今回は、FC琉球のFCRコインについて、大手仮想通貨取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では仮想通貨コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。
目次
- FC琉球のトークンの概要と発行に至る背景とは
- FCRコインの用途
2-1.トークンパートナーとしての権利獲得
2-2.応援する選手やチームへの送付
2-3.サッカークラブの運営に関する投票への参加 - まとめ
暗号資産(仮想通貨)やブロックチェーン、NFT(非代替性トークン)の市場が盛り上がるのと同時に、グローバルな大手企業が市場に参入している事例が出てきています。
その中でも、スポーツチームがNFTを導入するケースが増えており、中には多大な利益を上げた成功例もあります。スポーツファンの中には熱狂的な方も珍しくなく、コレクターズアイテムなどとの相性が良い傾向があります。例えば、「NBA Top Shopt」はアメリカNBAで活躍する人気選手のスーパープレイをNFT化し、大きな人気を呼んでいます。試合中の名プレーなどを収めたNFTが数十万ドルという高額で取引されるほどファンを熱狂させています。
このようにファンコミュニティやコレクターを対象としたNFTもある中で、国内初めてのスポーツクラブ独自のトークンが発行される例も登場しました。そこで、この記事では沖縄県のサッカークラブFC琉球が行ったトークン発行の事例をご紹介します。
①FC琉球のトークンの概要と発行に至る背景とは
FC琉球は、沖縄県沖縄市を拠点に活動する、サッカーJ2リーグに属するプロサッカークラブです。FC琉球はスポーツクラブでは初となるIEO(Initial Exchange Offering)を実施し、独自のトークンを発行したことが話題を呼んでいます。FCRコインはERC20規格に準拠しており、イーサリアム・ブロックチェーンに対応するウォレットでの保有や取引が可能となっています。
FC琉球が発行したトークンは「FC Ryukyu Coin(FCRコイン、FCR)」と呼ばれ、国内大手暗号資産(仮想通貨)取引所であるGMOコインで取引されています。IEOによるトークンの抽選販売は22年4月27日から5月18日まで行われ、多数の応募を受けました。今回実施されたIEOのプロセスで分配されたFCRコインは4.5億枚で、総供給量である10億枚のうちの45%が売り出されました。
なお、FCRコインの発行と同時に、FC琉球は独自プラットフォーム「FC RYUKYU SOCIO」の提供を予定しています。FC RYUKYU SOCIOはFC琉球のスポンサーを含むサポーターや選手、そしてクラブという3つのグループで構成され、FCRコインの発行や流通を目的としたプラットフォームです。同プラットフォームでは他にもFCRコインを中心とするサービスを展開する予定で、トークンの流通を促進し流動性を確保する役目も果たす予定です。
また、FC RYUKYU SOCIOを構築する目的の一つに、サッカークラブの運営資金の調達問題を解決することも含まれます。そもそも、FC琉球がトークンを発行するまでの背景には、サッカークラブ運営のための資金調達が従来の方法では困難であったという問題があるとされています。
国内プロサッカークラブにはJ1からJ3までのランク付けがされており、FC琉球はJ2に属しています。J1に属するクラブは平均して38億円の売上収益を獲得できますが、J2であれば15億円、J3になると4.6億円と収益に大きな差が生じてしまいます。さらに、FC琉球はサッカークラブを運営する株式会社がIPO(株式公開)をしたり、スポンサーやクラウドファンディングによる資金調達方法には限界があると指摘しています。つまり、現在主流のサッカークラブ運営構造では、熱狂的なファンがいても十分に資金を受け取ることができないことを問題視しました。そこで、サッカークラブと選手、そしてそれを応援するファンを直接繋げる仕組みとしてトークンの発行に至っています。
FC琉球がIEOで調達した資金はFC RYUKYU SOCIOの開発やエコシステムの構築、サッカークラブの育成や強化、新スタジアムや練習場の設置費用として利用される予定です。
②FCRコインの用途
FC琉球と、そのファンやサポーターを繋げることを目的として開発されたFCRコインの用途としては主に次の3つが挙げられます。
- トークンパートナーとしての権利獲得
- 応援する選手やチームへの送付
- サッカークラブの運営に関する投票への参加
各項目に関して説明します。
2.1 トークンパートナーとしての権利獲得
FCRコインの機能の一つとして、トークンを一定量以上保有するとトークンパートナーとしてFC琉球の試合中の紹介や公式サイトでのロゴ掲載などといったパートナー証明を受け取れるというものがあります。トークンを保有できるのは国内の個人に限らず、法人や海外に居住するサポーターも含まれるため、国境を超えたパートナーの募集ができるのが大きなポイントです。
トークンパートナーとして認められるとFC RYUKYU SOCIOを通じて限定グッズや試合の特別席への招待、選手との直接交流などといった特典も獲得できるようになる予定です。トークンパートナーを設けることによって、FCRコインを保有するインセンティブが加わる他、特典を通じてファンとサッカークラブのより深い交流が可能になると言えるでしょう。
2.2 応援する選手やチームへの送付
FCRコインは、FC RYUKYU SOCIOを通じて応援する選手やチームに送付することができます。
サッカーファンの中には、応援するチームの中でも特に後押しをしたい選手がいることも珍しくありません。そのようなファンらは直接特定の選手にトークンを送ることは従来では困難でしたが、FCRコインとFC RYUKYU SOCIOを活用することで、選手への「投げ銭」が可能になります。
選手側としてもファンからのサポートが可視化されることにはメリットがあるでしょう。エールを送るファンからの投げ銭を受け取る選手側と、好きな選手を直接サポートできるファン側のどちらにとっても魅力的な機能だと言えます。
2.3 サッカークラブの運営に関する投票への参加
FCRコインを保有することで、保有者はクラブの運営において投票を行うことができます。
例えば、FCRの保有者はクラブの運営やユニフォームデザイン、グッズ選定やメディア露出といった機会で投票に参加し、クラブの意思決定に参加できるようになります。投票の際にはFC RYUKYU SOCIOで候補となる選択肢にFCRコインを送付することで、ファンの意志が投票結果に反映される予定です。投票後の意思決定はクラブの運営メンバーによって行われるものの、ファンによる意思表明とも言える投票結果を検討したうえで最終的な決定は行われるといいます。
好きなチームや選手の応援だけでなく、チームの運営方針にも影響を与えられるため、ここでもクラブとファンの繋がりが強化されることが期待できます。
③まとめ
この記事では、国内スポーツクラブで初となるFC琉球の独自トークンについて詳しく解説いたしました。ブロックチェーン技術を用いてスポーツクラブの経済圏を拡大する試みは、興味深いものだと言えます。従来では難しかったプロスポーツチームとファンとの直接的な繋がりの形成ですが、トークンの発行やそれを基軸にしたエコシステムの構築することで実現すると考えられます。
FCRコインのIEOは5月18日に締め切ったため、今後のFCRコインの経済圏がどのように拡大していくかに注目してみてはいかがでしょうか?
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中島 翔
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