セルシウスの出金停止を受けて。今こそ仮想通貨の”セルフカストディ”について考えよう

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今回は、ハードウェアウォレットを通じてWeb3事業に取り組むLedger株式会社から寄稿いただいたコラムをご紹介します。

目次

  1. 自分のお金は自分で守る(セルフカストディ)という責任
    1-1. 仮想通貨の管理に用いられる「公開鍵」と「秘密鍵」
    1-2. 秘密鍵を保管する2種類のウォレット
    1-3. ハードウェアウォレットはセルフカストディなウォレット
  2. Ledgerのミッション

仮想通貨の貸し出し業務を手がけるセルシウス・ネットワークが、口座からの引き出しと口座間の送金を停止すると発表しました。業界の大手レンディングサービスの突然の発表によって業界関係者には衝撃が広がり、相場が一段と下がるきっかけになったという見方が出ています。

セルシウスは利用者に対して、「極端な相場環境」を理由にあげ、「(停止措置の)最大の目的は流動性を安定させて出金、スワップ、アカウント間の送金を早期に再開することだ」と述べました。ただ、セルシウスの170万人の利用者が、いつ資金を引き出せるようになるかは明言していません。「このプロセスには時間がかかり、遅延もあるかもしれない」と言及しています。

5月のテラ暴落の傷が言えない仮想通貨業界に対して、さらなる痛手となってしまった今回のセルシウスの発表。セルシウスのネイティブトークンであるCELは6月17日の記事執筆時点で50%ほど暴落しました。

セルシウスのライバル会社であるNEXOは、セルシウスに残った資産の買収を提案しています。

レンディングプラットフォームによる出金停止、取引所によるトレード停止、テラのエコシステム崩壊という業界の危機が起きるたび、残念ながらしばしば見過ごされてしまうことがあります。それは、「自分で自分のお金を守る(セルフカストディ)」の重要性です。

自分のお金は自分で守る(セルフカストディ)という責任

「セルフカストディは、業界の進歩に伴い自然に出てきた概念であり、仮想通貨の原理原則そのものだ」

仮想通貨ウォレット会社Ledgerのプロダクト部門VPであるチャールズ・ハメルは、上記のように考えています。

「Not your keys, not your coins (鍵の所有者こそが、コインの所有者である)」とは、ビットコインが誕生して以来、仮想通貨業界でよく聞く言葉です。しかし、その言葉はしばしば誤解され、無視されてしまっているのが現状です。

仮想通貨の管理に用いられる「公開鍵」と「秘密鍵」

仮想通貨を買う時、公開鍵と秘密鍵という二つの鍵が発行されます。

公開鍵は、取引を受け取るために必要なアドレスであり、他の人に共有できるものです。言ってみれば、銀行の口座番号です。銀行の口座番号を他人に共有しただけでは、預金が盗まれることを心配しなくて良いですよね。

一方、秘密鍵は、支払いなど取引に署名するためのものであり、ランダムに生成された数字です。秘密鍵は誰にも知られてはならないものであり、悪意のある者や不当なアクセスから自分のお金を守るための最後の砦なのです。もし失ってしまったら、仮想通貨ウォレットにアクセスできなくなり、資金を使ったり出金したり送金したりできなくなります。

秘密鍵を保管する2種類のウォレット

秘密鍵を守るために必要なものは、自分専用のウォレットです。ウォレットにはオンラインとオフラインの2種類があります。

オンラインのウォレット(ホットウォレット、もしくはソフトウェアウォレット)の場合、秘密鍵はインターネットに接続されたデバイスやシステムに保管されることになります。スマホのウォレットやブラウザのウォレット、仮想通貨取引所が管理するカストディー用のウォレットなどが代表例です。

ソフトウェアウォレットは、手軽で便利ですが、いくつかの欠点があります。まずはインターネット上に常時つながっていることによるハッキング攻撃のリスクがあります。また、秘密鍵の管理がしばしば第三者によって行われます。第三者に秘密鍵の管理を任せるということは、あなたが自分のお金に対するコントロールを失うことを意味します。

一方、オフラインのウォレット(コールドウォレット、もしくはハードウェアウォレット)の場合、秘密鍵はオフライン、つまりインターネットから断絶されたところで管理されます。このため、ハッキングのリスクはなくなります。もし秘密鍵がハードウェアウォレットから盗まれる場合、ウォレットに対して物理的なアクセスがあり、PINコードやリカバリーフレーズ(秘密鍵であるランダムな数字を読み安くしたもの)が入力されることを意味します。

ハードウェアウォレットはセルフカストディなウォレット

ハードウェアウォレットの場合は、第三者に資産の管理を頼る必要がなくなります。

「あなたのお金の管理を誰かに任せた瞬間、それはあなたのお金ではなくなる。それは彼らのものであり、彼らがあなたに返してくれるかどうかの話になる」

LedgerのCEOであるパスカル・ゴティエは、上記のように考えています。仮想通貨はあなたに自由をもたらします。しかし同時に、あなたに対して安全な資産管理という責任を要求します。

Ledgerのミッション

2014年の設立以来、セキュリティへの高い意識はLedgerのDNAとして引き継がれてきました。強固なハードウェアウォレットであなたの秘密鍵を守り、「経済的な自由」をもたらすことが、Ledgerのミッションです。

現在、Ledgerには500万人以上の利用者がいます。Ledger Nanoシリーズは、以下の複数レイヤーからなるセキュリティ対策を施しています。

  1. Secure Element (SE)と呼ばれる認可されたチップが埋め込まれており、秘密鍵など暗号化されたデータを安全に保管
  2. PINコードと24単語のリカバリーフレーズがアクセスに必要
  3. 物理的なダメージに耐性のある素材で製造

あなたのコンピューターやスマートフォンから完全に秘密鍵を隔離することで、Ledger Nanoウォレットはあなたの秘密鍵を守り、あなたが自分で資産を管理できる状況を作り出しているのです。

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Ledger

2014年に誕生した仮想通貨のハードウェアウォレットの会社。拠点はフランスにあり、現在はLedger Nano XとLedger Nano S+、Ledger Nano Sという3種類のハードウェアウォレットを製造・販売している。Ledger Nano S +は2022年4月4日発売の最新作。Ledger Nanoシリーズに接続して使うソフトウェアであるLedger Liveを、全ての仮想通貨サービスが1箇所に集まるプラットフォーム、いわば「Web3.0のハブ」にすることを目指している。【公式サイト】