知っておくと暗号資産トレードで役立つ「ギャン理論」とは?中編

証券会社を経て、暗号資産(仮想通貨)取引所でトレーディング業務に従事した後、現在は独立して仮想通貨取引プラットフォームのアドバイザリーや、コンテンツ提供事業を運営する中島翔氏のコラムを公開します。

目次

ギャン理論は1920年から1930年代に凄腕のトレーダーとして名を馳せたウィリアム・D・ギャンが考案した理論です。上編では、1から6の格言をご紹介しましたが、ここでは7から12の格言について一つ一つ意味を解説していきます。

7. アクティブなマーケットでの取引に徹する

この格言は文字通り、トレンドの出ていない相場でエントリーしてはいけないということを意味しています。

初心者の場合、トレードを始めると、ポジションを持っていないと不安になるという方もいます。これは「ポジポジ病」と呼ばれ、トレードしないと気が済まないという心理的な状況を指しています。

しかし、ポジポジ病でエントリーを繰り返すと無駄に損失を被るリスクが高まります。揉み合い相場に対して、無闇なエントリーを行うことは止めましょう。揉み合いでは、逆張りのトレードが多くなりがちですが、逆張りトレードはリスク管理が難しく、ストップロスの注文を心理的に出しにくい傾向があります。

個人投資家で一度の損失で致命傷を負ってしまう人は、この逆張りトレードで損切りができないパターンが多いものです。そのため「トレンドは友達」という格言に従って、トレンドが出たら淡々とトレードを行うことを心がけましょう。

8. 1つの銘柄に全力投入しない

相場では「同じ籠に卵を盛るな」という言葉があります。これは1銘柄に集中して投資して、1銘柄で資産の変動が左右されてしまう状況にしてはいけないという意味です。複数の銘柄に分散してリスクをコントロールするようにしましょう。

ギャン理論の1つめは「1回のトレード(エントリー時)資金は全資産の10%にする」という格言でした。これは資産を分割しながらトレードすることで、リスクを管理する手法です。

銘柄分散もまた別のリスク管理の手法として重要です。暗号資産の場合、ビットコインのみに有中するのではなく、イーサリアムなど複数に分けて投資する考え方です。また暗号資産以外を含めて考えた時に、日本株や金、FXなど色々なアセットへ投資をしてポートフォリオを分散することも大事なポイントです。

最近では機関投資家が暗号資産をポートフォリオの一つに組み込む流れが出てきていたりと、状況は変化しつつあります。しかし、現在でもビットコインの値動きは他アセットと比べても大きいため、ポートフォリオの少ない割合から組み入れると良いでしょう。

9. 指値注文は利用しない。成行注文のみで取引を行うこと

これはトレンドが出たらそのタイミングでチャンスを逃さずに入りなさいということを意味しています。

トレンドというのは一度出始めるとなかなか止まらないものです。つまり「押し目待ちに押し目なし」な相場になることもよくあります。指値注文は押し目を狙って指しておくものですが、トレンドが出た場合は指値が刺さらずに買うタイミングを逃すことも往々にしてあります。トレンドが出たと判断したら、成行注文を利用してタイミングを逃さないようにすることが大切になります。

特に暗号資産の場合、トレンドが急激に発生します。チャンスと思った時に自身が決めたルールに従って判断するようにしましょう。

10. 十分な理由なくして手仕舞いはするな

この格言はルール通りに取引を行う上で、特に決済時に明確な理由を持って判断しなさいという意味です。

初心者の場合、保有したポジションが10万円が12万円に増加したら、「ひとまず2万円の利益を確定させたい」という衝動に駆られることでしょう。この2万円の利益が、元々のシナリオに沿ったものであれば、決済しても良いでしょう。しかし、4万円がターゲットだったのに、2万円の評価益を確保するために決済しておこうと安易に考えるのはNGということです。

相場では、利益を伸ばせるときに伸ばすことが基本です。このような判断は一度のトレードだけで見ると利益が出て安心感が出るかもしれませんが、何回もトレードを繰り返すとトータルで利益が出にくい状況に陥ります。

トレードでは、自分の心理状態に打ち勝つ精神力が大切です。決済のタイミングほど難しいものはないので、しっかりと自分自身でのルールを構築しましょう。

11. トレードで得た利益は分けて管理すること

ギャン理論ではトレードで発生した利益部分は分けて管理するよう推奨されています。必ずしも利益を利用するなというわけではなく、複利効果が期待できる様にしっかりとリスク管理しながら利用すべきと捉えましょう。

この格言は、利益を明確化して視覚的に把握できるようにしておいた方がいいということを意味を指しています。利益の増減やペースなどを把握することで、自分自身がどのようなリスクを取っているのか把握できるようにもなります。損益の浮き沈みが大きい場合はリスクを抑える工夫をするなど、フィードバックとして利用できるでしょう。

12. スキャルピングの禁止

スキャルピングとは超短期売買のトレードであり、数分で手仕舞ったりしながら繰り返し頻繁に売買を行うトレードを指しています。

こうしたスキャルピングは、初心者のうちは行わないことが推奨されています。その理由は、スキャルピングで発生する取引手数料にあります。取引を繰り返して行えば行うほど手数料がかかるため、取引を重ねるほど利益の期待値はどんどん低下することになります。

もちろんトレードの技術や手法で取引手数料をカバーできるスキルがあれば良いのですが、初心者のうちは難しいでしょう。まずはスキャルピングは避け、中長期目線で負けないトレードをできるようになることが先決です。

ギャン理論は何度でも見直す価値がある

ここでは、ギャン理論の7から12までをご紹介しました。ギャン理論は格言だけ見ると当たり前の様に感じられるかもしれません。しかし、格言の真意は実際にトレードをしてみないとわからないものです。まずは実際にトレードしながら、何度もギャン理論を読み返して頂くと良いでしょう。ギャン理論は自分自身を振り返りたい時や冷静になりたい時に役立ちます。

トレードでは知識も必要ですが、一番の敵は自分自身です。自分自身の欲に打ち勝つことができなければトレードでも負けてしまうでしょう。ギャン理論には自分自身に勝つための秘訣が網羅されているので、ぜひ参考にしてみてください。

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中島 翔

中島 翔

学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12