持続可能な社会の実現を目指すESGやサステナビリティの取り組みを行う企業が増える中、時計メーカーとして知られるカシオ計算機もその中の一つに含まれます。カシオ計算機では、脱炭素社会の実現やダイバーシティを重視した企業活動を長年行っているほか、その取り組みは外部からも高く評価されています。
この記事では、カシオ計算機のESG・サステナビリティの取り組み内容を詳しくご紹介します。また、企業の特徴、株価動向、配当推移も解説するのでご参考ください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※本記事は2022年11月9日時点の情報をもとに執筆されています。最新の情報については、ご自身でもよくお調べの上、ご利用ください。
目次
- カシオ計算機の特徴
- カシオ計算機のESG・サステナビリティの取り組み
2-1.脱炭素社会の実現
2-2.資源循環型社会の実現
2-3.自然との共生
2-4.CSR調達の推進
2-5.働きやすい職場環境の提供とダイバーシティ&インクルージョンの推進
2-6.人権の尊重
2-7.カシオ計算機のESG・サステナビリティに関する外部評価 - カシオ計算機の株価動向
- カシオ計算機の配当推移
- まとめ
1 カシオ計算機の特徴
カシオ計算機は、東京都渋谷区に本社を置く国内の電機メーカー企業です。小型純電気式計算機「14-A」を世界で初めて開発した樫尾忠雄氏らによって、1957年に設立されました。
カシオ計算機の主な事業は、「時計」「電卓、辞書などの教育関連機器」「楽器」「電子文具」「ビジネス関連のシステムツール」等の製造・開発・販売です。また、新規事業として、スポーツ・健康、メディカル、プロジェクション関連の電機製品や有害な水銀ランプを使用しない環境配慮型商品の製造・開発・販売事業にも取り組んでいます。
カシオ計算機の経営理念は、「創造・貢献」です。今までにない新しい働きを持った製品を提供することにより、社会貢献するという意味が込められています。新しい働きを持った製品は、人々の生活を快適にして社会を発展させたり、人々に楽しみを感じさせて新しい文化が生まれる原動力となったりと、そのような製品の提供が社会貢献に繋がるという考えに基づいています。
2 カシオ計算機のESG・サステナビリティの取り組み
社会貢献の実現のために新しい働きを持った製品を創造するというカシオ計算機の経営理念である「創造・貢献」は、ESG・サステナビリティに繋がるものです。カシオ計算機は、環境・社会面における6つの重要課題を定めた上で、持続可能な社会実現に貢献するため、ESG・サステナビリティの取り組みを行っています。
カシオ計算機が取り組むESG・サステナビリティの具体的な内容は、以下の通りです。
2-1 脱炭素社会の実現
カシオ計算機は、環境面のESG・サステナビリティの取り組みとして、脱炭素社会の実現を事業の長期目標として設定しています。世界各地で地球温暖化が進む中、その要因は温室効果ガスの濃度上昇が挙げられます。地球温暖化によって異常気象が発生し、それによって起こる自然災害が人々に被害をもたらすことで、経済的な損失も発生しています。
このような状況を改善するため、世界の気温上昇を産業革命前より1.5℃または2℃未満に抑えようとする動きが国際的に強まっています。カシオ計算機も上記の国際的な認識に追随して、このような事業の長期目標を設定しました。
カシオ計算機を含むカシオグループの事業活動によって排出される温室効果ガスは、以下の2種類に分類されます。
直接排出 | カシオグループの事業活動での燃料使用や工業プロセスにより排出された温室効果ガス |
間接排出 | 他業者より供給された電気の使用によって排出された温室効果ガス |
上記種類の温室効果ガスの合計排出量削減について、中期目標と長期目標を以下のように設定しています。2021年度は、温室効果ガス排出量の削減割合を2018年基準で9.5%の削減を目標とした中、26.4%の削減を実現しています。
中期目標 | 2030年度までに2018年基準で38%削減する |
長期目標 | 2050年度までに排出量ゼロを目指す |
また、カシオグループの事業活動におけるバリューチェーンからの温室効果ガス排出量削減も推進しています。2030年度に購入した製品・サービス、販売した製品の使用によって排出した温室効果ガスの量を2018年度基準で30%削減を目標としています。
