ビットコインや仮想通貨は自律分散型システムで知られていますが、昨今は新しい組織形態の一つにDAO(自律分散型組織)が注目されるようになりました。
22年11月月29日には、起業支援のスタートアップスタジオのガイアックスが鳥取県智頭町および静岡県松崎町が進める「美しい村DAO」のNFT販売プラットフォーム開発やDAO自走のためのコミュニティサポート開始を発表しました。
ここでは地域創生のDAOや、そもそもDAOとはどういったものなのか改めて詳しく解説します。
目次
- 美しい村DAOとは
- 美しい村DAOが発行するNFT
- ガイアックスが「美しい村DAO」をサポート
- DAOとは
4-1.DAOの仕組み
4-2.DAOの特徴
4-3.DAOはどのように機能するのか・報酬など
4-4.DAOが必要な理由
4-5.DAOのデメリット - まとめ
①美しい村DAOとは
「美しい村DAO」とは、地方創生をDAO(自律分散型組織)で行う内閣府地方創生推進事務局 広域連携SDGsモデル事業の「日本で最も美しい村デジタル村民の夜明け事業」による複数自治体の連合DAOとなっています。これまで、地方創生における課題をDAOで解決したいという行政団体は多く存在するなか、複数の自治体が連携しDAOを組成する点では日本初のプロジェクトです。※1:ガイアックス調べ。当社開発部長であり、日本ブロックチェーン協会 理事およびISO/TC307 国内審議委員を務める峯荒夢より、複数の自治体が連携しDAOを組成する前例は確認されていない。
このほど鳥取県智頭町および静岡県松崎町が「日本で最も美しい村」連合に加盟し、株式会社ガイアックスが連携を図り、ブロックチェーン技術を活用したNFT販売プラットフォーム開発やDAO自走のためのコミュニティ活動を開始しています。
「日本で最も美しい村」連合サポーター有志で構成されるコンソーシアムの協力により、ブロックチェーン型スマートコントラクトプラグラムをDAO方式で管理し、加盟町村のNFT発行とデジタル村民のインセンティブをマネジメントすることとなります。
「日本で最も美しい村」連合とは
「日本で最も美しい村」連合は、「美しい村を、美しいままに。」をキャッチフレーズに、全国61の地方自治体・地域と、66社の企業サポーター(正会員)、230の個人・企業・団体(準会員)で構成されるNPO法人(2022年6月現在)です。美しい村づくりプロジェクト収益金の一部は、NPO法人「日本で最も美しい村」連合の活動資金に充てられます。
②美しい村DAOが発行するNFT
美しい村DAOでは、「デジタル村民証」となるNFTや地方の魅力的なコンテンツを体験できる権利を含む環境系NFTが購入できるプラットフォームを作成し、運営していく予定です。
デジタル村民証の所有者は、村民向けサービスなどの特典が受けられます。発行されるNFTは、「美しい村DAO」に参加している地域や参加者により企画され、美しい村の世界観を満たすと認定されたものだけが販売許可される仕組みになっています。
美しい村DAOの目標としては、デジタル村民登録者数1,000名、同DAOの参画地域数を2町村から30町村に増やすこともあげています。
内閣府地方創生推進事務局のバックアップも受け、ガイアックスにおけるDAOのノウハウを結集して日本の地方創生における新しいスタンダードとなることを目指しています。
地域活性化のねらい
「日本で最も美しい村」連合に加盟する各地域は人口約6,600人~6,800人、高齢化率40%を超える典型的な中山間地域です。しかし、都市部では決して再現することのできない豊かな自然環境を有し、様々な方策により独自のまちづくりを展開している「賑やかな過疎地」です。
とくに、智頭町は、「SDGs未来都市」に選定されています。SDGs未来都市とは、持続可能なまちづくりのため、地方創生に貢献する、地方自治体の持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向け、優れた取組みを提案する都市のこと。
地域活性化、移住定住促進、都市部への魅力発信という、各地域の共通課題に向けて、「日本で最も美しい村」というブランドを共有し、各地域の環境保全と先進的なブロックチェーン技術の融合により新しい社会システムを模索することとなります。
③ガイアックスが「美しい村DAO」をサポート
