パリが本拠地のウォレット企業であるLedgerが、独自NFTマーケットプレイスである「Ledger Market」の立ち上げに関連して「Genesis Pass」というNFTを発行した。1万個限定のPassはすぐに売り切れ、世界最大のNFTマーケトプレイスの取引高ランキングでLedgerのPassは一時No.1を獲得した。
本稿では、LedgerのGenesis Passは何に使えるのか?現状で分かっているユーティリティについて整理する。既にPass保有者に対して世界的に有名なNFTプロジェクトであるBrickのミント権限の付与が始まった。また、NFT業界全体でPass系が流行っていることを紹介し、詐欺が横行するNFT市場においてLedger Marketがどのように差別化を図る計画であるか解説する。
目次
1. Genesis Pass(ジェネシスパス)とユーティリティ?
2022年7月に、Ledger初のNFTとなるGenesis Passがミント(発行)された。長年NFTに注目をしてきたLedger社にとっては、大きな一歩を踏み出した日となった。ミント価格は、0.3ETH。決して格安NFTとは呼べない値段設定だが、開始24時間以内に完売した。OpenSea(オープンシー)のランキングでも一位となり、ピーク時にはミント価格の倍以上となる値で取引された。
注目を集める理由として、Ledger Genesis Passが持つ特典の存在が大きい。まず、一つ目にGenesis Passには限定版Ledger Nano Xが付与される。
Ledger Nano Xは、暗号資産を保管・管理できるBluetooth搭載の人気のハードウェアウォレットだ。限定版Nano Xは、黒に統一されたスタイリッシュなデザインとなっている。
二つ目に、Genesis Passは、NFTプロジェクトのNFTを優先的にミントできる権利が付与される。Ledgerは積極的にNFTプロジェクトとコラボレーションを企画いると発言している。今後どんなNFTプロジェクトとコラボするのか、各プロジェクトのミントの金額など、Ledger Genesis Passに期待が集まっている。
2. 第一弾NFT「Brick」がまもなくミント開始
先日、LedgerのコラボNFT第一弾として「Brick(ブリック)」のミント開始が発表された。Ledger Marketを使用した初めてのNFTプロジェクトとなるBrickは、ミュージシャンにより運営されており、音楽とNFTの融合を目指す。
NFTホルダーは、イベントへの投票権を持ち、月に一度開催されるコンサートへの無料入場券としてNFTを使用できる。コンサートの開催場所は、ロサンゼルス(アメリカ)である。現地イベントに足を運べないBrickホルダーは、メタバースからバーチャルでコンサートを鑑賞可能だ。さらに、イベントに出演したアーティストと作成した広告チラシもエアドロップされる予定だ。
現時点でのBrickミント予定日は、2022年9月8日 午前1時とされている。Ledger Genesis Passホルダーは、専用ページから「Genesis Pass Allowlist」に登録することで、ミントする権利を獲得することができる。
3. Pass系NFTとは?
今回のLedger Genesis Passのような、Pass系NFTの需要は計り知れない。Pass系NFTとは、ユーティリティ(活用方法)に焦点を当てたプロジェクトであり、主にチケットとして何らかの権利が付与されたNFTを指す。Pass系NFTの活用方法は無限であり、ある種の問題の解決策にもなり得る。
例えば、音楽業界では、有名アーティストの人気コンサートチケットの買い占めと高額転売が問題視されてきた。BrickのコンサートのようにNFTを入場券として機能させることで、欲しい人が適切な枚数のチケットを入手出来るシステムを作ることが可能となる。
NFTの人気と共に、新しいプロジェクトが日々増加する中でNFTファンの注目を集めることが困難になりつつある。そんな中、音楽系のイベント以外にも、日本のNFTの中には、バーの会員権を付与したNFTやラーメンのトッピング券が付与されたPass系NFTが多数誕生。このように、明確なユーティリティの提供は、他のNFTプロジェクトと差別化を図る上で大きな効力を発揮する。さらに、短期間で簡単に作られたNFTプロジェクトには詐欺系のものや途中で破綻するものも多く、スタートに時間や資金が必要となるPass系のプロジェクトに安心感を覚えるホルダーが増えている現状だ。
4. Ledger Marketとセキュリティ
Ledger Marketは、業界初となる「クリア署名」によるミントを打ち出した。クリア署名では、サインする内容を把握した上で、トランザクションを実行することが可能となる。一方の「ブラインド署名」は、署名する内容を把握することができない。内容を読まずに契約を交わすことのリスクは想像に容易いだろう。
例えば、代表的な詐欺の一つに、「フリーミント」や「エアドロップ」と偽り、ターゲットに悪意のあるスマートコントラクトへの署名に誘導するものがある。悪質なスマートコントラクトにサインしてしまうと、最悪の場合、ウォレット内のNFTや暗号資産が詐欺師によって抜き取られてしまう。ブラインド署名をする以上、巧妙化する詐欺を完全に防ぐことは困難だ。現時点における唯一の対策は、むやみに取引や署名をしないことである。
一方で、NFTの売買やミントもNFTの楽しみの一つのはずだ。Ledgerは、適切なセキュリティを保ちながら、NFTを楽しむ方法を模索してきた。そして、これらの解決策となるLedger Marketが、多数のプロジェクトと共に活用できる日が近づいている。
Ledger Marketの大きなメリットは、マーケットを通してミントする場合にも、ハードウォレットが資産を保護し続ける点だ。外部のサービスを使用する際に必須だったセキュリティへの妥協が不要となる。もっとも、Ledger Marketはサービスの充実に関しては、今後も改善が必要となるだろう。しかし、Ledger Marketにより、理想的なNFTマーケットの構築に向けて大きな一歩を踏み出すとともに、本来あるべきNFTの楽しみ方を改めて示す機会となった。
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