2-2 資源循環型社会の実現
企業活動によって、天然資源の枯渇や資源採掘による自然破壊、廃棄物による周辺汚染などが社会問題となっています。カシオ計算機を含むカシオグループは、問題改善のため、事業活動を通じて製品のライフサイクルを意識した以下の取り組みを行い、資源循環型社会の実現を目指しています。
製品に関する取り組み内容 | 開発・製造工程から製品の利用や再資源化に至るさまざまな段階で環境に配慮した製品を作ることを目標設定している。 |
事業活動における取り組み内容 | 廃棄物発生量に対する最終埋立処分量の割合を1%以下にすることを目標に、廃棄物発生量の削減、再資源化の向上をはかるとともに、水使用量削減と破棄部品の自主リサイクルの取り組みを行っている。 |
2021年度の事業活動における取り組みでは、2019年度基準で廃棄物発生量の28%削減、水使用量の43%削減を達成し、96%の再資源化率を実現しています。
2-3 自然との共生
生物多様性の劣化の進行が社会問題化しています。各企業が事業活動を行う上で、生物多様性の配慮を意識しながら行動することが求められる中、カシオ計算機を含むカシオグループでも、自然との共生を意識した製品・サービスの提供や事業活動を行っています。
カシオ計算機は、2011年3月に「生物多様性ガイドライン」を策定し、それをもとに生物多様性の保全活動に取り組んでいます。また、紙の原料となる森林資源の保護と生物多様性の保全を目的とした「紙の調達方針」を定めて、事業活動の中で実践しています。
2-4 CSR調達の推進
企業が事業を行うで販売・提供する製品は、調達、製造、販売、消費という過程を経るのが通常です。そのため、企業のESG・サステナビリティの取り組みは、製品がたどる上記過程に関わるサプライチェーン全体で行うことが重要になってきます。
カシオ計算機は、時計、教育関数、楽器などの事業を行う際、国内だけではなく、中国などのアジア諸国のサプライヤーから幅広く資材を調達しているため、サプライヤーで人権侵害、労働問題、環境破壊などが顕在化するリスクがあります。そのようなことから、社会的責任による調達先の選別を行い、グループ企業を含むサプライチェーン全体でESG・サステナビリティに取り組んでいます。
そして、カシオ計算機は、CSR調達の推進を図るため、「資材調達方針」を制定しています。具体的には、「公正で公平な取引」「法令・社会規範の遵守」「環境保全の配慮」「取引先とのパートナーシップ」「取引先の選定と取引継続の方針」「あるべき価格と品質の確保」、「私的な関係の禁止」の7項目に関する事項を定めています。
2-5 働きやすい職場環境の提供とダイバーシティ&インクルージョンの推進
カシオ計算機は、事業活動を行う上で最も重要なのが「人材」であるとの考えのもと、働きやすい職場環境の提供を行うと共に、多様な人材の包括的な受け入れを推進しています。
具体的には、以下の通り、従業員の多様性を尊重して働きやすい職場環境の構築を目指しています。2021年度では、女性従業員の育児休業取得率と育児休業復職率につき、ともに100%を達成しています。また、障がい者雇用率も2022年4月時点において、グループ全体で2.33%となっていて、2021年度の目標値をおおむね達成しています。
- 従業員の多様性を受け入れて融合し、よりよい職場環境を創造する。
- 評価は公正・公平に行って、チャレンジ精神旺盛で活気ある人材を育成する。
- 健康面を考えた取り組みを行い、働きやすい職場を整備する。
2-6 人権の尊重
グローバルに事業活動を行う際、多様な認識を持つステークホルダーと関わり合うことから、人権への対応が不十分となって経営リスクに発展する恐れもあります。グローバル企業であるカシオ計算機において、「人権の尊重」を重要課題とするESG・サステナビリティの取り組みを行うことで様々なリスクに対応しています。
カシオ計算機を含むカシオグループは、人権に関する重点課題として、「差別の排除」「児童労働、強制労働の禁止」「労働基本権の尊重」「適切な賃金支払と労働時間の管理」「多様性の尊重」「ワークライフバランス実現の支援」「安全な職場環境の確保と健康増進の支援」の7項目を定め、これらをもとに人権尊重の取り組みを行っています。