ガイアックスは、プロジェクトの出資だけでなく、事業開発、エンジニアリング、バックオフィス面など、事業作りに必要不可欠な事業支援を実施している支援企業です。また数十回の企業経験を経てきたスタジオメンバーが徹底併走することで、初めての起業でもリスクを抑えて事業づくりに取り組めるよう支援を行っています。
また事業アイデアの構想段階から起業後の資金調達まで、各事業フェーズにおける課題を新規事業立ち上げのプロへ相談できる事業相談会イベントも定期的に開催されています。
これまでにDAO実装コンサルティングサービスを提供しており、DAOシェアハウス「Roopt DAO」やDAOシェアオフィス「Cryptobase」、NPO法人ドットジェイピーDAO化などの実績を持っています。
今回ガイアックスは、複数の自治体が連携する日本初のDAOによるプロジェクトを通じて、地方創生の新たな形の構築を目指したいとしています。
株式会社ガイアックス開発部部長で(一社)日本ブロックチェーン協会 理事を務める峯荒夢氏は以下のように述べています。
「地方創生の課題をDAOで解決したいというアイデアは多くあるものの、地方創生にとってDAOは全く新しい取り組みであるため、これから事例を作っていくフェーズですので、実際に実現している事例は多くありません。
地方創生×DAOといえば、新潟県の山古志地域のNishikigoi NFTが有名ですが、今回は1つの地域単独のDAOではなく、複数の地域が連携し持続可能な地方創生のDAOを作っていきます。」
④DAOとは
DAO(Decentralized Autonomous Organzation)は、日本語では「自律分散型組織」と訳されます。DAOとは、ブロックチェーンに基づく組織や企業の形態の一つで、特定の中央管理者を持たず、組織内の構成員一人一人によって自律的に運営されているインターネットネイティブな組織のことを表します。
4-1.DAOの仕組み
組織内には階層が存在せず、構成員による投票・合意によって、定められているルールを基に意思決定が下される仕組みとなっています。また、構成員の承認がなければアクセスできない運営資金もシステム内に組み込まれています。
DAOの代表例として挙げられるのが、ビットコインです。独立した開発者がプロジェクトや目標に向かって貢献し、マイナーは報酬としてビットコインが還元される仕組みを作ることで、ネットワーク全体を維持しています。またイーサリアムでは、スマートコントラクトを使用することで取引を自動化し、仲介者を必要としないシステムの構築が進められています。
4-2.DAOの特徴
DAOの大きな特徴として、以下のようなものが挙げられます。
- ヒエラルキー(階層)が存在しない:
システム内に階層的な管理がないため、リーダーや管理者は存在しません。意思決定を行うのはステークホルダーになります。 - 透明性:
DAOは完全に自律型で透明性のある組織です。オープンソースのブロックチェーン上に構築されているため、誰でもそのコードを閲覧することができます。また、ブロックチェーンがすべての金融取引を記録するため、誰でもその財務情報を監査することができます。 - オープンアクセス:
インターネットにアクセスできる人なら誰でも、DAOトークンを保有・購入することができ、DAOの意思決定に関わることができるようになります。 - 民主的なルール変更:
DAOに参加するトークン保有者たちは、新しい提案に投票することで、DAOのルールを変更することができます。 - リクルーティング:
DAOは、外部の人材採用・物品発注も理論的に可能です。例えば、IBMとSamsungの実験によると、スマートコントラクトをIoT(Internet of Things)デバイスの洗濯機に搭載し、故障時の修理対応や洗剤の自動発注などを、オーナーなしで自動的に行う事も可能になるとされています。破損などが発生するとセンサーからDAOに報告があり、自動的に修理工を呼ぶことができます。
4-3.DAOはどのように機能するのか・報酬など
DAOはボトムアップで意思決定が行われる組織であり、構成員が運営をする仕組みとなっています。DAOに参加するには様々な方法がありますが、通常は組織内で使用されているネイティブトークンを購入・保有することで、運営に関連する重要な議題の投票権を得ることができます。
