップとは、エントリー後に相場が予想通りの方向に向かった場合に、評価益が拡大していく動きに合わせて逆指値注文を引き上げることです。

評価益はあくまで評価益であり、確定した利益ではありません。利益が出始めたらチャートをチェックして、逆指値注文の位置を引き上げましょう。

利益が出始めたらまずは、エントリーポイントまで引き上げることで損失を0にできます。勢いが継続してくれれば利益が伸ばしつつ、心理的なコントロールも一緒に行うことができます。タイトな逆指値だと価格変動のブレで約定してしまうため、注意してください。逆指値注文の位置の設定は、チャートの「節目」にいれるようにしましょう。

5. トレンドは友達(トレンドに逆らわない)

「トレンドフォロー」は投資の基本です。逆張りトレーダーもいるためこれが全て正しいというわけではありませんが、トレンドに沿ったトレードの方が負ける確率を低下できるとされています。機関投資家でも長期的な運用担当者はトレンドに沿ったポートフォリオを構築することが多いです。

1年の間でトレンドが出る割合は2割から3割とされ、1年の7割強はレンジ相場となっています。暗号資産ではトレンドが出ると2倍、3倍に価格が高騰してもおかしくない市場です。レンジ相場の間は我慢の地合いが続きますが、そこを我慢することで大きな果実が享受できる場合があります。

「トレンドフォロー」で大きな注意点は「利益確定したい誘惑に駆られる」ということです。人間は利益が出ると「この利益を確定させたい」とか「ここから再度価格が下落したらどうしよう」とか思うことがほとんどです。

これは当然の心理ですが、こうした感情に気圧されて判断するとせっかくの利幅を制限したり、負けてしまうということにつながりかねません。トレンドに乗ったら利益確定ではなく、「次はどこでポジションを積み増そうか?」と考えるようにしてください。

ピラミッティングを行って利益を最大化することが「トレンドフォロー」では大切なことです。最初はポジションを積み増すということは難しく感じるかもしれませんが、是非行ってみてください。

6. 迷ったときは手仕舞いしてトレードから一旦離れる

この格言は「ポジポジ病にならない」ことを示唆している格言とも言えるでしょう。なんとなくエントリーすると、利確地点やどこで逆指値を置くべきかなどがわからなくなってしまいます。

また、エントリー時に立てたシナリオに自信が持てなくなったり、違和感を感じる場合は一旦ポジションを決済して、一度頭を冷やす時間を設けましょう。

トレードから離れることによって相場を俯瞰的に見ることができ、新しい見方が生まれるかもしれません。トレードは常に冷静に淡々と行うことが大切です。無理なトレードは行わず、迷いが生じたらすぐに手仕舞いしましょう。少額の損失は気にしないくらいのスタンスが必要です。

③ギャン理論に立ち返る

ここではギャン理論の最初の6項目について解説しました。ギャン理論は投資家人生を歩まれた先人が、様々な視点や角度から作り上げた相場心理の集大成です。

新しい暗号資産も相場という意味では一緒なので、この理論は役に立つことでしょう。書かれている内容はとてもシンプルなので、理解しやすいのではないかと思います。しかし、実践するとなると心理的なコントロールが難しいものです。

そのため格言集は1回読んで、理解したつもりになるのではなく、トレードで迷いや不安が生じた時に読み返すと良いでしょう。常に冷静な頭で相場と対峙することで、損失は限定できるようになると思います。

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中島 翔

一般社団法人カーボンニュートラル機構理事。学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。また一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12