2021年度において、「過去に実施した人権課題のチェックの総括および2022年度以降の推進方針の策定」「サステナビリティリーダーへの人権専門教育の実施」の2つの人権尊重の取り組み目標を定めており、双方ともおおむね達成しています。
2-7 カシオ計算機のESG・サステナビリティに関する外部評価
カシオ計算機に対する取り組み内容は、外部からも高い評価を受けており、以下のように様々なESGインデックスに組み入れられています。
FTSE4Good Index | ロンドン証券取引所グループが出資するインデックスやデータの提供サービス会社であるFTSE Russell社が、社会、環境、ガバナンスの側面から企業の持続可能性を評価する指標 |
SOMPOサステナビリティ・インデックス | SOMPOアセットマネジメント株式会社が独自に設定するESG評価(環境、社会、ガバナンス)と株式価値評価(ファンダメンタルバリュー)を組み合わせて作成される指標 |
MSCI 日本株女性活躍指数 | 日本株の時価総額上位500銘柄から、各業種の中で性別多様性に優れた企業を選定して構築される指標 |
S&P/JPXカーボン・エフィシェント指数 | 日本市場の動向を示す代表的な株価指数であるTOPIXをユニバースとし、環境情報の開示状況、炭素効率性(売上高当たり炭素排出量)の水準に着目して、構成銘柄のウエイトを決定する指数 |
3 カシオ計算機の株価動向
カシオ計算機の株価は、2022年11月2日より前の直近2年間において、下落傾向が続いています。2020年11月2日時点で1,599円あった株価は、2021年3月15日時点で2,190円まで上昇したものの、2021年3月15日時点で株価の流れが反転し、下落傾向となりました。2021年の年度末時点での株価は1,479円となり、2021年3月15日時点から711円下落しています。
2022年に入っても、5月13日には1,121円まで下がっています。その後の株価推移は、1,100円~1,400円の間を上下する形で横ばいの状況が続き、2022年11月9日時点の株価は1,367円となっています。
2021年3月15日~2022年5月13日まで続いた株価下落は、中国市場の低迷による時計事業の不振などが一因です。中国市場の低迷が継続した場合、その影響を受けてカシオ計算機の株価も伸び悩む一方、解消されれば時計事業の業績の向上が見込まれるため、株価にもその影響が出てくる可能性があります。
また、将来に繋がる新しい価値創造を目的に行っている新規事業が伸びたり、ESG・サステナビリティの取り組みによって持続可能な社会実現に貢献し、世間や投資家から評価されたりすることで、株価上昇に繋がる場合もあります。
4 カシオ計算機の配当推移
カシオ計算機は毎年一定金額の配当金を出すことで株主還元を行っています。カシオ計算機の2012年3月期~2022年3月期の1株当たりの年間配当金額の推移は、以下の通りです。
年度 | 1株当たりの年間配当金額 |
---|---|
2012年3月期 | 17.0円 |
2013年3月期 | 20.0円 |
2014年3月期 | 25.0円 |
2015年3月期 | 35.0円 |
2016年3月期 | 40.0円 |
2017年3月期 | 40.0円 |
2018年3月期 | 50.0円 |
2019年3月期 | 45.0円 |
2020年3月期 | 45.0円 |
2021年3月期 | 45.0円 |
2022年3月期 | 45.0円 |
カシオ計算機の1株当たりの年間配当金は、2012年3月期~2016年3月期まで毎年増配となっています。2016年3月期~2018年3月期の1株当たりの年間配当金額は40.0円でしたが、2019年3月期に45.0円に増加し、その後の4年間は同額の配当を行っています。
まとめ
カシオ計算機は、電機製品の製造・販売事業をグローバルに展開しているほか、ESG・サステナビリティの取り組みを積極的に行っており、持続可能な社会の実現に貢献しています。また、その長年にわたるサステナブルな活動は外部からも高く評価されており、豊富な実績と共にESG投資に適した銘柄の一つとなっています。
カシオ計算機のESGやサステナビリティに関心のある方は、ご自身でもよくお調べの上、検討を進めてみてください。
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