DAOでは基本的に、スマートコントラクトを使用しています。スマートコントラクトは、特定の条件が満たされたときに特定の機能を実行する、自己完結型のコンピュータプログラムです。現在、スマートコントラクトは数多くのブロックチェーンに展開されていますが、一番最初に使用されたのはイーサリアム上でした。
これらのスマートコントラクトが機能することで、DAO内のルールが確立されます。前述の通り、DAOに出資している人やトークンを保有している人が投票権を得ることができ、ガバナンスの提案など組織の運営に関わることが可能となります。提案の承認については、ステークホルダーの大多数が承認した場合にのみ可決される仕組みとなっています。可決に必要な投票数の割合はDAOによって異なりますが、基本的にはスマートコントラクト上に明記されています。
上記のような形態以外にもDAOと言われる組織は存在し、例えば日本国内にはNFTを発行するDAOがあります。構成員がプロジェクトを運営しているわけですが、ネットワークに関わっているメンバーには優先的にNFTをミントができる権利が得られたり、原案者はNFTを保有する権利が与えられるといった特徴もありますが、DAOに明確な定義は存在しません。
4-4.DAOが必要な理由
インターネットネイティブな組織であるDAOの大きな利点の一つに、2者間の信頼を築く必要がなくなることが挙げられます。これまでの伝統的な組織では、投資家などの企業やサービスをサポートする人たちの信頼を必要としましたが、DAOにおいて信頼が必要になるのは、コード(スマートコントラクト)のみです。
開発者は、このテストをローンチ前に広範囲に渡り徹底的に行う事で、重要な機能の見落としがないかを確認します。DAOが起動した後には、すべてのアクションはコミュニティによる承認が必要となるため、完全に透明で検証可能なシステムとなります。
ネイティブトークンを保有するステークホルダーが互いに制御しあいながら、タスクを達成し、成長していくことが可能です。階層が存在しないため、どのステークホルダーもアイディアを発表しやすい環境であり、それらをグループ全体で検討し、改善することができます。
また、内部で争いが起きた場合でも、スマートコントラクトにあらかじめ書かれたルールに沿って、投票システムで簡単に解決させることもできます。
4-5.DAOのデメリット
今日におけるほとんどの企業には、CEOや社長と呼ばれる全社に影響を与えるような一方的な決定を下すことができるリーダーが存在します。しかしDAOの場合、このような個人的な意思決定は不可能となり、代わりにステークホルダーが企業がどのように運営されるべきかを投票を基に決定していくことになります。つまり、民意が反映されやすい組織になるということです。
逆に言えば、もし自身がステークホルダーだったとしても、ルール変更や運営方針の決定には、自分以外の一定数以上の同意が必要となるため、DAOの枠組みを簡単に変更することはできないということです。
またこれまでの組織にはプロジェクトを牽引するプロジェクトリーダーなどが存在しますが、DAOには階層的な管理がないため、リーダーや管理者は存在しません。そういった場合、DAOの運営が回っていかないケースも考えられます。DAOが立ち上げられた以上、目的があることに変わりありませんが、立ち上げメンバーによって構成員を牽引していくことも最低限必要ではないかと思われます。
⑤まとめ
「美しい村DAO」は地方創生DAOとしてプロジェクトが進められており、その過程はこれからDAOを活用していきたいと思っている地方自治体が参考にできるのではないでしょうか。
DAOという言葉はNFT(非代替性トークン)やDeFi(分散型金融)が台頭した2020年頃からメディアなどで語られる機会が増えましたが、そもそもビットコインや仮想通貨に使われている仕組みがDAOの原型とも言えます。
DAOによる事業は、集団的な意思決定を可能にする強力なツールでありながら、イノベーションの創造と挑戦に取り組み安くなるのではないでしょうか。
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立花 佑
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